今回のレシピは、サルティンボッカです。イタリア料理でも、屈指の有名料理ですよね。Saltimboccaの「bocca」は「口」で、「Salti」は「ジャンプする」なので直訳すると「口に飛び込んでくるくらい美味しい料理」と言ったところですね。ローマのサルティンボッカが、余りにも有名なのでローマが発祥の料理だと勘違いされている方が多いのですが、ローマに所在地を置くサルティンボッカのホームページにも「サルティンボッカが生まれた場所は、どうやらロンバルディア州のブレシアらしい」と書かれたうえで「ブレシアからイタリア各地に広まるなかで、ローマで独自に発展し大輪の花を咲かせた」と書いてあります。仔牛肉の薄切りに生ハムを乗せて、セージを更に乗せて爪楊枝で止めて焼くバージョンと、仔牛肉の薄切りに生ハムを乗せてクルクルと巻くバージョンの2種類があります。本場イタリアではどちらが多いのか確かめる為にイタリア語の料理のページでSaltimboccaとして掲載されている写真を104枚探し出して数を数えたところ、平らなサルティンボッカの写真が100枚、巻いたバージョンは4枚でした。平らなバージョンのうち、外に明らかにセージが見えるのが89枚、見えないのは11枚で、そのほとんどは生ハムから緑色が透けていました。なのでセージは、ほぼ必需品のようでした。ローマ以外のイタリア各地でも作られていて、ミラノ風は仔牛にパン粉をまぶして揚げてセージのワインソースをかけるのが定番です。マルケ州では鶉やパンチェッタも使われたりします。ナポリのサルティンボッカはSaltimbocca alla napoletanaとかSaltimbocca napoletaniと呼ばれますが、全く別の料理です。丁度、コッペパンのような形のパンの事をナポリのサルティンボッカと呼ぶようです。
さて、このサルティンボッカにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはレオナルド ブルネッロ ディ モンタルチーノでした。レオナルド ブルネッロ ディ モンタルチーノを醸しているのはカンティーネ レオナルド ダ ヴィンチです。カンティーネ レオナルド ダ ヴィンチはイタリアが誇るレオナルド ダ ヴィンチの生まれ故郷であるヴィンチ村のすぐ傍にあります。レオナルド ダ ヴィンチは科学者であると共に哲学者であり、建築家、画家、彫刻家、作家で、音楽家でかつ数学者でもありました。解剖学、博物学、動物学、植物学、鉱物学、天文学、気象学、地質学、地理学、物理学、化学、光学、力学、軍事工学、流体力学、航空力学にも秀でていました。簡単に言えば、あらゆる事が人よりずば抜けて優れた天才だったのです。レオナルドは1452年4月15日にフィレンツェから、西に20mkちょっと離れたヴィンチ村で生を受けました。「ダ ヴィンチ」は「ヴィンチ村出身の」と言った意味なので苗字として扱うのはちょっと変なのですが、レオナルド ダ ヴィンチ本人がダ ヴィンチを苗字として使っていた形跡もあります。彼の多彩な才能は、神秘的な能力や神がかった現象ではなく、精密な観察力と、人並外れた分析力と推理力の賜物なのです。ワイン生産地で生まれた彼は、ぶどうの栽培やワインの醸造にも事細かに言及しており、カンティーネ レオナルド ダ ヴィンチでは、長年に渡りレオナルド ダ ヴィンチのぶどうの栽培やワインの醸造に関する記述を研究し「天才のやり方である」と思われるワイン醸造方法などを纏め上げました。そして、これに「Metodo Leonardo®(メトード・レオナルド®)」と名付け登録しました。これは、カンティーネ レオナルド ダ ヴィンチのワインの品質を決定する重要な要素であるため、常に厳重に守っているそうです。レオナルド ブルネッロ ディ モンタルチーノの格付はイタリアの格付の最高ランクであるDOCGのブルネッロ ディ モンタルチーノDOCGで、品種はサンジョヴェーゼ100%です。かつてサンジョヴェーゼはサンジョヴェーゼ・グロッソとサンジョヴェーゼ・ピッコロに分けられていて、ブルネッロ ディ モンタルチーノはグロッソで醸すと教わりましたが、現在ではピッコロとグロッソには遺伝的な違いは無い事が判っていて、サンジョヴェーゼで統一されています。
このレオナルド ブルネッロ ディ モンタルチーノは最低4年の樽熟成を経て、リリースされます。グラスに注ぐと、濃く紫がかったダークチェリーレッドです。香りのボリュームが多く、ブラックベリーやカシスなどの黒いベリーやチェリーなどの赤いベリーを思わせる香りを感じます。口に含むとボリューム感があり、おだやかな酸と充実した果実味とがうまくバランスを取っています。柔らかいタンニンが程よく、余韻も長いワインです。サルティンボッカと合わせると、深い味わいの仔牛肉と複雑な旨味の生ハムの豊かな味わいとがっぷり四つで組み合っていて、旨味が素直に広がるのが判ります。
「旨いですね。流石イタリアを代表する料理と、最高格付のワインのコンビネーションですね」
「マリアージュした瞬間の輝きが違います」
「他の軽めの赤ワインで合わせた時も、とても美味しくて、仔牛の素直な美味しさが出ているなぁ・・・・と思いましたが、このワインと合わせると別格の美味しさでした。西洋料理で仔牛肉が肉のランクで最上位である事が良く判るマリアージュでした」
「奥深く、複雑な旨味がありますね」
「確かに、仔牛の存在感が、このワインと合わせる手前の、ちょっと軽めのワイン達の時とは、全然違っていました」
かつては、仔牛肉は手に入れるのが難しい肉でした。フレンチやイタリアンを得意先にしている業務用の肉屋さんに注文する以外に買う方法が無かったのですが、最近ではネットショップで手軽に購入出来ます。是非皆様もサルティンボッカに挑戦してみてください。そしてレオナルド ブルネッロ ディ モンタルチーノとの抜群の相性をお楽しみくださいませ。