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東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」
2018年シーズン 音楽と感情

「こども定期演奏会」は、日本で初めての子どものためのオーケストラ定期演奏会。2018年のテーマは「音楽と感情」。 東京交響楽団音楽監督のジョナサン・ノット氏をはじめ、毎回異なる指揮者とソリストが登場します。

※公演日をクリックしたページに公演詳細情報を掲載。年間会員券、1回券ともご購入いただけます。

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  • 【動画】4月指揮者:ジョナサン・ノット

  • 【動画】12月指揮者:飯森範親
    ※2018年シーズンについてお話いただきました。

  • 【動画】7月指揮者:沼尻竜典

  • 【動画】9月指揮者:原田慶太楼

4月21日(土) 第65回 「笑って (^o^)
ジョナサン・ノット(東京交響楽団 音楽監督)インタビュー

「こどもたちに劇場的な体験をしてほしい」

山田治生(音楽評論家)

  • ©K.Miura

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」に、ついに東京交響楽団音楽監督ジョナサン・ノットが登場する。“音楽監督”とは、そのオーケストラの音楽面の全責任を持ち、シンボルとなる指揮者のこと。1962年イギリス生まれのノットは、バンベルク交響楽団首席指揮者などを歴任し、2014年に東京交響楽団の第3代音楽監督に就任した。ウィーン・フィルやベルリン・フィルなどの世界最高峰の楽団にも客演し、現在はスイス・ロマンド管弦楽団の音楽監督も兼務している。
「こども定期演奏会」への出演は、ノットの以前からの希望だった。

「私は(音楽監督として)東京交響楽団の活動すべてに関わりたいと思っています。『こども定期演奏会』が成功していることは知っていましたし、どうにか関われないかと前々から話をしていました。
こどもたちには劇場的な体験をしてもらいたいと思っています。ありがちではない、チャレンジングな形で、彼らの知性や好奇心を刺激したい。彼らを少し大人扱いする方がいいかもしれませんね。音楽は抽象的ですが、自分なりの想像で自分なりの絵を描いてもらいたい。クラシック音楽は、言葉がないものがほとんどなので、想像しなければなりません。言葉のないストーリーを経験して、それに親しんでほしいと思います」

ノット自身は、音楽家の家庭に生まれたわけではない。子どもの頃に教会の合唱隊に入ったことが彼の人生を変えた
「私の家は音楽一家ではありませんでした。ただ、父がギターやピアノをちょっと弾いただけです。家族でドライブに出かけたときはクルマの中でいつもみんなで歌っていました。
私は5歳からピアノを始めたのですが、その時のことはあまり覚えていません。7歳から大聖堂での合唱隊に入り、厳しいトレーニングを受け、高いレベルの音楽作りをするようになりました。7歳から12、13歳までの毎日、学校に行く前と学校が終わってから、必ず合唱隊に行っていました。歌うことに集中した濃密な日々によって、私の音楽への愛情と人間としての基礎ができあがり、やがて音楽家になりたいと思うようになりました。楽器は一番小さなものか一番大きなものということで、ピッコロかコントラバスをやりたかったのですが、ピッコロがなかったのでフルートを吹くことになりました。今では大好きなコントラバスをやっておけばよかったと思います(笑)。
最近、父が子どもの頃に合唱隊に入っていたことを初めて知りました。父は音楽の力によって牧師になったのです。父も私も音楽が職業を決めるきっかけとなったということですね」

ノットは、現代の多くの人気指揮者たちがそうであるように、音楽大学で指揮法を学び、指揮コンクールで入賞して指揮者になったというわけではない。彼が指揮者になったのは偶然だった。しかしその歩みは歌劇場の叩き上げといえるもので、昔の指揮者は、皆、そのような道を通った。
「私はたまたま指揮者になりました。でも音楽がいつも近くにありました。始めは歌手になりたかったのですが、この声では・・・(笑)。その後、ロンドンの若手歌手のためのオペラ・スタジオでピアノ伴奏をしていました。そして、ドイツに渡り、オペラハウスでコレペティトゥア(練習ピアニスト兼コーチ)になって、そのうちに指揮者的なこともさせられるようになりました。つまり、リハーサルで指揮者がいないときに代わりを務めたり、本番でバンダ(オフ・ステージの器楽アンサンブル)を指揮したりです」
ノットは、フランクフルト歌劇場で巨匠ガリー・ベルティーニのアシスタントを務めたあと、ヘッセン州立歌劇場の指揮者陣に加わった。その後、バンベルク交響楽団の首席指揮者やパリのアンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督に就任し、世界的に活躍するようになる。
彼は自らの仕事についてこう語る。

「私にとって、音楽とは発見の経験です。スコア(楽譜)を見て、自分で謎を解いていく感じ。よく知っている曲のスコアを見ても、常に新しい発見があります」

  • ジョナサン・ノット指揮
    東京交響楽団定期演奏会(2017年12月)

4月のこども定期演奏会では、イタリアのロッシーニ(1792~1868)とオーストリアのシューベルト(1797~1828)の作品を取り上げる。
「今回、私が『こども定期演奏会』に参加するにあたって、4月に予定している(一般人向けの)演奏会のプログラムを見ていたら、これらの曲を子どもたちに聴かせてもよいのではないかと思いました」
まずはロッシーニの歌劇「絹のはしご」序曲
「『絹のはしご』はすごく面白い曲です。いきなり音が鳴り始めたと思ったらぱったりと止むオープニング。第1ヴァイオリンが難しいパッセージを弾き始め、続いてオーボエも難しいソロを吹きます。ロッシーニも楽しんで書いたのではないでしょうか。楽しいサプライズがたくさんあります。私はこの曲でコンサートを始められると思うとワクワクします」

  • ファゴット:福井蔵(東京交響楽団首席奏者)

次は、ロッシーニのファゴット協奏曲第1楽章。ファゴットが独奏楽器として扱われることは珍しく、協奏曲もモーツァルトのものくらいしか知られていない。
「ファゴットは面白い楽器ですね! 大きさも形も、舞台では芝居を見ているような劇場的な楽器です。今回取り上げる曲は、『ピーターと狼』のような定番ではなく、オペラの作曲家がこの楽器のために書いた稀な作品。普通ではないもの、予測できないものが、面白いのではないでしょうか。私が選曲するときは、人に考えさせるもの、不思議がらせるものにしたいと思っています」

そして、シューベルトの交響曲第6番第4楽章。シューベルトでは交響曲第7番「未完成」が有名だが、第6番は隠れた名曲といえるだろう。
「シューベルトは、ロッシーニと5歳ほどしか違いません。二人は同世代なのです。シューベルトの交響曲第6番の2年前に書かれたのがロッシーニの『セビリアの理髪師』であり、『セビリアの理髪師』はウィーンでも上演されていたので、シューベルトはそのオペラを見ていたに違いありません。また、シューベルトの交響曲第6番にはイタリア的な要素もあり、ロッシーニとの組み合わせがとても良い。ロッシーニはミスター・クレッシェンドと言われますが、私も彼のクレッシェンド(注:だんだん音を大きくすること)では興奮してしまいます。シューベルトの第6番の第4楽章では、だんだん速くなっていくところに注目していただきたい。本当に遊んでいるような音楽です」


ノットはこのプログラムをユーモラスで意外性があってカッコいいという。
「遊ぶこととは、楽しむことであると同時に、何かを学ぶこと、何かを得ることでもあります。本当の遊びには、刺激や新しい発見があります。こうなるだろうと思って、全然違うところへ行くこと――今回の演奏会は、ものすごく速い5分半の『絹のはしご』序曲で始まって、ユーモラスなロッシーニのファゴット協奏曲の第1楽章、そして真面目なシューベルトに行くのかなと思わせて、そうではない第6番の第4楽章に行きます。こういう作品を子どものためのコンサートで並べるって、私はカッコいいと思いますよ」

ノットは「こども定期演奏会」がサントリーホールでひらかれる意義についても語る。
「私は、サントリーホールでこのプログラムをすることを非常に楽しみにしています。サントリーホールのようなコンサートのためのホールに行くということは子どもたちにとっては、スタジアムや大聖堂に行くような非日常的な体験。良いホールで、良い音を聴くと、子どもたちの想像力が刺激を受けます。最終的には、このプログラムで、私が楽しむ →オーケストラも楽しいと思う →子どもたちも楽しくなる、ということになればよいと思います。千人の子どもたちの高いエネルギーが集まって何が起こるのか?凄いことが起こりそうですね。忘れ難い経験をしてもらいたいです」

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