最新情報とトピックス 自園産ぶどう100%登美の丘ワイナリーシリーズ 厳選国産ぶどう100%ジャパンプレミアムシリーズ サントリー日本ワイン 商品一覧 受賞歴 ワイナリーとワインメーカーたち 日本ワインとは 日本ワイン体験記 サントリー×料理通信 登美の丘ワイナリー見学
登美 百年の物語
世界的にも稀少な貴腐ワインづくりに取り組んでいます。

 登美百年の歴史の中でも、1975年の出来事はひとつの"事件"と言ってよいでしょう。事件とは、貴腐ぶどうの収穫です。
 ボルドーのソーテルヌ、ハンガリーのトカイ。貴腐ワインと聞いて、多くの人はこれらの名前を思い浮かべることでしょう。それもそのはず。貴腐ワインづくりの前提となるぶどうの貴腐化は、ふさわしい気象条件でしか起こらず、世界的にも稀れで貴重だからです。
 貴腐化とは、ぶどうの粒にポトリティス・シネレア菌が付いて果肉中の水分が蒸発、著しく糖分が濃縮する現象ですが、この干しぶどうのようになった実を醸したワインはすばらしい芳香と甘美なコクを持ちます。
「"ぶどうの粒の中でワインづくりが行われている"と表現する人もいるんですよ」と渡辺直樹技師長。
 75年、大井一郎所長(当時)が登美の丘の畑を見回る中で貴腐ぶどうの存在を発見し、世界的にも稀少なワインづくりへの一歩を踏み出しました。
「技術的にわからないことばかりで、手探りだったでしょうね」と渡辺技師長は当時へ思いを馳せます。
「搾るだけでも大変です。干しぶどうのような実から果汁を取り出さねばならないのですから。また、搾った果汁は濃厚で糖度が高い。高糖度でも活動できる酵母でなければ発酵させられない。収穫のみならずワインにするのも困難な道のりだったろうと想像します」
 困難を乗り越え、75年に収穫した貴腐ぶどうは見事、ワインとして結実、78年に初リリースされました。
 そもそもが気象条件に負うところの大きいワインづくりですが、それにしても、ぶどうの貴腐化は天任せ。こればかりは技師長も手の出しようがありません。
「2013年は、11月後半になってから、ぐっと貴腐化が進みました」。収穫は3週間ほどかけて、貴腐化が進んだ房から、房ごとに採っていきます。それをさらにひと粒ひと粒、状態を見ながら選り分ける。そして、発酵に1カ月。発酵が終わったら、低温のタンクで3年以上。さらに瓶に移して3年以上……。 「貴腐ぶどうの類稀れな持ち味に加えて、年月が醸し出す味わいを併せ持たせるのが、登美の貴腐ワイン」と技師長。
"事件"から40年弱。つくりにも磨きがかかって、「登美 ノーブルドール」はいっそう芸術品のような味わいです。

新しく導入したタンクです
渡辺直樹
渡辺直樹
1988年サントリー入社。登美の丘ワイナリーにて栽培・醸造技術開発を担当。その後、ボルドー大学留学を経て、フランスの国家認定資格であるエノログ(ワイン醸造士)を取得。登美(赤・白)、甲州、塩尻メルロ、マスカット・ベーリーA等の品質向上に取り組み続け、2007年より現職。
君島佐和子-文
ジャーナリスト/『料理通信』編集長
photographs by Tsunenori Yamashita