サントリーホール オルガン プロムナード コンサート
東京藝術大学卒業、同大学院修了。DAAD奨学生として2011年に渡独。公益財団法人ローム ミュージック ファンデーションおよび文化庁新進芸術家海外研修制度の支援を得、ハンブルク音楽演劇大学大学院古楽オルガン専攻にてW. ツェーラーに師事。満場一致の最高点栄誉付きで16年にオルガンの国家演奏家資格取得。武蔵野市国際オルガンコンクールで邦人として初優勝の後、ドイツとイタリアの3つの国際オルガンコンクールで優勝。18年には中欧国際音楽祭にてスロヴァキア放送響賞を受賞。これまでに藝大フィル、京都市響、ビドゴシュチ室内管と協演。NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」、バイエルン放送局、北ドイツ放送局、スロヴァキア国営放送などに出演。
私はレーガーが大好きだ。分厚い和音に感情的な書法。バッハを敬愛し、対位法を通してバッハに近づこうとしたその姿勢。友達には決してなれない気難しいタイプに違いないけれど、垣間見せる繊細さと隣り合う凶暴性、そんな相反する世界から繰り広げられる彼の音楽に私は魅了されるのである。リヒャルト・シュトラウスに献呈されたレーガー最後のオルガン作品、『幻想曲とフーガ ニ短調 作品135b』では、じわじわと完成されていく巨大な建造物の如きフーガに圧倒される。オルガンの最弱音から建物を揺るがす最大音量までを網羅する彼の作品は、ぜひとも生で、その空気の揺れを体験して頂きたい。
そんなレーガーをご来場の皆さまにより愛して頂けるよう、公演ではドイツ・ロマン派のオルガン作品から、レーガーより一世代前のシューマンとリストの作品を添えてお届けしたい。
シューマンもレーガー同様に対位法の練習に勤しみ、そこから生まれた作品の一つが、この『ペダル・フリューゲル(足鍵盤付きのピアノ)のための練習曲』である。今日ではその楽器の特殊さゆえ、しばしばオルガンで演奏されるものの、実にピアノ的な作品といえよう。そしてリストの『アヴェ・マリア』。彼のオルガンやピアノの大作とは大きく異なり、ここではとても素朴で優しい味わいの音楽が流れてゆく。遠くの教会の鐘の音が響いている様が模写され、都会の喧騒からしばし時を忘れさせてくれるであろう。ドイツ・ロマン派の様々な響きをお昼のひと時にご堪能いただければ幸いである。
(福本茉莉)
サントリーホール
0570-55-0017
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