鳥井信治郎は、なぜこの京都郊外・山崎の地を選んだのでしょうか。
日本人の繊細な味覚にあった、日本のウイスキーをつくりたい。
信治郎は、あくまでも日本的な風土にこだわっていました。
そんな強い信念で、ウイスキーづくりの理想郷を求めて日本全国を踏破し、辿り着いた地こそ、山崎でした。

山崎は、万葉の歌にも詠まれた水生野(みなせの)と言われる名水の里です。
名水百選のひとつ「離宮の水」は、今もこんこんと湧きつづけています。
茶人・千利休もこの地の水を愛し、秀吉のために茶室「待庵」を構えたほど。

そして、鳥井信治郎もこの地の名水に取り憑かれた一人でした。
水はウイスキーの命。軟水の中でも硬度が高めの山崎の水は、複雑な香味や重厚なモルト原酒をつくるにはうってつけ。
山崎蒸溜所の職人たちは毎朝、水のデータを集めているのですが、その品質は創業時と変わらないといいます。

さらに、山崎をその舞台に選んだもうひとつの理由が、気候にありました。
京都の南西、天王山の麓の竹林が生い茂る山崎は、四季折々の変化が感じられる自然豊かな地。
桂川、宇治川、木津川が合流する地点にあり、辺り一帯を山に囲まれています。
濃い霧がたちこめやすく、温暖かつ湿潤な気候は、ウイスキーの熟成にとってまさに好条件。
木樽の中で眠るウイスキーが、ゆっくりと熟成していく助けになるのです。

ジャパニーズウイスキーのふるさと、山崎。この恵まれた土地と水から、
「山崎」のあの豊かな香味が生まれているのです。