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登美 百年の物語
収穫のタイミングの重要度が増しています。

 8月21日から始まった収穫もいよいよ終盤。貴腐ワイン用のリースリングを残すばかりとなりました。
 登美の丘ワイナリーでは、収穫が3カ月弱にも及びます。ピノ・ノワールから始まって、リースリング・フォルテ、シャルドネ、メルロ、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド……同じ品種でも、畑が違えば、土質や日当たりも違って、熟すスピードも違う。当然、収穫のタイミングも違ってきます。そんなぶどうの熟度を見ながら、畑ごとに細かく収穫日を決めていく、と3カ月もの長丁場になってしまうのですね。
「収穫のタイミングでワインのクオリティは変わる」と渡辺直樹技師長は言います。ぶどうをどのくらい熟させるかによって、ワインになった時のアロマや味わいは明らかに違ってくるからです。
 技師長たちが心掛けているのが、畑での完熟。
「ぶどうが元々持っているポテンシャルを最大限発揮させようと思ったら、十分に熟させることが大切です」
 見極めのポイントは、「赤系品種は種まで熟しているかどうか。種を齧ると、パリッと煎ったような香ばしさが感じられたら合格ですね。白系品種の場合はアロマです。青っぽさや水っぽさがなくなって、香りのボリュームが増し、余韻が長くなる状態を目指します」。
 たとえば、甲州の収穫を登美の丘ワイナリーでは一般的な収穫時期よりも3週間も遅く設定しています。それによって、甲州特有の皮の渋みがやわらかくなり、芳醇さと口当たりの伸びがぐっと増し、白桃やライチのような香りが出てくる……。技師長いわく「畑でワインをつくっていくイメージです」。
「今年は、ブラッククイーンを例年より1カ月ほど遅く収穫しました。辛抱強く待って、じっくり完熟させたおかげで、この土地ならではのやさしさ、やわらかさ、繊細さがもたらされたように思います。ブラッククイーンの生みの親である川上善兵衛は、1930年代、1940年代前半に登美の丘ワイナリーの再建に尽くした人物です。今年のブラッククイーンは、彼が思い描いた味わいに近づいたのではないかと思っているんですよ」
 収穫シーズン、技師長はぶどうと会話するばかりでなく、ぶどうを通して先人と会話しながら、最良のタイミングを逃すまいと畑を回っていたのですね。

登美の丘の収穫風景です
渡辺直樹
渡辺直樹
1988年サントリー入社。登美の丘ワイナリーにて栽培・醸造技術開発を担当。その後、ボルドー大学留学を経て、フランスの国家認定資格であるエノログ(ワイン醸造士)を取得。登美(赤・白)、甲州、塩尻メルロ、マスカット・ベーリーA等の品質向上に取り組み続け、2007年より現職。
君島佐和子-文
ジャーナリスト/『料理通信』編集長
photographs by Tsunenori Yamashita