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東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」 2019年シーズン
「音楽レシピ~音楽は何でできている?」 開催レポート

山田治生(音楽評論家)

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」の2019年度のテーマは、「音楽レシピ~音楽は何でできている?」。ハーモニー、メロディー、スタイル、リズムの4つの要素から、音楽をより深く楽しむプログラムが組まれた。開催日が前年までの土曜日から日曜日に変わって、こどもたちが来やすくなったのか、以前よりも客席が賑わっているように思われる。毎回、司会をテレビ朝日アナウンサー、坪井直樹が務めた。

  • 坪井直樹(司会)、こども作曲家、角田鋼亮(指揮)

    坪井直樹(司会)、こども作曲家、角田鋼亮(指揮)

  • 角田鋼亮(指揮)、千住真理子(ヴァイオリン)

    角田鋼亮(指揮)、千住真理子(ヴァイオリン)

第69回(4月14日)のテーマは「ハーモニー」。指揮の角田鋼亮は、ハーモニーの魅力を伝えるために、バロック音楽から始まり、古典派、ロマン派、フランス近代音楽に至るプログラムを組んだ。 コンサートのオープニングは、小学4年生の村瀬萬紀さんが作曲した『空中散歩~Les Petite Histoires』。和田薫によってオーケストラ用に編曲されたこのチャーミングな作品は、2019年のテーマ曲として、毎回、演奏会の最初に演奏されることになった。
そして、この季節にふさわしい、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲集『四季』より「春」第1楽章。千住真理子がヴァイオリン独奏を務めた。続いて、モーツァルトが8歳で書いた交響曲第1番の第1楽章が取り上げられた。同じ交響曲第1番でもブラームスは43歳のときに完成させた。第1楽章より抜粋を演奏。
演奏会の後半は、千住のヴァイオリン独奏で『タイスの瞑想曲』。続く、ドビュッシー(ビュセール編曲)の交響組曲『春』第2楽章では賑やかな春が描かれた。最後は、リムスキー=コルサコフの交響組曲『シェエラザード』より第1楽章「海とシンドバッドの船」。東京交響楽団のコンサートマスターのグレブ・ニキティンや首席チェロ奏者がソロを披露した。

第70回(7月7日)のテーマは「メロディー」。指揮の沼尻竜典は魅力的なメロディーの作品を選んだ。まず、ワーグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第1幕への前奏曲が堂々とスケール大きく演奏された。チャイコフスキー(グラズノフ編曲)『懐かしい土地の思い出』より「メロディー」では、東京交響楽団のコンサートマスター水谷晃が魅力的なヴァイオリン・ソロを奏でた。水谷は、高校2年生のときに起きた「911(アメリカでの同時多発テロ事件)」がきっかけで建築家になるのをやめてヴァイオリニストになる決意をした、と語りかけた。続いて、チャイコフスキーのバレエ音楽『白鳥の湖』から「情景」。オーボエの荒絵理子の音色に魅了される。
「メロディー」がテーマだけあって、オペラ歌手も登場。テノールの錦織健がオペラ『トゥーランドット』の「誰も寝てはならぬ」とカプアの「オー・ソレ・ミオ」を歌い、人の生の声の素晴らしさをこどもたちに伝える。池辺晋一郎の『黄金の日日』と武満徹の『波の盆』はテレビ・ドラマのために書かれた音楽。現代音楽の作曲家として知られる二人が親しみやすいメロディーも書いていたことに驚いたのは大人の聴衆だったに違いない。そして、最後は、シベリウスの交響詩『フィンランディア』。中間部はフィンランドの第2の国歌といわれる美しいメロディー。

  • 沼尻竜典(指揮)、水谷晃(ヴァイオリン)

    沼尻竜典(指揮)、水谷晃(ヴァイオリン)

  • 沼尻竜典(指揮)、錦織健(テノール)

    沼尻竜典(指揮)、錦織健(テノール)

  • こどもレセプショニストがお客様をお迎え(7月公演)

    こどもレセプショニストがお客様をお迎え(7月公演)

第71回(9月8日)は「スタイル」。2017年に出演したピアノの小山実稚恵が再び登場し、前年に引き続き、ピアノ協奏曲や“こどもピアニスト”との共演を披露した。まず、小山がソロでバッハの『平均律クラヴィーア曲集』第1巻第1番 前奏曲を極上の音で弾き始める。そして途中からオーケストラが加わり、グノーの「アヴェ・マリア」の旋律も奏でられる。サプライズなオープニングだった。続いて、下野竜也&東京交響楽団とともにベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」第1楽章を演奏。小山がたっぷりとピアノを鳴らし、一つの楽章だけでも十分に充実感があった。演奏会後半は、“こどもピアニスト”が登場。小学3年生の吉野由菜さんは小山との連弾でドビュッシーの『小組曲』より「メヌエット」を巧みに演奏。中学1年生の石井克樹さんは、小山とシューベルトの『3つの軍隊行進曲』より 第1番を弾き、ピアノを美しく鳴らす。最後は、ムソルグスキー(ラヴェル編曲)の『展覧会の絵』から、「バーバヤガーの小屋」と「キエフの大きな門」。バッハから始まり、ベートーヴェン、ムソルグスキー、ラヴェルへと「スタイル」の変遷を楽しんだ。

  • 下野竜也(指揮)、小山実稚恵(ピアノ)、吉野由菜(こどもピアニスト)

    下野竜也(指揮)、小山実稚恵(ピアノ)、吉野由菜(こどもピアニスト)

  • 楽器体験(9月公演)

    楽器体験(9月公演)

第72回(12月15日)は「リズム」。飯森範親&東京交響楽団によって、様々なリズムの作品が選ばれた。また、年4回のプログラムのなか、最終回は、恒例の“こども奏者”たちの参加もある。
最初にベルリオーズの『ラコッツィ行進曲』とスーザの『ワシントン・ポスト』のマーチが並ぶ。チャイコフスキーのバレエ音楽『くるみ割り人形』組曲から「ロシアの踊り(トレパーク)」のあと、首席チェロ奏者の伊藤文嗣が独奏を務めて、ピアソラ(三浦秀秋編曲)の『リベルタンゴ』。熱のこもったチェロのソロを聴くことができた。
ヨハン・シュトラウスⅡ世の『美しく青きドナウ』では、ヴァイオリン10名(小学2年生~中学3年生)、フルート1名(中学3年生)、クラリネット1名(小学5年生)の計12名のこども奏者が、ワルツの3拍子に挑戦。事前の東京交響楽団のメンバーによるレッスンの成果が表れ、ヴァイオリンのボウイングや弾き方の統一が素晴らしかった。最後はラヴェルの「ボレロ」。快適テンポで小太鼓のリズム。ラストで少しテンポアップして、劇的に終える。

  • 飯森範親(指揮)、伊藤文嗣(チェロ)

    飯森範親(指揮)、伊藤文嗣(チェロ)

  • 飯森範親(指揮)、こども奏者

    飯森範親(指揮)、こども奏者

2019年度は、4人の実力派指揮者が登場し、充実した演奏を味わうことができたとともに、東京交響楽団のトップ奏者たちの魅力的なソロも楽しむことができた。

*こども定期演奏会の動画はこちら こども定期演奏会ネット

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