カミーユ・ペパン

アミアン(フランス)出身。同地の地方音楽院、パリ地方音楽院を経て、パリ国立高等音楽院でコネソン、ダルバヴィ、エスケシュらに師事。自然、絵画などをインスピレーションの源とする、色彩ゆたかで瑞々しい響きにあふれた作品を特徴とし、ドビュッシー、ラヴェル、デュティユーに代表されるフランス音楽の系譜に自身を位置づける。5楽器のための『ルナ』(2016)以降、ミニマル音楽を彷彿とさせる急速な同音反復を継続して採りいれるようになり、メゾ・ソプラノと室内楽のための『室内楽』(17)、チェロとクラリネットのための二重協奏曲『音の樹』(19)では色彩感を生みだす巧みな楽器法と潑剌としたリズムが組み合わされ、近作の管弦楽曲『天の川』(23)ではさらに深化された手法により、夢幻性をも醸し出す。2023年にはルノー・カプソンの独奏、シモーネ・ヤング指揮フランス国立管弦楽団によって『ヴァイオリン協奏曲』が初演、その後プロムスのザ・ラスト・ナイトで新作が初演され(25)、26年にはヨーヨー・マによって『水―物質』が初演されるなど、現代フランスを代表する作曲家のひとりとして国際的に活躍している。フランス芸術文化勲章シュヴァリエ(22)。

[平野貴俊]

池田亮司

岐阜県出身。東京でDJとして活動したあと、電子音楽作品、マルチメディア作品の創作を開始。ギャラリーや野外会場でのインスタレーション、ライヴハウスでのパフォーマンス、音楽アルバムの制作など多彩な場で活動を行う。延引やループを施された、研ぎ澄まされた音が聴き手の美意識に訴えかける数々のアルバムを発表、『test pattern』(2008)では切り詰められた素材の反復が緊張感と美を同居させ、『supercodex』(13)や『ultratronics』(22)では多彩な音素材が瞬間的に交替、反復する濃密な音世界を提示する。またコンピュータで処理された大量の数値データを活用したマルチメディア作品は、聴き手および観客のさまざまな感覚を動員させ、没入感を与える。2012年にはライヴ・ツアー「superposition」をポンピドゥー・センター(パリ)での公演を皮切りに、世界各地で行った。近年積極的に手がける器楽作品でも電子音楽的な質感を追求しており、ヨーロッパの現代音楽界でも注目される。アムステルダムでアンサンブル・モデルンによって『弦のための音楽』(24)が初演されたほか、25年にはフィルハーモニー・ド・パリで3日間におよぶ個展が開催された。芸術選奨文部科学大臣賞(20)。パリと京都を拠点とする。

[平野貴俊]

三善 晃

東京都出身。平井康三郎に作曲とヴァイオリンを師事。東京大学文学部仏文科在学中、日本音楽コンクール作曲部門第1位(1953)、『ピアノと管弦楽のための協奏交響曲』で尾高賞、文化庁芸術祭奨励賞を受賞(54)。パリ国立高等音楽院に留学しシャラン、ガロワ゠モンブランに師事(55~57)。『ピアノ・ソナタ』(58)などにとりわけデュティユーへの私淑が表れている。その後は、ときに鬼気迫るような緊張感をたたえつつも、人間の実存性への温かな眼差しの伏在する音楽を創作。『レクイエム』(72)、『詩篇』(79)、童声を効果的に用いた『響紋』(84)からなる反戦三部作、90年代後半以降の『焉歌・波摘み』(98)をはじめとする、熟練した書法による管弦楽曲で確固たる地位を確立。60年代から晩年に至るまで創作された多数の合唱曲は、国内のさまざまな合唱団に愛唱されており、ピアノ教則本『メソード』(97)および自身の名を冠したコンクールを通して、ピアノ教育界に与えた影響も大きい。オペラ『支倉常長〈遠い帆〉』により第31回サントリー音楽賞を受賞(2000)。桐朋学園大学学長(1974~95)、東京文化会館館長(96~2004)。日本芸術院会員(1999)、文化功労者(2011)。

[平野貴俊]

武満 徹

東京に生まれる。15歳ころに陸軍の宿舎でリュシエンヌ・ボワイエの『聞かせてよ愛の言葉を』を聴いて音楽に目ざめ、1948年から清瀬保二に作曲を師事。51年、瀧口修造、湯浅譲二らと芸術家団体「実験工房」を結成、劇音楽、放送用音楽、テープ音楽も発表する。たまたま耳にしたストラヴィンスキーが称賛した『弦楽のためのレクイエム』(57)、IMC(国際音楽評議会)国際現代作曲家会議でそれぞれ第5位、最優秀作品賞を受賞した『環礁』(62)、『テクスチュアズ』(64)、そしてニューヨーク・フィルハーモニック創立125周年を記念して委嘱された琵琶、尺八、オーケストラのための『ノヴェンバー・ステップス』(67)で国際的な評価を確立、日本の作曲家として未曾有の名声を獲得した。前衛的技法を独自に応用した60年代までの作品は、ときに峻厳に響くが、70年代後半以降のとりわけ水、夢、雨に着想を得た作品では、瑞々しく豊麗で耽美的な響きを追求。ポップで洒脱な「うた」のシリーズ、100以上の映画、放送用音楽の作曲、現代音楽祭「今日の音楽祭」の企画・構成(73~92)、サントリーホールの国際作曲委嘱シリーズの監修(86~98)を通して、日本の音楽文化に果たした貢献は多角的かつ厖大である。

[平野貴俊]

ショーン・シェパード

リノ(ネバダ州)出身。インディアナ大学でファゴットと作曲を学び、ジュリアード音楽院修士課程を経て、コーネル大学大学院博士課程でロバート・シエッラとスティーヴン・スタッキーに師事。2012年、ニューヨーク・フィルハーモニックのクラヴィス新進作曲家賞を受賞、その後アンサンブル・アンテルコンタンポランやWDR交響楽団により作品が初演されるなど、ヨーロッパでも知られるようになる。その音楽は饒舌さと生命力、都会的で洗練された感触を特徴とする。そうした美点を顕著に示すのが、各楽器群の音色を細やかに際立たせ、明快で立ち上がりのよい響きを作りだした小管弦楽のための『これらの特殊な事情』(09)と、色彩感のある和声も加えて、力動性と抒情性を両立させた管弦楽曲『表現抽象主義』(17)である。近年は内省的な雰囲気も採りいれて作風を多面化させており、23年、カーネギーホールにてケント・ナガノ指揮ハンブルク州立フィルハーモニー管弦楽団によって初演された独奏チェロと独唱、合唱を伴うオラトリオ『晴れた日に』はそうした傾向を表す一作である。同年、アメリカ芸術文学アカデミーのチャールズ・アイヴズ生活賞を受賞。2027年度武満徹作曲賞審査員。

[平野貴俊]

トーマス・アデス

ロンドン出身。ケンブリッジ大学で学ぶ(1989~92)。管弦楽曲『アサイラ』(97)でロイヤル・フィルハーモニー協会賞、2000年には史上最年少でグロマイヤー作曲賞を受賞するなど、短期間で国際的名声を確立。指揮者、ピアニストとしても活躍する。スキャンダラスな題材にもとづく室内オペラ『顔に白粉を』(1995)も成功し、その後創作された2つのオペラ『テンペスト』(2003)、『皆殺しの天使』(15~16)も再演が重ねられるなど、現代もっとも人気のあるオペラ作曲家のひとりでありながら、あらゆる形態の作品を発表している。ポピュラー音楽を含む多様なジャンル、時代の音楽を参照するその作品は、一作ごとに異なる様相をみせるが、室内アンサンブルのための『生きた玩具』(1993)などの初期作品にみられる皮肉っぽさや諧謔味は、後の『ピアノ協奏曲』(2018)やヴァイオリンと管弦楽のための『おとぎ話の踊り』(20)にも現れている。またシュルレアリスト的とも評される夢幻的な響きは、近年では管弦楽曲『ポラリス』(10)、『夜明け』(20)、ヴァイオリンと管弦楽のための『アリア(エア)』(21~22)において、線的で緻密なテクスチュアのなかで実現されている。

[平野貴俊]

指揮:沼尻竜典

神奈川フィル音楽監督、トウキョウ・ミタカ・フィル音楽監督。1990年ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝。国内外で数々のポストを歴任。ドイツではリューベック歌劇場音楽総監督を務め、オペラ公演、リューベック・フィルとのコンサートの双方において多くの名演を残した。ケルン、ミュンヘン、ベルリン、バーゼル、シドニーなどの歌劇場にも客演。16年間にわたって芸術監督を務めたびわ湖ホールでは、ワーグナーの主要オペラ10作品をすべて指揮した。2014年にはオペラ『竹取物語』を作曲・初演、国内外で再演されている。2017年紫綬褒章受章。

東京交響楽団

今年創立80周年を迎えた。文部大臣賞、サントリー音楽賞など、主要な音楽賞を受賞。サントリーホールとの共催による「こども定期演奏会」も注目されている。「サントリーホール サマーフェスティバル」には毎年出演し、高い評価を得ている。新国立劇場では毎年オペラ・バレエ公演を担当。ITへの取り組みでは、2020年に無観客配信した演奏会は約20万人が視聴、22年には45台のカメラを用いた「第九」公演の配信も注目を集めた。近年はジョナサン・ノットとともに高く評価された。26年4月よりロレンツォ・ヴィオッティが第4代音楽監督に就任。

ソプラノ:砂田愛梨

東京音楽大学卒業、同大学院修了。第4回ジュディッタ・パスタ国際オペラ歌唱コンクール第2位、第94回日本音楽コンクール第1位など受賞歴多数。イタリア・サッサリ市立歌劇場でデビュー後、イタリアの様々なプロダクションに出演を続ける。また日本では、日生劇場『連隊の娘』マリー、新国立劇場『ジャンニ・スキッキ』ラウレッタ、高崎芸術劇場『カルメン』フラスキータで出演したほか、コンサートソリストとして国内各地のオーケストラとも共演。今後は新国立劇場『ウェルテル』ソフィー、日生劇場『ドン・ジョヴァンニ』ドンナ・アンナなどで出演予定。ミラノ在住。

ピアノ:小林愛実

2021年10月、第18回ショパン国際ピアノコンクール第4位入賞。7歳でオーケストラと共演、9歳で国際デビューを果たす。ブリュッヘン指揮18世紀オーケストラ、ソヒエフ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団など多数のオーケストラと共演。10年に14歳でEMI ClassicsよりCDデビュー。24年11月にCD『シューベルト:4つの即興曲 作品142、ピアノ・ソナタ第19番 ハ短調、ロンド イ長調(連弾)他』をワーナークラシックスよりリリース。22年3月、第31回出光音楽賞受賞。

ヴァイオリン:成田達輝

2010年ロン゠ティボー国際コンクール第2位、12年エリザベート王妃国際音楽コンクール第2位。国内外の指揮者・オーケストラと多数共演し高い評価を得るとともに、リサイタルやジャンルにこだわらない様々なアーティストとの室内楽においても圧倒的なテクニックと多彩な表現力を披露している。現代作曲家とのコラボレーションも多く、22年9月には坂本龍一のプライベート録音に参加し『ソナタ』などを演奏。使用楽器は、A. ストラディヴァリ「Tartini」1711年製(宗次コレクションより貸与)。

ヴァイオリン:石上真由子

日本音楽コンクールなど、国内外で受賞多数。題名のない音楽会、クラシック音楽館などメディア出演多数。東響、都響、読響、日本フィル、ブラショフ国立響など内外で多数のオーケストラと共演。長岡京室内アンサンブル、アンサンブル九条山メンバー。ポラリス国際音楽祭アドバイザー。Ensemble Amoibe主宰。Music Dialogue、CHANEL室内楽、おんかつ支援アーティスト。京都市芸術新人賞、音楽クリティック・クラブ賞、大阪文化祭賞、青山音楽賞、藤堂音楽賞、京都府文化賞、京都府あけぼの賞受賞。日本コロムビア、ALTUS、キングレコード、ワオンレコードよりCD好評発売中。

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