この料理に合うワイン

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1st

サンタ カロリーナ カルメネール レセルヴァ 

サンタ カロリーナ カルメネール レセルヴァ

チリ
ぶどう品種 カルメネール

今回の料理は鶏のカリカリ唐揚げクミン風味です。唐揚げは、もちろん揚げ物です。和食の技法は、五法と呼ばれる5種類の調理法に大別されます。「生(切る)」「煮る」「焼く」「蒸す」「揚げる」の5つの方法です。「揚げる」では更に2種類に分けられます。天ぷらのような、衣を付けて揚げる料理と、粉を付けるくらいで、素材をそのまま揚げる素揚げの2つで、唐揚げは素揚げ系の揚げ物です。揚げ物の歴史を遡っていくと、「焼く」や「煮る」よりも歴史が浅い事が判ります。植物性の油が現代よりも、はるかに高価だった事もありますが、揚げ物をする為に必要な金属製の容器が、一般的に普及するのに時間がかかったからだと考えられます。例えば、イギリスでは金属製の容器が普通の家庭でも使われるようになったのは18世紀になってからだと言われています。最古はいつなのか?を考えると、考古学的に金属製の容器が確認されるのは、鍋の場合、今から約4000年前のエジプトやメソポタミアです。フライパンが確認されるのが、今から大体3500年位前のメソポタミアだと言われています。金属製の容器が使われてからは、肉を焼いた時に残る脂や、植物の種子から採った油で揚げるという行為そのものは、当然行われていたと考えるのが自然です。しかし、フランス料理の歴史に詳しい方に話を伺うと、文献として残っている古いレシピなどに、油で揚げることを指す「friture」や揚げた物を指す「frit」が頻繁に出てくるのは、第一次世界大戦以降からだそうです。日本の料理の歴史を振り返ると、揚げるという言葉そのものは、古くから散見されるようですが、当時の植物性の油の主流だった胡麻油は大変高価で、加熱する媒体として気軽に使用できるものではなかったようです。どちらかというと、胡麻の良い香りを付け加えたい時にごく少量使われたようです。「誤魔化す」という言葉は江戸時代の胡麻を使ったお菓子から来ていますが、料理を作った時に、何か一味足りないなぁと思えば、胡麻油を一垂らしすれば、かなり美味しくなって「誤魔化す」事が出来ます。揚げ物が一般的になるのは、江戸時代も中盤以降になってからだといわれています。当時の江戸では、天ぷらの屋台なども登場しだし、時には庶民の口にも入ったようです。さて、鶏の唐揚げは?と言うと天ぷらより、随分時代が下ってからです。偶発的に、多目の油で炒められた鶏は存在したとは思われますが、外で食べる料理としての唐揚げが確認されるのは、なんと昭和に入ってからなのです。銀座にある三笠会館のHPには、「三笠会館は昭和7年、1932年に外食メニューとして初めて鶏の唐揚げをお出しした店、といわれています」と記載されています。今、子どもたちにも大人気の唐揚げは、日本に登場してからまだ90年も経たないレシピなのですね。今回の唐揚げの味わいのポイントはクミンです。クミンは、エジプトなどを原産とするセリ科の一年草です。種子と思われがちですが、クミンは種だけでなく子房も一緒に乾燥しますので、種子というよりは果実です。和名はウマゼリ=馬芹、フランス語ではキュマン=cuminです。カレーには必須のスパイスですし、中東、東欧、北米を始めとして、世界中で使われています。神秘的な力があると信じられていて、中世のヨーロッパでは結婚式の臨む時にポケットに忍ばせていたそうです。現代でもライスシャワーにクミンが入れられている事があります。

今回のレシピでは鶏モモの骨付きぶつ切りをクミン風味のカリカリ唐揚げにします。クミンは鶏に下味をつけるときに一緒に漬け込みます。カリカリにするために、卵白にくぐらせ、片栗粉をたっぷりとまぶして揚げます。

さて、この鶏のカリカリ唐揚げクミン風味にテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはサンタ カロリーナ カルメネール レセルヴァでした。サンタ カロリーナ社はチリで140年の歴史を持つ老舗です。古いだけではなく、「ワインエンスージアスト」誌のワインスターアワードで「ワイナリー・オブ・ザ・イヤー」※を2018年に受賞した実力派です。サンタ カロリーナ社は、この春サンタ カロリーナ レセルヴァ シリーズを世界的にリニューアルしました。ラベルは創業者夫人の「カロリーナ」への敬意を込めたデザインになりました。カロリーナ夫人は、サンタ カロリーナ社の創業者ルイス・ペレイラ・コタポスとサンチアゴの街で出会い、結婚しました。そして、なんと10人もの子どもに恵まれました。彼女は社員や得意先を集めたパーティーや催しものを沢山開催しました。パーティーの準備の時には、飾りつける花や装飾品、会場で流れる音楽など、それこそ細部にいたるまでお客様に愉しんでもらえるよう、綿密に綿密に、こだわり抜いて準備をしたそうです。パーティーに参加する者は皆、本当に特別で心から愉しめる忘れる事の出来ない時間を過ごしたそうです。いつしか、皆が、カロリーナ夫人のことを、親しみを込めて「BIG MOTHER」と呼ぶようになったそうです。

カルメネールは、その品種の名前の由来である「カーマイン」= carmine=「鮮やかで深みのある赤色」が表している通り、濃い赤色が特長のぶどう品種です。サンタ カロリーナ カルメネール レセルヴァをグラスに注ぐとボリューム感のある華やかな香り立ちです。ブルーベリーやアメリカンチェリーを連想させる果実香があります。スパイシーさや香木を思わせる香りもあるフルボディのワインです。

カリカリ唐揚げをかじると、正にカリカリです!場所によってはカリカリを通り越して、ガリガリのところもあるほどです。

「カリカリですね」

「卵白と片栗粉がポイントです。小麦粉だとどうしてもしっとり感がでてしまいます」

「竜田揚げの食感と、唐揚げの風味の良いとこ取りですね」

そして、鶏はふっくらとジューシーです。カルメネールを合わせると、良く熟した赤系ベリーを思わせる充実した果実味が鶏の肉汁と上手くからみ合います。カルメネールの品種の特性でもある若々しい緑のニュアンスと、鶏が纏ったクミンと引き立てあっている気がします。

「鶏が一段と美味しく感じます」

「いろいろワインを合わせてみましたけれど、鶏肉の肉としての味が一番くっきりするのがサンタ カロリーナのカルメネールだと思いました」

「いろいろな味のパーツパーツがはっきり見える感じですよね」

ワインと料理、それぞれを単体で味わうよりも、より一層美味しく感じられる「マリアージュの典型」が楽しめる組み合わせでした。

「クミンとカルメネールが持っているスパイシーさとが共鳴する感じで、とても美味しく感じられました」

皆様も、唐揚げを作ろうかなぁと思った時に、この鶏のカリカリ唐揚げクミン風味の事を思い出して下さい。そして、チリのサンタ カロリーナ カルメネール レセルヴァとの素晴らしいマリアージュをお楽しみください。

※『ワインエンスージアスト』誌2018ニューワールド部門

2位に選ばれたのは、ヴュー パープ フランス 赤でした。今回の素材の鶏肉や卵は「物価の優等生」とも呼ばれています。物価が安かった昔に比べても値段が安定していて、ある意味、庶民の強い味方なのですね。ワインの世界でも、今年の2月1日に日本とEUとの経済連携協定(EPA)が発効して、欧州のワインが、以前よりもお手頃価格でお買い求めいただける物が増えました。ヴュー パープは1935年の発売以降、フランスの家庭で長く親しまれてきたロングセラーブランドです。なんと、フランスでは販売数量No.1※ブランドの実績を誇っているのです。この春、そのヴュー パープがフランス原産のぶどうだけを使って更にパワーアップしました。完熟したブラックチェリーやブラックベリーを思わせる香りが感じられます。特長であるまろやかな果実味とやさしい酸味、軽やかなタンニンが心地良いワインです。鶏の唐揚げのボリューム感とぴったりマッチして、鶏の旨味とヴュー パープの軽やかな果実味が楽しめる、心地良いマリアージュでした。

※IRI FRANCE 2017データ フランス国内地理的表示のないワイン年間販売数量(ヴューパープブランド計)

2nd

ヴュー パープ フランス 赤 

ヴュー パープ フランス 赤

フランス
ぶどう品種 カリニャン、グルナッシュ、カベルネ・ソーヴィニヨン

3位はロス ヴァスコス カルメネール グランド レゼルブ、またもやカルメネールのワインでした。グランド レゼルブの名前の通り、そして価格的にもイチオシのサンタ カロリーナよりも高価なワインですので、合い方は全然違いました。鶏の唐揚げが、まるで別のフレンチの料理になったかのような質感を感じました。また、充実のボディ感で唐揚げの美味しさをしっかりと受け止めてくれていました。一方で、クミンとの相性の良さ、赤い果実のニュアンス、若々しい緑のニュアンスの出方などサンタ カロリーナのカルメネールとの共通点も多く感じました。鶏のカリカリ唐揚げクミン風味のレシピはこの2つのワインに限らず、カルメネール全般との相性の良さがあるのかもしれません。

3rd

ロス ヴァスコス カルメネール グランド レゼルブ 

ロス ヴァスコス カルメネール グランド レゼルブ

チリ
ぶどう品種 カルメネール

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