今回のレシピは、浅利とバジルと豆の春雨炒めです。春は浅利の旬ですが、今シーズンの浅利は極端な不漁です。お料理の写真を見てください。浅利を買い慣れている方には直ぐに、お分かりかと思いますが、今回の取材に使った浅利は北海道産です。今回の取材の為に築地の場外市場に買い出しに行き、良く買う仲卸が直営している店の大将に「浅利をください」と言うと、バツが悪そうに「北海道のしかねぇ、ずっと魚屋やっているけど、こんなに浅利が無いのは、初めてだ・・・」と仰いました。「大きくて、立派じゃないですか?美味しそうですよ」と慰めると「大きくて、美味しいけどよ、道東産は、殻が地味じゃん・・・、俺は、あの浅利の模様が好きなんだよ」と、嘆いていました。アサリは広く生息しており、日本近海では、千島列島、日本全域、朝鮮半島、中国沿岸、台湾やフィリピンからインド、パキスタンにも生息しています。もともとは居ないはずのアメリカの太平洋沿岸やハワイにも生息していて、これはタンカーのバラスト水に紛れこんだか、誰かが商業目的で移植したのかは判りません。日本で浅利と呼ばれる様になった理由を早い時代で、詳しく解説しているのは「目八譜(もくはちふ)」です。汽水の砂泥を「漁る」と掘れるから「あさり」、もしくは砂泥の浅いところにいるから「浅貝」でそれが変化したと記載されています。目八譜は武蔵石寿が1843年に、日本近海に住む貝類の約1000種類を、7つのグループに類別して写生し、 詳細な解説を附した極彩色の貝譜です。貝類の和名の、かなりの部分が目八譜で掲載されている名前を、そのまま採用しています。挿絵は服部雪斎が描いています。目八譜の「目八」は漢字の「貝」を分解したものです。洒落ていますよね♪現在は国会図書館デジタルコレクションのWebサイトで公開されていて、目八譜は会員登録をしなくても、誰でも簡単に閲覧できます。一度覗いてみてください。精密な描写にびっくりしますよ。さて日本産の浅利の資源減少についてです。「国産アサリの復活に向けて」という提言が、水産庁とアサリ資源全国協議会企画会議と独立行政法人水産総合研究センターの三者共同で、2006年に出されて、2009年には改定版が出されました。この提言によると国産の浅利は1963年頃から1985年位までは多い年は15万トン、少ない年でも10万トン以上漁獲されていました。提言が最初に出された2006年から2009年は3万トンにまで激減し、提言によると「危機的状況に陥っている」と記されています。その提言で、減少の原因は、
・生息適地である干潟などが減った
・資源管理が不十分
・アサリの食害生物であるナルトビエイやサキグロタマツメタが多くのアサリを食べてしまうことやカイヤドリウミグモの寄生によって大量のアサリが死亡して減少
の3つを挙げ、対策の提言として、
・浅利の生息場の造成と生息環境の維持
・種苗移植と保護育成
・大量死亡対策
の3つを挙げていますが、残念ながら顕著な効果は無かったようです。その後も浅利の漁獲量は減り続け、2016年には1万トンを切ってしまいました。最近発表された2023年の農水省の統計によると、ついに5,500トンにまで、減ってしまっているのです。提言で危機的状態と言った時の五分の一以下にまでの減少で、それこそ危機的激減です。現在、日本人が食べている浅利の8割は輸入に頼っています。かつて日本に輸入される浅利の三分の二が北朝鮮産でした。拉致被害の早期解決に向けた経済制裁で2016年からは公式なルートでは北朝鮮産の浅利は日本に入ってきていません。また2022年には中国産や韓国産の浅利を熊本などで畜養し、日本産で販売した産地偽装問題が発覚し問題になりました。産地偽装は、もちろん許される事ではありません。でも消費者が「中国産や韓国産は偽装しないと売れないくらい悪いもの」と勘違いし、その結果、国内産を購入したい圧力が強くかかってしまったのも事実のようです。買いたい!と言う人が増えると、当然国内産の単価が上昇しました。漁獲高が減少している時に需要の急増ですから、価格は一気に、それこそ何倍にも跳ね上がったのです。今まで、「あまり良い値で売れ無いから・・・」と浅利漁を休んでいた漁業者たちも、そんな高値で売れるのならば!と漁を再開してしまいました。激しく高まった採集圧が浅利の再生力をはるかに上回り、一気に資源枯渇に至ってしまった・・・そんな流れがある気がいたします。浅利の資源量を正確に見直し、浅利の再生力に見合った漁獲枠の設定とその厳格な遵守が何よりも必要です。また、稚貝が捕食者達に食べられないように管理された干潟を官民合わせて拡大する事も重要です。またこれからは牡蠣の養殖のような籠に吊るして、捕食者達に食べられない方法で、大量に浅利を養殖する技術の確立の必要があります。
今回のもうひとつの主役は豆です。農水省によると「豆」とは、植物分類学上、マメ科に属する植物の種子を指します。世界で約650属1万8,000種に及び、植物ではキク科、ラン科に次ぐ一大グループだそうです。公益財団法人 日本豆類協会によると世界の豆で生産量が多いのはインゲンマメ、ヒヨコマメ、エンドウマメ、ササゲの順だそうで、2023年に豆類全体が世界で9400万トン生産されるうち、この4つだけで73%を占めるそうです。「あれ?日本人に一番馴染の深いダイズは上位じゃ無いんだ」と気が付かれた読者の方!鋭いです!!実は、豆の統計にはマジックが潜んでいます。ダイズは国際連合食糧農業機関(FAO)の統計では油糧種子に分類されて、穀物として食べる豆の統計から除外されているのです。ちなみにダイズの2023年の世界生産量は3億7000万トンで穀物豆の約4倍あるのです。また、日本のダイズ生産量は、世界24位で26万トンあります。国内生産の豆でダイズの次に多いのはササゲ類で、小豆、ササゲ、緑豆などが含まれます。「緑豆」は「りょくとう」と読み、もやしの原料になります。もやしに使われる緑豆の国内生産は僅かです。殆ど、中国の内モンゴルから輸入されます。
今回の浅利とバジルと豆の春雨炒めに使った豆はインゲン豆、スナップエンドウと空豆です。フライパンに油とスライスしたにんにくを入れ、香りが出るまで弱火で炒めます。ナンプリックパオを加え油になじませて、浅利を加え、蓋をし、揺りながら、口が開いたものから取り出していきます。浅利を取り出したら中火にし、豆と緑豆春雨を加え炒めます。火が通ってきたら浅利をフライパンに戻して、ナンプラー、オイスターソースを加え炒めます。火を止めてからバジルを加え混ぜ、お皿に盛りつけたら出来上がりです。さて、この浅利とバジルと豆の春雨炒めにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはフレシネ カルタ ネバダでした。昨年のスパークリングワイン市場を振り返ると、円が安止まりした関係もあり、シャンパンが値上げされ、前年比が悪くなったかわりに市場を広げたのが、高価格帯のスパークリングです。フレシネは世界No.1※1カヴァとして、150カ国以上で愛されている、スペイン生まれのスパークリングワインブランドです。世界No.1カヴァだけでなく、日本売上No.1 ※2スパークリングワインでもあるのです。マリアージュ実験で1位に選ばれたフレシネ カルタ ネバダは、拡大していく高級スパークリング市場で更なる躍進を求めて今年3月にリニューアル発売をした製品です。スペイン語で「雪の手紙」というロマンチックな名前を持つ、ほのかな甘口の、白いフロスティボトルに入ったフレシネです。ぶどうはマカベオ、サレーロ(チャレロ)、パレリャーダの3つです。
グラスに注ぐと淡いレモンイエローに僅かにゴールドが入っています。きめ細かな泡が次々と立ち昇ります。グラスからは、りんごやレモンを思わせる香りと、トーストを軽く炙ったような香ばしい香りがしてきます。爽やかな酸と、ふくらみを与えるやさしい甘さが広がるフルーティな味わいのスパークリングワインです。日本では黒いボトルのコルドン ネグロの方が販売量では上位なのですが、ドイツなどでは圧倒的にカルタ ネバダの方が沢山売れているのです。浅利とバジルと豆の春雨炒めと合わせると、浅利がナンプリックパオで炒められる事で纏った旨辛さと、カルタ ネバダのやさしい甘さとが抜群に合っています。
「インゲン豆、スナップエンドウと空豆と浅利の炒め物だから、もっとシンプルな旨さを想像していましたが複雑な旨味ですね」
「ナンプリックパオはタイチリペーストとも呼ばれ、唐辛子と、乾燥して焙煎した蝦が味わいの中心になります。更に生の蝦を摺り潰した物やエシャロット、ニンニク、パームシュガー、タマリンドペーストが入っている複雑な旨味の万能調味料です」
「カルタ ネバダは二次発酵を瓶の中で行い、そのまま澱と一緒に熟成させます。そうする事で酵母が分解する事によって生まれる旨味が味わいに複雑さを与えるのです」
「空豆がほくほくとして甘いですよね。カルタ ネバダのほんのりとした甘さと良く合っていますね」
「浅利を噛むと、じゅわっと出てくるコハク酸の旨味と、ナンプラーのイノシン酸系の旨味が相乗効果でより美味しくなっています、そこにフレシネの酵母の自己分解からくる旨味が更に味わいを広げていますね」
「浅利の旨味とナンプリックパオの味わいを春雨が吸う事で、豆類に味が良く絡みますよね」
「そうそう、春雨が旨味を吸い込んでいるからカルタ ネバダと良く合うんですね」
タイでは、汁気をもう少し多めに作ってご飯にかけて食べたりもするようです。
皆様も是非浅利とバジルと豆の春雨炒めに挑戦してみてください。そしてフレシネ カルタ ネバダとの素晴らしいマリアージュをお楽しみくださいませ。
※1 IWSR2023 スペインスパークリングワイン販売数量
※2 SRI+ 輸入スパークリングワイン市場 23年10月-24年9月 累計販売金額 7業態(SM、CVS、HC、DRUG、酒量販店、一般酒販店、業務用酒販店)



