English
サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン
ボロメーオ・ストリング・クァルテット ベートーヴェン・サイクル II
日時
2013年6月6日(木) 19:00 開演 (18:20開場、21:00終演予定)
出演
ボロメーオ・ストリング・クァルテット
料金
指定5,000 指定早割3,000 サイドビュー4,000 サイドビュー早割2,000 学生1,000
*学生席はサントリーホールチケットセンター(電話・WEB・窓口)のみ取り扱い。25歳以下、来場時に学生証提示要。
日時
曲目
  • ベートーヴェン: 弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調 op.74 「ハープ」
    : 弦楽四重奏曲第11番 ヘ短調 op.95 「セリオーソ」
    : 弦楽四重奏曲第12番 変ホ長調 op.127
  • *休憩は1回予定
出演
ボロメーオ・ストリング・クァルテット
料金
指定5,000 指定早割3,000 サイドビュー4,000 サイドビュー早割2,000 学生1,000
*学生席はサントリーホールチケットセンター(電話・WEB・窓口)のみ取り扱い。25歳以下、来場時に学生証提示要。
会場
ブルーローズ
主催
サントリーホール
お問い合わせ
サントリーホール 0570-55-0017
弦楽四重奏:ボロメーオ・ストリング・クァルテット

© Eli Akerstein
「最高のものが、そこにある。」(ボストン・グローブ紙)絶大な好評を博すボロメーオ・ストリング・クァルテットは、世界で最も注目されている弦楽四重奏のひとつである。ベートーヴェン、バルトーク、シェーンベルク、ショスタコーヴィチなどに造詣が深いだけでなく、挑戦的な現代音楽も分かりやすく、また啓発的に聴き手に届ける演奏が評価を集めている。世界中の名だたるコンサートホールや音楽祭に出演しているほか、イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館、天理文化協会、第一生命ホールなどで長期間のレジデンスを、ニューイングランド音楽院ではクァルテット・イン・レジデンスを現在まで20年間務めている。また、2000年までリンカーンセンター・チェンバーミュージック・ソサエティIIを2期務め、ナショナル・パブリック・ラジオ・パフォーマンスの98~99年シーズンのアンサンブル・イン・レジデンスを務めた。これまでに五嶋みどり、クリストフ・エッシェンバッハ、レオン・フライシャー、ピーター・ゼルキン、リチャード・ストルツマン、バーナード・グリーンハウスなどと共演しているほか、ジョン・ケージ、ジョルジュ・リゲティ、ギュンター・シュラー、オスバルド・ゴリホフなどの多くの著名な作曲家とのコラボレーションを多数行っている。ボロメーオは演奏において、Macbookやビデオプロジェクター、iPadなどを使用することで、クラシック音楽の新たな地平を拓いた。新たな技術により、練習や公演では個々のパート譜の代わりに、全てのパートを見られるスコアで演奏できるようになり、またベートーヴェンやシューベルト、バルトークなどの手稿譜を舞台上で投影し、創作プロセスを視覚化できるようにした。そして自身のコンサートのライブ録音やビデオ撮影を行い、03年に彼らの先進的レコードレーベル「The Living Archive」によって、クラシック音楽の歴史を作った。それまではロック音楽でのみ行われていた、自身のコンサートのCDやDVDのオンデマンド購入を、「The Living Archive」によって世界中で可能にした。このシリーズで聴き手は、新しく演奏機会の少ない作品を聴けるだけでなく、コンサートで聴いた音楽を、すぐに手に入れることが出来るようになった。07年4月には誉れ高いエイヴリー・フィッシャー・キャリア・グラント受賞、また06年にはアーロン・コープランド・ハウスが、毎年優れた若手作曲家の作品を国際的に初演するボロメーオ・クァルテット賞を作り、ボロメーオの現代音楽演奏への貢献を賞賛した。その他、クリーヴランド・クァルテット賞、エヴィアン国際弦楽四重奏コンクール最高位など多くの賞を受賞している。
聴きどころ
漁師さんいわく「魚は頭から尻尾まで食え。それで初めて魚の味がわかるんだ」と。それを音楽にあてはめて言えば、「ベートーヴェンの一連の作品は全部まとめて聴け」ということになるだろうか。一昨年、昨年とベートーヴェンの弦楽四重奏曲を全曲演奏する「ベートーヴェン・サイクル」が行われた。そして多くの人が感じたに違いない、「ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、全部聴いて初めてその深い味わいが分かる」のだと。ヴァイオリン・ソナタ全10曲を連続演奏会で披露するヴァイオリニストも増えている昨今。  
今年の「ベートーヴェン・サイクル」はさらに面白そうだ。アメリカで活躍するボロメーオ・ストリング・クァルテットが演奏するが、彼らは全員がMacBookを使用し、スコア全体を見ながら演奏するのだ。時にはベートーヴェンの自筆譜も見ているらしい。そして、演奏も作品18の6曲を一気に1日で演奏し、「ラズモフスキー」3曲もひとつのコンサートで披露する。「大フーガ付き」として知られる第13番はベートーヴェンの意図したオリジナルの形、さらには大フーガを独立させて改訂した形の2種類が演奏され、まさに「全曲制覇」のサイクルになる。

片桐卓也(音楽ジャーナリスト)
 
 
ボロメーオ・ストリング・クァルテットからのメッセージ
ボロメーオ・ストリング・クァルテットの第1ヴァイオリン奏者、ニコラス・キッチンから、今回のベートーヴェン・サイクルに寄せたメッセージが届きました。ベートーヴェン弦楽四重奏曲の魅力、各演奏会の曲目紹介、また、コンピューターでスコア(総譜)を見ながらの演奏について語っています。

                ――――― * ――――― * ―――――

私たちにとっては幸いなことに、クラシック音楽の歴史上には、私たちが把握している以上に多くの偉大な作曲家たちが存在しました。しかし、その中で誰の音楽を選び追求していくかとなると、恐らくベートーヴェンの音楽に最もエネルギーを注ぐことになるでしょう。ベートーヴェンの音楽には、人類のあらゆる希望・熱望が見事に具現化されています。深い悲しみから最も愉快なユーモアまで、あらゆる感情を彷彿とさせ、容赦なく楽器の限界を追求します。また、音楽の分野での功績だけでなく、難聴に勇敢に立ち向かった姿は、苦境に立たされる多くの人に困難を乗り越える勇気を与えました。

弦楽四重奏には、一つの音楽表現手段として、独特な特徴があります。知的な超絶技巧ともいえる個々の演奏家の技が聴こえると同時に、グループとしての融合されたアイデンティティーも聴こえます。想像力豊かな弦楽四重奏団の演奏には、この二つが同時に聴こえてくるのです。例えば、ベートーヴェンの作品127の緩徐楽章を聴いてみると、シンプルで深遠な感情が溢れる冒頭部分に続いてまもなく、4つの楽器それぞれが精巧かつ感情的に自分達の旋律を装飾しながら奏でる部分に達します。それぞれの装飾に個性が感じられるのですが、その裏には、楽章冒頭からの穏やかな雰囲気が続いているのが聴こえます。これは、優れた弦楽四重奏作品に現れる、幾重にも重なった音楽的対話のほんの一例です。ベートーヴェンの弦楽四重奏作品にみられるこのようなキャラクター・性質の重なり合いは、バラエティーの豊かさと可能性の点において、他に類がないといえるでしょう。音楽的衝動の掛け合いが同時に何層にも渡って展開されているため、クァルテット毎にそこにそれぞれ異なった意味合いを見つけます。このような目まぐるしく変化し複雑にからみ合うテクスチュアに光を当てる新たな音楽的発見は、今後も常に続くことでしょう。

チェンバー・ミュージック・ガーデンにいらっしゃる方の中には、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を初めて聴かれる方もいらっしゃるでしょうし、一方で、何十年にも渡って愛聴されてきた方もいらっしゃるでしょう。どのような期待を抱いてコンサートにいらっしゃるにしても、たった数回のコンサートの中で、全16曲の弦楽四重奏作品を通してベートーヴェンの想像力の絶頂を可能な限り完全に、そして深く感じていただける機会になります。

1つの作品の中に何層にも渡って様々な展開がみられるのと同様に、全作品を聴くことによってそこにもドラマが生れます。大航海時代の船乗りが地図にない海岸線を発見し続けたように、ベートーヴェンもその時々に生み出すことのできる最高の作品を書きました。人生という旅の終わりに、弦楽四重奏における全く新しい世界を切り開いていたのだということを、彼自身知る由もなかったでしょう。
 
         ボロメーオ・ストリング・クァルテット © Eli Akerstein              ニコラス・キッチン © Christian Steiner
ベートーヴェン・サイクルⅠ~V 曲目紹介
今回、作品18の6つの弦楽四重奏曲を一夜で全てご紹介することにしましたが、それは6つの作品がそれぞれどれほど個性的であるか、そして後の長大な作品がまだ構想されてもいなかったこの時期に、すでにこれほど壮大な作品が生まれていたのだということを実感していただきたかったからです。逆巻くような激しいコントラストの第4番、あらゆる悲哀と輝かしさを表した第1番、荒々しいスケルツォの第2番と第6番、壮大な変奏曲の第5番、そして風変わりな第3番、全ての作品はそれぞれの光を放ち、ベートーヴェンが持てる想像力の限界の領域で生み出した当時の作品の存在感を感じさせてくれるでしょう。 【6月2日(日) 14:00 開演】

作品59では、作品の裏側に壮大なビジョンを感じさせる第1番、不安定さが掻き立てる第2番、勝ち誇ったような第3番を通して、ベートーヴェンがいかに弦楽四重奏の持つ可能性の規模を再構築したかを披露するだけでなく、これだけの規模とエネルギーの音楽作品を3通りの全く異なった手段によって世に生み出したことが明らかになります。 【6月9日(日)14:00開演】

作品74、95と127を取り上げたコンサートでは、ベートーヴェンが歩んだ旅を辿ります。1814年にベートーヴェンは完全に聴力を失いました。彼が公の場で最後に演奏したのはピアノ三重奏曲作品97「大公」でした。したがって、このプログラムでは、周りの音を極めて正確に聴くことができた音楽家から、記憶からしか判断できなくなってしまった作曲家になるまでを追体験します。発展し続けるテクニックと共に、作品74の優雅な力強さから作品95の非常なまでの簡潔さ、そして雄弁で豊麗な作品127へと辿ります。 【6月6日(木)19:00開演】

そして、ここから後期の弦楽四重奏曲へ突入します。第4夜のコンサートでは、ベートーヴェンの最も奇想天外な作品、「大フーガ」を、彼なりの方法で扱い残したバージョンで披露します。元は作品130の最終楽章であったこの作品は、その後ほかの楽章から切り離されて独自の作品番号を与えられ、作品130には別の最終楽章が書かれました。今回の公演では、ベートーヴェンが残した2通りの組み合わせでこれらの作品をお聴きいただきます。まず第4夜のコンサートでは、独立した作品としての「大フーガ」と新たな最終楽章を加えられた作品130、そして第5夜では作品130を、「大フーガ」を最終楽章としてお聴きいただきます。なぜベートーヴェンがこれからの音楽的“建造物”が価値あるものだと考えたのか、きっとお感じいただけることでしょう。第4夜のコンサートでは、ベートーヴェンの最後の弦楽四重奏曲作品135を取り上げます。この作品では、彼がまるで作品18の気分に舞い戻ったかのようです。規模も小さく、ハイドンの弦楽四重奏曲のような優雅さまで感じさせます。最終楽章には、「かくあらねばならぬのか?」という問いと、「かくあるべし!」という答えが書き添えられています。音楽的には、それぞれの音型が反転した形になっていますが、この問いと答えこそ、ベートーヴェンが歩んできた2本のヴァイオリンとヴィオラ、チェロというアンサンブル形態の中で可能な音楽的会話のあらゆる可能性の旅を見事なまでに要約しています。 【6月13日(木)19:00開演】

作品135は、ベートーヴェンの弦楽四重奏という旅において最後の場面となりますが、第5夜のコンサートでは、音楽的に最も贅沢な旅に皆さんをお連れします。ベートーヴェンはバッハの作品、特に平均律クラヴィア作品を手本にしていました。B-A-C-H(変ロ-イ-ハ-ロ)は、バッハやその後の多くの作曲家たちにとって豊かな可能性を秘めたS型の4つの音から成る音型の1つです。ベートーヴェンの作品132、131、130(と作品133)の弦楽四重奏曲には、別の4つの音からなる音型が使われ、作品全体をまとめています。作品132や133の冒頭の4つの音にはっきりと表れていますし、その反転形が作品131の冒頭の4つの音に使われています。作品131と130(作品133が含まれている場合)の独自性にフーガは欠かせませんし、作品132では音楽史のルーツをさらに遡り、「聖なる感謝の歌」(第3楽章)には教会旋法による讃美歌的な書き方が用いられています。ベートーヴェンは、最高の作品を以てバッハの対位法の技術に応えており、これらの作品の主題を統一することで、偉大なる音楽的建築家バッハへのオマージュとしているのです。ここで見られる作曲技法の精通度は、感情的表現の複雑さと力強さにのみ値するものです。第5夜の旅で聴かれる音楽に勝るものはないと言っても過言ではないでしょう。 【6月15日(土)19:00開演】
 
ボロメーオ・ストリング・クァルテット © Eli Akerstein          パソコンに映し出されるのはパート譜ではなくスコア
スコア(総譜)を見ながらの演奏 ~作曲家から演奏者へのアドバイス
スコアを読むのにコンピューターを使っているのは、私の師匠であり、偉大なヴァイオリニストで指揮者でも指導者でもあったシモン・ゴールドベルク先生の教えが発端です。彼が私たち学生によく言ったことが、全体の音楽―つまりスコア―を勉強するということでした。ベートーヴェンやバッハ、モーツァルトといった偉大な作曲家たちの場合、スコアというものは一人の熱心なアーティストからもう一人の熱心なアーティストへの語りかけであり、一人のヴィルトーゾからもう一人のヴィルトーゾへのアドバイス、音楽の内容に関する一人の情熱的な唱道者からもう一人の情熱的な唱道者へのアドバイスであるということに、私たち若い演奏家たちが気付くようにして下さいました。
音楽史上長い間、スコアから演奏することは不可能でしたが、コンピューターの登場により、スコアから演奏することができるようになっただけでなく、直筆譜を勉強したり演奏したりすることができるようになったのです。また、リハーサルや練習の最中に、作品のスケッチや、様々な出版社から出ている楽譜を即参照することもできるようです。ゴールドベルク先生がご存命中に、このようなシステムが使えるようにならなかったことが残念ですが、コンピューターの登場や、全員が常にスコアを見ながら演奏することにより、リハーサル自体が大きく変化しました。複雑な理論を一緒に編み出すことが楽にできるようになりましたし、4人がスコアを見ることにより、そうでなければ気が付かないような細部についてのディスカッションができるようになりました。また、各パートに書かれている指示は大抵異なっていて、その微妙な違いを用いて、パート間の絡み合いを作りこんでいるということが明らかになりました。残念ながら、こういう細かな違いは、演奏の一体感(それはそれで素晴らしいのですが)を追及する過程でしばしば削除されてしまうものなのです。

ご来場くださるみなさん、こうしてベートーヴェンの弦楽四重奏曲をすべてご一緒できると思うと、わくわくします。チェンバーミュージック・ガーデンにベートーヴェンの音楽を共に花咲かせましょう!
 
ベートーヴェン手稿譜の画像を見て演奏するメンバーもいます。手稿譜について、6月9日(日)公演終了後にトークあり。          パソコン上の譜めくりは、足元のペダルで行います
サントリーホールディングス株式会社は公益財団法人サントリー芸術財団のすべての活動を応援しています。