ジェルジ・クルターグ

20世紀半ば以降のハンガリーを代表する作曲家、ピアニスト。ハンガリー人の両親のもとルーマニアのルゴジュに生まれ、1946年ブダペストに移りハンガリー国籍を取得。リスト音楽院(入学試験で出会ったリゲティとは終生友人であり続けた)でカドシャ、ヴェレシュ、ファルカシュらに師事。リスト音楽院のピアノ科、のち室内楽科教授(67~86)を務め、ピアニスト、教師としての名声を築いた。アンサンブル・アンテルコンタンポランが委嘱した『故R. V. トゥルソヴァ嬢のメッセージ』(76~80)が81年パリで初演されて以降、作曲家としての国際的評価を高めてゆく。近しい人びとへの数々のオマージュにあふれたピアノ小品集『遊び』(75~2010)、ソプラノとヴァイオリンのための『カフカ断章』(1985~87)などの作家・詩人を扱った作品群に、限られた手段を用いて深遠で凝縮された音世界を描きだすその流儀が表れている。93年故国を離れ、2002年にハンガリーとフランスの二重国籍を取得。ベケットの同名の戯曲にもとづく初のオペラ『エンドゲーム』(10~17)はスカラ座での初演後、各国で40回を超える再演を重ね、26年には2作目となるオペラ『ステヒャールディン』がブダペストで初演される予定。

[平野貴俊]

ハビエル・キスラント

ビルバオ出身。ピアニストの両親の間に生まれ、ピアノとサクソフォーンを学ぶ。カタルーニャ音楽大学でルイス・ナオン、アグスティ・チャルレスに作曲を師事したあと、グラーツ芸術大学大学院でベアート・フラーのもと作曲とミュージック・シアターの修士号を取得。2018年、室内オペラ『古代の眼差し』がグラーツ歌劇場で初演される。22年にはソフィア女王作曲賞を受賞し、受賞作である『海の波』がパブロ・エラス゠カサドの指揮で初演された。23年には、ローマのスペイン王立アカデミー滞在中に作曲され、クラングフォルム・ウィーンのメンバーによって初演された弦楽四重奏のためのサイクル『蛇行する時間』(19~21)の録音がKAIROSから発売されている。その音楽は映画と文学を主要な発想の源としており、たとえば『古代の眼差し』にはルイス・ブニュエルの映画『皆殺しの天使』に触発された箇所があるという。またアペルギスとの出会いを重要な経験として挙げる彼の作品には、『エコーする蛇行性』(2017)のように、音素を思わせる小さな音型の連なりがしばしば現れる。近作の『蛇行する時間』では、静と動の明瞭な交替のなかに滲み出る野性味が書法の深化を窺わせる。

[平野貴俊]

指揮:エミリオ・ポマリコ

パリ在住の指揮者、作曲家。世界各地の著名な音楽祭やホールに定期的に出演し、これまでに名だたるオーケストラを指揮。歴史的レパートリーのほか、現代音楽の解釈者としても重要な役割を果たす。新進作曲家の作品初演に注力するだけでなく、現代の偉大な作曲家たちとも深く永続的な絆を築き、ヴォルフガング・リームやルイジ・ノーノ、ジョルジュ・アペルギスなど多数の世界初演を指揮。オペラ上演にも深く関わり数々の新演出を指揮するほか、フィリップ・ブスマンズ、ブリス・ポゼ、ベルンハルト・ラングらのオペラを初演し好評を博す。

アコーディオン:テオドーロ・アンゼロッティ

現代の音楽界における重要人物で、アコーディオン・レパートリーの唯一無二の解釈者として広く評価されている。レパートリーは17〜21世紀におよび、約400曲を初演。これまでに数々のコンクールで優勝し、世界各地で名だたるオーケストラや指揮者と共演。ジョルジュ・アペルギス、ルチアーノ・ベリオ、細川俊夫、ルカ・フランチェスコーニ、イザベル・ムンドリー、ヴォルフガング・リーム、イェルク・ヴィドマンなど、現代の著名な作曲家の多くが彼のために作品を書いている。多数の録音は国際的な賞を受賞。フライブルク国立音楽大学教授。

東京交響楽団

1946年創立。文部大臣賞、サントリー音楽賞など、主要な音楽賞のほとんどを受賞。サントリーホールとの共催による「こども定期演奏会」も注目されており、「サントリーホール サマーフェスティバル」には毎年出演し、高い評価を得ている。新国立劇場では、オペラ・バレエ公演を担当。川崎市、新潟市とは提携し、コンサートやアウトリーチを展開している。音楽監督ジョナサン・ノットとともに日本のオーケストラ界を牽引し、音楽の友誌「コンサート・ベストテン」では2022年に『サロメ』が第2位、23年には『エレクトラ』が第1位に選出された。

ヴォーカル:ドナシエンヌ・ミシェル=ダンサク

ザルツブルク・モーツァルテウム大学、パリ国立高等音楽院卒業。レパートリーは、バロックから現代音楽まで幅広く、録音も多数。1991年にジョルジュ・アペルギスと出会って以降、彼の作品の初演や演奏に継続的に携わっている。現代アートの世界にも深く関わり、ヴィジュアル・アーティストやビデオ・アーティスト、作家とのコラボレーションやパフォーマンスを行うほか、映画女優やコメディアンとしても活躍中。6ヶ国語を操り、世界各地でマスタークラスを開催。フランス政府から芸術文化勲章シュヴァリエを授与されるなど、受賞歴多数。

打楽器:クリスティアン・ディアシュタイン

現代音楽界で特に注目される演奏家の一人。非ヨーロッパ音楽や即興演奏にも力を注いでいる。ヨーロッパ各地でリサイタルを開催し、著名な音楽祭やコンサートホールに出演。2010/11シーズンには、ヨーロッパ・コンサートホール協会の「ライジング・スター」に選出。多数の録音で受賞。ハンス・アブラハムセンやヘルムート・ラッヘンマンなど偉大な作曲家と定期的に共演。08〜22年のダルムシュタット国際現代音楽夏期講習で講師を務めるほか、世界各地でマスタークラスを開催。01年よりバーゼル音楽院教授、11年よりインパルス・アカデミー講師。

ヴァイオリン:尾池亜美

東京藝術大学卒業。ローザンヌ高等音楽院修士課程修了。日本音楽コンクール第1位、RNCMマンチェスター国際ヴァイオリンコンクール優勝、カール・フレッシュ国際ヴァイオリンコンクール第2位ほか、受賞歴多数。アジア、ヨーロッパでオーケストラやアンサンブルと共演し、リサイタルを開催。アミティ・カルテット、ゼフィルス・ピアノ五重奏団、Ensemble FOVE、紀尾井ホール室内管弦楽団メンバー。東京藝術大学講師、2021年バルトーク国際コンクールの弦楽四重奏部門審査員。

ヴァイオリン:牧野順也

インターナショナル・アンサンブル・モデルン・アカデミー、バーゼル音楽院演奏家課程および現代音楽課程修了。独奏者としてArmonia Ludus orchestra、ベネヴィッツ弦楽四重奏団などと共演、ガウデアムス国際音楽週間、パリ マニフェストをはじめとした欧州各国の現代音楽祭に出演する。2016年リゲティのヴァイオリン協奏曲をウクライナ初演。15年より演奏活動と並行して、コンサートプロジェクトマネージャーとしても活動。ウクライナ、三島市において音楽祭を主宰している。

ヴィオラ:東条 慧

パリ国立高等音楽院、ハンス・アイスラー音楽大学、ベルリン芸術大学を卒業。カラヤン・アカデミーとしてベルリン・フィルハーモニー管弦楽団をはじめ、客演首席としてパリ管弦楽団やバイエルン放送交響楽団などで演奏するほか、ラ・フォル・ジュルネ、マールボロ音楽祭など世界各地の音楽祭にも招待され幅広く活動している。ソリストとして兵庫芸術文化センター管弦楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、ブルーノート東京にて上原ひろみらと共演。東京オペラシティ リサイタルシリーズ「B→C」出演。現在トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団にて首席奏者を務める。

チェロ:山澤 慧

東京藝術大学、同大学院修了。2015年より、委嘱新作と20世紀以降に書かれたチェロ独奏曲を集めたリサイタル「マインドツリー」を毎年開催、同シリーズの一環として行ってきた「バッハ・ツィクルス」は25年に完結した。21年「邦人作曲家による作品集」シリーズ、23年にはピアノとのデュオによる古典シリーズを、それぞれ始動。25年には演奏活動10周年を迎え、あらためて古典作品にも向き合いながら、時代やジャンルを越えた音楽を探求している。藝大フィルハーモニア管弦楽団首席チェロ奏者、千葉交響楽団契約首席チェロ奏者。

ピアノ:大瀧拓哉

愛知県立芸術大学、シュトゥットガルト音楽演劇大学、インターナショナル・アンサンブル・モデルン・アカデミー、パリ国立高等音楽院で学ぶ。2016年オルレアン国際ピアノコンクール優勝。ヨーロッパ各地の音楽祭に出演し、ソロリサイタルや現代音楽のアンサンブルなどを行う。24年に『フレデリック・ジェフスキ:「不屈の民」変奏曲/ノース・アメリカン・バラード〈全6曲〉』をリリースし、レコード芸術誌で推薦盤に選ばれるなど、各誌で高い評価を得ている。現在東京を拠点に古典から現代音楽の初演まで幅広く演奏活動を行う。東京音楽大学非常勤講師。

クラリネット:田中香織

国立音楽大学、バーゼル音楽院音楽大学を卒業。第78回日本音楽コンクール第1位、第2回ジャック・ランスロ国際クラリネットコンクール第2位、第3回カール・ニールセン国際音楽コンクール特別審査員賞。ソリストとしてバーゼル響、バーゼル室内管、東響、東フィル、九響などと共演。スウェーデン室内管弦楽団契約首席奏者(2013/14)。元バーゼル音楽院音楽大学講師。23年MClassicsよりソロアルバム『Fantasie』をリリース。10 年にわたるヨーロッパでの活動を経て14年秋より拠点を日本へ移し、現在ソロ・室内楽・現代音楽の分野で活動中。国立音楽大学講師。

サクソフォーン:井上ハルカ

ESA音楽学院専門学校、リヨン地方音楽院、パリ国立高等音楽院を修了。数々の現代音楽コンクールで賞を受賞し、出演公演が令和4年度文化庁芸術祭賞大賞を受賞。インペトゥス・サクソフォン・アンサンブル、サクソフォンカルテット・アニマ、現代音楽ユニットDuo März各メンバー。Studio N.A.TよりCD『SONATE』、『Rachmaninov』(配信限定)、『trans-』(レコード芸術特選盤)発売中。ESA音楽学院専門学校、大阪府立夕陽丘高等学校音楽科非常勤講師。セルマー・パリ社公式アーティスト。

打楽器:會田瑞樹

1988年宮城県仙台市生まれ。2010年日本現代音楽協会主催の現代音楽演奏コンクール“競楽Ⅸ”第2位入賞と同時にデビュー。多数の新作初演を手がけ「初演魔」の異名をとる打楽器奏者。作曲家として第10回JFC作曲賞入選、リトアニア聖クリストファー国際作曲コンクールLMIC特別賞を2度にわたり受賞。24年第21回イタリア国際打楽器コンクールヴィブラフォンC部門最高位受賞。演奏、創作の両面からその音楽性を発揮し続けている。

打楽器:飯野智大

武蔵野音楽大学ヴィルトゥオーゾコースを修了後、バーゼル音楽院で修士課程パフォーマンス、ソリスト課程、現代音楽科ポストグラデュエートを最優秀成績で修了。2018年、マリンバ奏者として初のヤマハ音楽支援奨学金を受賞。これまでにダルムシュタット国際現代音楽夏期講習やオーストリアのImpuls Festivalなど、ヨーロッパを代表する音楽祭に招待され、注目を集めている。語りと楽器の革新を融合させたシアター音楽や鍵盤楽器の新たな表現を中心に、視覚・聴覚・言葉を取り入れた学際的なアプローチで、驚きと発見に満ちた音楽体験を創造し、また作曲家とのコラボレーションを通じて現代音楽の可能性を切り拓いている。バーゼル・シンフォニエッタやスイス・チェンバー・ソロイスツなどにも定期的に客演。

ソプラノ:薬師寺典子

東京藝術大学声楽科卒業後、ベルギーで学ぶ。ブリュッセル王立音楽院修士課程、ゲント王立音楽院上級修士課程現代音楽科修了。現代音楽アンサンブルIctusアカデミー修了。ヨーロッパでアルス・ムジカをはじめ数々の現代音楽祭に出演。近年では、サルヴァトーレ・シャリーノ作曲『一通の手紙と6つの唄』をシャリーノ招待演奏会で日本初演のほか、東京オペラシティ リサイタルシリーズ「B→C」(バッハからコンテンポラリーへ)に出演。能謡とメリスマをテーマにしたプログラムで好評を博した。

浅野千尋

東京音楽大学声楽演奏家コースを首席卒業後、ニューイングランド音楽院にて音声教育学修士課程とオペラ・グラデュエート・ディプロマを修了。米国を拠点にオペラ、現代即興など幅広く活動し、ポートランド・オペラ『Shizue: An American Story』世界初演で主演を務めるほか、ボストン・リリック・オペラなどと共演。メトロポリタン・オペラ・ラフォン・コンクールにて2024年アイオワ地区優勝、25年中西部地域第2位を獲得。26年春にはマールボロ音楽祭ツアーに参加予定。

小阪亜矢子

東京藝術大学声楽科卒業。仏ヴィル・ダヴレー音楽院声楽科およびお茶の水女子大学研究科修士課程(声楽)修了、同博士課程(音楽学)在学中。第35回フランス音楽コンクール第2位。フランス近現代音楽、古楽など幅広く演奏。「実験音楽とシアターのためのアンサンブル」で英独ツアー参加。「みのりて」メンバーとしてペガサス・コンサートVol. 5出演。CD歌詞・解説翻訳多数。コンセール・C会員。立正大学および日本社会事業大学非常勤講師。

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