WHiSKY on the Web ウイスキーミュージアムウイスキーをつくる椎名誠 シングルモルトウイスキーの旅 > 第1回 スペイサイド突入編
椎名誠写真椎名誠 シングルモルトウイスキーの旅
第1スペイサイド突入編回

いよいよ聖地へ

ホテルに到着する直前、「生命の水」スペイ川と目映いばかりの新緑が目に滲みた

3時半にスコットランドで一番小さい蒸溜所というエドラダワー蒸溜所に着いた。ここは蒸溜所に住み込んでいる三人の職人でウイスキーを作っているのだ。キルトを着けた愛想のいい案内係のおじさんがいる。このひと、頭がきれいに丸く禿げているのだが、その頭と(このどう見てもわが東洋のおとっつぁんの思考レベルでは)女性のスカートにしか見えないキルトの組み合わせがおかしくてしょうがないのだが、笑ってはいけないのであった。午後9時に目的地スペイ川の近くのクレイゲラヒホテルに到着した。緑の森と草原とその間を縫う美しい川を窓からのぞめる、お城のようなホテルである。


バルベェニーの12年もの

ホテルのバーの棚を見て驚いた。さまざまなシングルモルトウイスキーが200本ぐらい並んでいる。早速バルベェニーの十二年ものを「くい」とやった。まずは喉をかっ切られないようにストレートである。それからマッカランの十二年ものをもったいないので水割りで「くい」。ここで初めて知ったのだが、シングルモルトウイスキーの本場でやる水割りは、グラスのウイスキーの10分の1ぐらいの水を加える程度である。水を加えることによって香りを引き立てるためらしい。その水もマザーウオーターといって蒸溜所でウイスキーを作るのに使う水そのものが一番いいらしい。

80年の歴史を持つパブ「フィディックサイドイン」で近所の常連客と乾杯する筆者。スコットランドでは乾杯するときはスラジンバーという

そうかよおし、また少しわかったぞ!とまなじりをつり上げ、そのあとホテルの近くにあるクレイゲラヒ村のパブ『フィディックサイドイン』に突入した。客は近所の常連のようで、老人が多い。犬も2匹いた。犬の散歩のついでに寄ったのか、犬の散歩を口実に出てきたのかとにかくみんな嬉しそうにウイスキーを飲んでいる。カウンターに座っていると、どう見ても80歳はとうに越したと思われるおばあさんが黒ビールをチェイサー替わりにマッカランをストレートでやっていて、えらくカッコいいのであった。