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東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」
2016シーズン  15周年《音楽の情景》

2002年にスタートし、今年15周年を迎える「こども定期演奏会」。2016年は、「音楽の情景」と題して火・風・水・土にまつわる音楽を取り上げます。
指揮者は、秋山和慶、藤岡幸夫、現田茂夫、飯森範親の4名が登場。ソリストには佐藤友紀(トランペット)、松田華音(ピアノ)、千住真理子(ヴァイオリン)、佐藤優子(ソプラノ)を迎えます。司会の坪井直樹(TV朝日アナウンサー)がわかりやすく解説をお届けする、親子で楽しめるコンサートです。

2016年4月9日(土)
第57回「大地のリズム」
2016年7月9日(土)
第58回「風にそよぐメロディー」
2016年9月10日(土)
第59回「流れる水のスタイル」
2016年12月17日(土)
第60回「炎のハーモニー」

*演奏曲目の試聴 【ナクソス・ミュージック・ライブラリー】  
   各公演名をクリックすると表示されるページにて、ご案内しています。

*チケット(年間会員券および1回券)は、上記ページよりご購入いただけます。

指揮者インタビュー

4月9日(土) 「大地のリズム」
指揮・秋山和慶インタビュー

「サントリーホールで、非日常の贅沢を楽しんでほしい」

山田治生(音楽評論家)

秋山和慶さんは、約40年間にわたり東京交響楽団の音楽監督を務め、同団を日本を代表するオーケストラの一つに育て上げた。
現在は桂冠指揮者を務めている。まさに東響の“顔”ともいえる存在。
そんな秋山さんが「こども定期演奏会」に初登場する。

*4月9日(土)公演情報詳細、チケット購入、演奏曲目試聴はこちら

今回は「大地のリズム」というタイトルですが、秋山さんは鉄道ファンとして知られ、最初に、E.シュトラウスポルカ「テープは切られた」J.シュトラウス2世ポルカ「観光列車」ロンビ「コペンハーゲンの蒸気機関車のギャロップ」など、鉄道をテーマとした作品を取り上げられますね。

今回はリズムを主題としています。楽団の方から、私が鉄道マニアだから、2拍子の曲がいいのではとすすめられました。それでこういう曲を並べました。心臓の鼓動と2拍子はリズムの根源になっています。
「テープは切られた」は、新線開通のテープカットで、シュッシュッポッポ始まったという描写の曲ですね。「観光列車」は、文字通り風光明媚な地域を回る列車。19世紀後半の様子を曲にしています。途中で汽笛の音が入ります。「コペンハーゲンの蒸気機関車のギャロップ」は、蒸気機関車が停まっていてシューっという音から、出発してシュッシュッポッポッポッポとアッチェレランド(加速)していくみたいな、汽車が走っていく様子を描写的に描いた作品です。
ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」第4楽章の冒頭は、汽車の描写といわれていますね。それが本当かどうかはわかりませんが。ただし、ドヴォルザークは大の鉄道マニアで、本当に蒸気機関車が好きで、当時、一日一本通る国際列車を毎日、作曲を中断してでも駅に見に行って、機関車のナンバーをノートに記録していました。ある日、どうしても用事で行けないときに、娘婿のヨゼフ・スーク(作曲家)に代わりに行かせました。鉄道にとくに興味のなかったスークは駅に行かず適当な数字を書いて、ドヴォルザークに渡しました。ドヴォルザークはそれを見てそんなナンバーあるわけないだろうと激怒したという話が残っています。「新世界」第4楽章は、楽曲としては、構成も、オーケストレーションも、テンポの緩急のバランスもよく出来ていますね。「運命」と並んで世界中で愛され、聴かれるわけです。

「アフィニス夏の音楽祭2015広島 コンサート電車出発進行!」広島電鉄車内で開催

「エンター・ザ・ミュージック」収録風景(2014年9月)

蒸気機関車に乗る秋山氏
広島県世羅郡「せらワイナリー」芝生広場

そのほかには、久石譲さんの「天空のラピュタ」からトランペット協奏曲チャイコフスキー「スラブ行進曲」を演奏されますね。

佐藤友紀

久石さんの「天空のラピュタ」は、リズム的な面白さとスタジオ・ジブリで子どもたちに人気があるということで選びました。ブラスバンドなどでラッパを吹きたいという子どもたちが多いですから、ソリスト(東京交響楽団首席奏者・佐藤友紀さん)をフィーチャーしました。
「スラブ行進曲」は2拍子の行進曲。ダイナミックで締め括りに良いと思いました。それから、新しい今年のテーマ曲もお披露目します。

先ほど、鉄道マニアとおっしゃられましたが、いつから鉄道がお好きなのですか?

幼稚園は目白の自由学園の幼児生活団に通っていました。音楽教育にも熱心で、幼稚園でピアノやヴァイオリンのお稽古もありました。その頃、家が洗足にありましたので、洗足から目黒まで目蒲線に乗り、目黒から目白まで山手線に乗って、毎日通っていました。小中学校は青山学院で、やはり目蒲線と山手線でした。当時は、お客が窓ガラスを破って入るほどの混雑でした。小学校2,3年生になると、一人で行くようになりましたが、超満員電車は危なく、運転手が見るに見かねて鉄パイプで柵をした運転台のスペースに入れてくれたのです。何人かの運転手とも顔なじみになり、帰りの電車は空いているものですから、電車の運転の仕方を教えてくれて、「やってみろ」と言われたり。今では考えられないことですが(笑)。小学生の高学年の頃になると模型の電車を作るようになりました。そして今の今までそうなのです。有名なオリエント急行にも乗りました。

鉄道好きの少年がどういうきっかけで指揮者を目指すことになったのですか?

藤岡幸夫指揮 関西フィルハーモニー管弦楽団と、北村陽の初共演(2013年8月)

 

幼稚園のときのピアノの先生が優しくてみんなの憧れで、一生懸命ピアノを練習しようと思いました。そして卒業式で「おもちゃの交響曲」を指揮することになりました。これっぽっちも指揮をするとは思っていなかったのですが、それが初めての指揮でした。小中学校の頃は、ピアノは情操教育といいますか、趣味としてやっていました。怖がりで、夜に応接間で一人でさらうのが嫌いで、よくさぼっていました。
ところが、中学2年生の頃、ピアノ教師をしていた母の教え子であった岩崎洸さん(チェロ)、岩崎淑さん(ピアノ)が近所の遊び仲間で、既に桐朋学園に入っていた淑さんから、桐朋学園に子どものオーケストラがあるから聴きにおいでといわれました。たまたま、私の家では、日比谷公会堂の東京交響楽団の定期演奏会によく行っていました。当時、東響の指揮者だった上田仁、齋藤秀雄、森正は、私の憧れの人たちでした。桐朋学園のオーケストラは、齋藤秀雄先生とまだ学生だった小澤征爾さんが指揮をしていましたが、その緻密なアンサンブルにびっくり仰天しました。その立派な演奏を聴いて、ピアノが無理ならラッパでも打楽器でもいいから桐朋学園に入りたいと思い始めました。岩崎さんに楽屋に連れて行ってもらいました。そこで、小澤さんが齋藤先生に「こいつ中学2年だけど、指揮者になりたいんだって」と勝手に告げられてしまったのです。

そして齋藤秀雄先生のもとで勉強されるようになったわけですね。

高校にはまだ指揮科がなく、ピアノ科に入りました。でも指揮のレッスンはすぐに始まりました。指揮者になるのは遥か彼方の夢。大学を卒業する頃は、齋藤先生の助手をして、後輩の指導などをしていました。

そのあと、東京交響楽団の指揮者になられたのですね。

ところが卒業後の5月頃、東京交響楽団の故橋本楽団長から直接電話があり、「TBSのラジオ放送用の録音でうちのオーケストラを指揮してみませんか」といわれました。夢みたいな話でした。何回か録音があり、「みんなも気に入ったようなので、うちの指揮者にならないか」といわれました。子どものときから愛着のあった東京交響楽団です。齋藤先生も喜んでくださいました。
演奏会は少しずつ増えていきましたが、東響の指揮者になった半年後の3月に、東響は経営破たんのために突然解散してしまいました。4月に自主運営のオーケストラとして再スタートし、指揮者は、上田先生が責任をとって辞められたので、僕一人となりました。オーケストラは他に指揮者を雇うことができず、「全部お前がやれ」といわれました。23歳でした。そしてこの1~2年で、ほとんどのメジャーな交響曲を指揮することができました。僕はほとんど無給の状態でした。想像を絶する状況でしたが、皆、明るかったですよ。

 秋山和慶指揮 東京交響楽団

「エンター・ザ・ミュージック」収録風景(2014年9月)

以来、40年間、東京交響楽団を率いてこられました。今回、東京交響楽団のこども定期には初めて出演されるのですね。

子どもたちに、生の演奏がテレビやラジオとはどう違うか聴いてほしいと思います。サントリーホールという素敵な場所で、素晴らしい音楽を体験してほしいですね。学校公演では寒い体育館の床に座ったりしますが、そうではなく、ある意味、贅沢を楽しんでください。気持ちを豊かにして、将来、音楽が人生の楽しみの一部になってもらえればいいと思います。僕は小さい時の月に1度の日比谷公会堂での非日常の興奮を思い出します。

子どものオーケストラの指導も熱心にされていますね。とくに心がけてられることは何ですか?

嫌々やっているのではなく、好きだからやっている子どもたちの目は輝いています。私の要求はプロのオーケストラのときと同じです。それが徐々にできてくるんですよ。
滋賀県栗東のオーケストラ(注:さきらジュニアオーケストラ)からは、東京芸大、桐朋学園大学、東京音大、京都芸大に入る子も出てきています。第1回目の演奏会ではベートーヴェンの交響曲第3番を演奏しました。大変難しい曲で時間がかかりましたが本当に立派な「エロイカ」を演奏してくれました。演奏が終わって、感極まって、私も涙でボロボロになりました。
僕は絶対に怒らないことにしています。齋藤先生は怒りん坊でしたが、先生は、危篤の際に、小澤さん、山本直純さん、飯守泰次郎さん、そして僕の前で、「自分は引き出しが少なく、相手が納得してすぐに上手になれる方法を教えることができず、すぐに怒ってしまった。君たちは、自分の引き出しを増やして、絶対、怒るなよ」と説教されました。僕は肝に銘じました。先生の遺言です。

指揮者を目指す子どもたちにひとことお願いいたします。また、最後に若い演奏家たちにメッセージを。

指揮者になるには、何か一つ楽器をある程度人様にお聴かせして恥ずかしくないくらいにマスターしておいた方がいいと思います。それから耳の訓練が必要です。譜面が違っているときに直すのも指揮者の仕事ですから。
ジャズやポピュラーや歌謡曲にも調性はあります。モーツァルトやハイドンのような古典派の音楽は調性がしっかりとしていて、曲の形として起承転結もはっきりとしています。ロマン派になるとうれしいやかなしいなど人間的な感情の汲み取れる音楽になります。オーケストラの演奏会ではそういう曲がしょっちゅう演奏されているので、それらを聴いて、学んでいくようにしてほしいですね。

これまでの公演より

「エンター・ザ・ミュージック」収録風景(2014年9月)

司会:坪井直樹(TV朝日アナウンサー)

7月9日(土) 「風にそよぐメロディー」
指揮・藤岡幸夫インタビュー

「美しい自然の光景を描いた音楽を楽しんでほしい」

山田治生(音楽評論家)

©Megu

昨年4月、「こども定期演奏会」に華やかにデビューした藤岡幸夫さんが再び登場。
美しいメロディーの作品を並べた今回のプログラムの聴きどころや、シベリウスの魅力について聞いた。

*7月9日(土)公演情報詳細、チケット購入、演奏曲目試聴はこちら

昨年の4月に引き続いての「こども定期演奏会」への出演ですが、まずは前回のご感想からうかがいたいと思います。

素晴らしい企画で、品格も高く、感銘を受けました。こういう内容のコンサートなら、こどもたちも影響を受けるはずです。

昨年の「こども定期演奏会」でハイドンのチェロ協奏曲を弾いた小学生のチェリスト、北村陽くんとは、その後も共演を続けられていますね。

北村陽くんは僕だけでなく、オギュースタン・デュメイ(筆者注:フランスの名指揮者兼ヴァイオリニスト)とも共演する予定です。彼は、最近、1668年製の“カッシーニ”というフル・サイズの楽器に替えたのです(筆者注:それまでは4分の3の楽器を使用)。とても大きな楽器に持ち替えて1ヶ月くらいですが、3月にハイドンのチェロ協奏曲第1番全曲を共演しましたよ。彼にはすごい才能があり、日本の財産になる子だから、いろいろな指揮者やオーケストラと共演してもらいたいと思っています。

2015年4月「こども定期演奏会」 指揮:藤岡幸夫 チェロ:北村陽  東京交響楽団

今回のテーマは「風にそよぐメロディー」ですね。プログラムについてお話ししていただけますか?

「鳥は静かに・・・」は、吉松隆さんの最高傑作の一つだと思います。鳥が悲しく鳴いているところや羽ばたいているところをイメージしやすい曲です。吉松さんはシベリウスの影響を受けていて、「トゥオネラの白鳥」みたいなところもあります。いま最も再演される邦人作品の一つだと思います。僕も今年になってから札幌交響楽団や静岡交響楽団でも演奏しました。弦楽器だけによる美しい名曲。和太鼓が鳴ったりするのではなく、日本人にもこういう美しい曲を書くクラシックの作曲家がいることをこどもたちに知ってほしい。

藤岡さんは、吉松さんの作品をたくさん初演され、また吉松さん自身とも親交がおありですね。

吉松さんは情熱的でとても優しい人。吉松さんの仲の良かった妹さんが若くして天国に行く直前に『もし生まれ変われるなら、鳥になりたい』と言ったのです。だから吉松さんの作品には鳥に関する作品が多い。

そのあとは、ラフマニノフ、ハチャトゥリアン、とロシア音楽が続きます。

ラフマニノフ「鐘」は懐かしい曲です。渡邉暁雄先生の弟子になったときに、毎日先生の家に行っては、この「鐘」とベートーヴェンのピアノ・ソナタばかり弾かされました。そして「鐘」をオーケストラ曲に見立てて、『ここは何の楽器で演奏する?』というような、勉強の仕方をしていました。

松田華音

松田華音

今回こども定期に出演する松田華音さんはすごくおとなしいのですが、音楽はすごいパワーを持っている。彼女は6歳からロシアに行っているんです。『趣味は?』ときくと『本を読むこと』。『何読んでいるの?』。『古い小説です。トルストイとか』。『ロシア語で?』。『もちろんです』って(笑)。ラフマニノフピアノ協奏曲第2番の冒頭も鐘の音です。鐘が鳴って、ネヴァ川の広大な流れが押し寄せてくる。
ハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」のワルツは、浅田真央さんがフィギュアスケートで使っていた曲です。メロディーがグロテスクで野生的なところもあります。

最後は、フィンランドを代表する作曲家、シベリウスですね。

シベリウスの「交響曲第5番」は僕の最も愛するシンフォニーです。この曲はまさに自然ですよね。山がそびえ立っているし、風が吹き荒れる。それから、シベリウス自身がかつて見た人生最高の光景と語った、16羽の白鳥が空中を旋回して、太陽の光に照らされて、銀色のリボンのようになり、白鳥たちがものすごく高貴な姿で飛んでいったというのが、音楽で描かれていますから、それをイメージしてもらえたらうれしい。そういうところを演奏の前に実際に音を出して説明できればいいなと思っています。

藤岡さんはシベリウスの第5番を最も愛するシンフォニーと言われましたが、その理由を教えていただけますか?

美しいからでしょうね。シベリウスの音楽って、ウソや芝居がありません。恨み辛みもない。優しい。交響曲第4番を書いていたころは、ノドに腫瘍ができて、死ぬかも知れないという恐怖と闘っていました。結局、それは完治して、自分も生きられると第5番を書きました。第一次世界大戦後に現在演奏されている改訂版を書いたのですが、その間、祖国フィンランドはロシアからの独立を果たしました。それで、病気は治ったし、ロシアからも独立したし、ということで、第5番は生きる喜びに満ち溢れています。生きられてよかった、自然ってなんて美しいんだろうという、神や自然に対する感謝の気持ちが深く描かれています。シベリウスの音楽には、人間の負の部分が一切ありません。シベリウスを尊敬するヴォーン・ウィリアムズの音楽にもありません。シベリウスやヴォーン・ウィリアムズは、自分のことよりも、自然や音楽を愛しているような感じがします。だから僕はヴォーン・ウィリアムズも大好きなのです。

藤岡さんがナビゲーターを務められているテレビ番組の「エンター・ザ・ミュージック」では、藤岡さんとサキソフォンの須川展也さんがアマチュアや学校の吹奏楽団を訪問するシリーズが好評を博していますね。

須川さんも僕もどちらかというと、機械的に正確に合わせることよりも、楽しく演奏する方が大切だと思っています。どんな金賞をとるような学校の吹奏楽部でも、僕が感じるには、みんな楽器を“吹いて”いるんだよね。歌わないといけない。須川さんとは20年共演していますが、彼の素晴らしいところは、彼が楽器を“吹いて”いると思ったことは一度もないこと。彼は常に歌っているんだよね。番組では、そういう須川さんの凄さも伝わればと思っています。

藤岡さんのこれからの予定を教えてください。

(首席指揮者を務めている)関西フィルとたくさん演奏会があります。年間に約45公演。来年、定期演奏会でヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番を取り上げます。東京都交響楽団の調布シリーズではベートーヴェンの「田園」を振ります。あと、東京佼成ウインドオーケストラの定期演奏会にも出ます。来年は、ダブリンのオーケストラ(RTE国立交響楽団)でマーラーの交響曲第5番を振ります。

今回共演する東京交響楽団については?

とてもフレキシブルで、品格もあって、素晴らしい。デビューしたての頃に共演したことがあって、昨年のこども定期演奏会は久々でしたが、楽しかったですよ。こども定期演奏会は、聴衆も素晴らしく、15年も続いて本当に立派です。

最後にこども定期演奏会のお客様にメッセージを。

素晴らしいメロディーにあふれた作品を集めました。お子さんだけでなく、お父さん、お母さん、おじいさん、おばあさん、みんなに『クラシックって良いよね!』と思ってもらえるようなコンサートにしたいと思っています。吉松隆、ハチャトゥリアン、シベリウスなど、あまり知られていないけれど素晴らしい作曲家を知ってもらう良いチャンスでもあります。

「こども定期演奏会」2016年4月9日

「こども定期演奏会」2015年4月11日

司会:坪井直樹(TV朝日アナウンサー)、指揮:藤岡幸夫

指揮:秋山和慶 トランペット:佐藤友紀  東京交響楽団

9月10日(土) 「流れる水のスタイル」
指揮・現田茂夫インタビュー

「音楽がいつも流れ、時間が流れていくことを聴衆のみなさんと体感したい」

山田治生(音楽評論家)

©三浦興一

「こども定期演奏会」2016年度3回目は、現田茂夫さんの指揮で、ソリストに千住真理子(ヴァイオリン)さんを迎えて行われる。
 「こども定期」初登場の現田さんに、演奏会の聴きどころや子どもの頃の話、指揮者になった道のりなどをきいた。

*9月10日(土)公演情報詳細、チケット購入、演奏曲目試聴はこちら


今回のコンサートは「流れる水のスタイル」というタイトルですね。

今回は海や川で水に親しんだ夏休み明けのコンサート。その水が流れるというのは、人生や時も音楽もそうですが、人間にとって大事な要素。人類は水なしでは生きていけません。文明は川のほとりに生まれました。まさに川は恵みです。しかし、氾濫して怖いこともあります。治水などの知恵が必要です。水と共生していく。我々人間は水や空気を守っていかなければなりません。
ドイツ語の好きな言葉に『フリーセント fließend(流れる)』というのがあります。音楽がいつも流れ、時間が流れていくことを聴衆のみなさんと体感したいですね。

まずは、ヨハン・シュトラウス2世の「美しく青きドナウ」ですね。

流れる水といえば、川。川を題材とした一番有名な曲は「美しく青きドナウ」ですね。そして、ドナウ河の近くを流れる「モルダウ」。地元チェコではヴルタヴァ河といいます。『ドナウ河のさざなみ』は、子どもの頃にオーケストラで演奏したことがありますが、大人になって指揮するのは初めてかもしれません。
私は文化庁在外派遣でウィーンで勉強し、そのあとも数年ウィーンに住んでいました。ドナウ河は、川べりに行って日光浴をしたり、ピクニックに行ったり、四季を通じて美しい。ちょうどその頃には結婚していたので、家内(筆者注:ソプラノ歌手の佐藤しのぶさん)も来ていて、懐かしく思い出します。

スメタナの「モルダウ」も取り上げられます。

オーストリアの隣の国のチェコにもよく行きました。モルダウ河のほとりには、素晴らしいドヴォルザーク・ホールがあり、川を挟んで、大統領府もあります。そしてカレル橋がかかっています。スメタナが書いた「モルダウ」では、ちょろちょろとした流れが雄大になっていきます。踊りがあったり、月の光が描かれたり。そして激流があって、大きくなっていきます。素晴らしい作品です。

千住真理子さんとの共演では、ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番第3楽章とマスネの「タイスの瞑想曲」を取り上げます。

千住真理子
©Kiyotaka Saito(SCOPE)

千住真理子さんのリクエストです。
「タイスの瞑想曲」は、ほとんどのヴァイオリニストの弾く有名な曲。何でもない分散和音に水の光を感じます。『流れる水のスタイル』にぴったりの作品です。
ブルッフヴァイオリン協奏曲は炎のような作品ですが、流れる音楽でもあります。

ブルッフは、ライン川のほとり(ケルン)の生まれなのですね。
ところで、現田さんは、子ども時代、どのように音楽に接しておられましたか?

我々の時代によくあったように、音楽は親にピアノに通わされて始めました。小学校は千葉県の船橋市でしたが、たまたまそこにオーケストラがあったのです。4年生以上で部員は100人弱いました。当時その小学校には、教育音楽界では著名な、今は千葉県少年少女オーケストラの音楽監督を務めておられる佐治薫子先生がいらして、オーケストラの指揮をされていました。私は小学校4年生のときに入部して、チェロを弾くようになりました。曲は、コンクールに出せる、『フィンランディア』、『エグモント』序曲、『運命の力』序曲などでした。小学校4年生でオーケストラに接することができて、幸運でした。6年生のときに、その合奏クラブの部長になって、先生の代わりに指揮することもありました。それが初めての指揮でした。
小学校卒業後、中学校でもみんなで音楽を続けたくて、弦楽合奏のオーケストラを作りました。一年先輩に(指揮者の)田久保裕一さんもいました。私は中学2年生のときに指揮をやりだしました。TBSのこども音楽コンクールやNHKのコンクールにも出て、文部大臣賞をもらいました。
高校にあがると、そのオーケストラのOBが中心となってアマチュア・オーケストラを作ろうということになり、ウィンドミール・オーケストラを結成しました。ずっとまわり続ける『風車』という意味です。そのオーケストラでも、チェロを弾いて、指揮をするようになりました。

そして音楽の道に進もうと思われたのですね。

新星日本交響楽団を指揮する現田茂夫
(1996年、サントリーホール)

もともと音楽の道に進む気はなかったのですが、高校3年生のとき、将来を考えると、音楽という選択肢もあるかなと思いました。幸い子どもの頃からピアノも習っていたので。TBSのこども音楽コンクールの審査員に来られていた東京藝術大学の金子登先生に指揮の手解きを受けました。
2年浪人して東京音楽大学に入り、3年間いました。同級生には広上淳一がいました。そして23歳で東京藝術大学に入り、オペラに造詣の深い佐藤功太郎先生に師事し、かばん持ちからオペラの副指揮までしました。その後、佐藤先生の推薦で、東京二期会の『ヘンゼルとグレーテル』の長野公演のオーケストラ・ピットで指揮をして、そのときのオーケストラであった新星日本交響楽団(今は合併して東京フィルとなりましたが)と波長が合い、新星日響の指揮者にしていただきました。

子どもの頃からオーケストラに接するというのは、ご自身で体験されたことなのですね。

ジュニアオーケストラを指揮する佐治薫子
(1992年、サントリーホール)

9歳の頃からオーケストラの音が自然にまわりにありましたね。今の子どもたちにもそういう環境を作ってやりたいなと思います。身近にあれば、そういうものを自分でやるようになると思うのです。
佐治先生は、定年までに赴任したすべての学校でオーケストラを指導して、すべてをコンクールで日本一にしています。子どもはみんな同じなんですね。指導者さえよければ、どこの学校の子どもたちでも優秀な演奏ができるということです。子どもは教えればみんなうまくなる、というのが私の根本にあります。だから一人でも多くの子どもたちにそういう素晴らしい環境を与えるような音楽家になりたいと思いました。
昔は、アマチュア・オーケストラや子どものオーケストラをよく振っていましたが、私は、プロのオーケストラと接する時も、アマチュアの子どものオーケストラと接する時も、変わりません。私も子どもの頃からアマチュアすなわち愛好家として音楽が好きで、音楽に取り組んできたわけで、それがたまたま職業になったからプロと呼ばれているだけです。私は音楽を職業としているプロではありますが、音楽を愛好している意味ではアマチュアでもあります。

子ども向けのコンサートで心がけていることはありますか?

子どもでも大人でも関係なく、私がおいしいよと思うものをみなさんにお聴かせしたい。子どもたちは好きなことには熱中しますが、そうでないものにはすぐに飽きてしまいます。そういう意味では厳しい聴衆です。ですから子どもたちが虜になるような演奏をしなければなりません。

共演は東京交響楽団です。

お付き合いは長いですね。毎年、第九を共演したり。家内のデビューが『メリー・ウィドウ』で、そのときのオーケストラが東京交響楽団でした。そのあとの『椿姫』のときも東京交響楽団で、僕は副指揮者をしていました。ですから個人的にも育てていただいたオーケストラといえます。年に数回ですが、お互いに歩みを認め合ってきた関係だと思います。

サントリーホールについて、また、お客様へのメッセージをお願いします。

新星日本交響楽団がサントリーホールで定期演奏会をやっていましたから、長いですよね。都内のホールで演奏して一番気持ちが良いのはサントリーホールですね。
サントリーホールのような素晴らしい環境で東京交響楽団のような一流の音を子どもたちに聴かせるのは大事なことです。演奏する我々も手を抜けないし、普段以上に真摯に音楽に向き合いたいと思います。

「こども定期演奏会」2016年7月9日

指揮:藤岡幸夫 ピアノ:松田華音 東京交響楽団 司会:坪井直樹(テレビ朝日アナウンサー)  

12月17日(土) 第60回「炎のハーモニー」
指揮・飯森範親インタビュー

「オーケストラのさまざまな楽器の素晴らしさを聴いてほしい」

山田治生(音楽評論家)

飯森範親さんの「こども定期演奏会」への登場は、一昨年、昨年に続いて3度目。東京交響楽団正指揮者、山形交響楽団音楽監督、日本センチュリー交響楽団首席指揮者などを兼務し、超多忙な飯森さんに、東京交響楽団定期演奏会の翌日、話をきいた。

*12月17日(土)公演情報詳細、チケット購入、演奏曲目試聴はこちら

今回は「炎のハーモニー」というタイトルなのですね。

炎にはいろいろな意味があります。心の中の怒りの炎というのもあるし、『火の鳥』のような正義の象徴としての炎もあります。

そのストラヴィンスキーの『火の鳥』(抜粋)を演奏されます。

火の鳥は、平和の象徴です。愛と友情を持ち、争いを好まない炎。『火の鳥』は、大学4年生のとき東京国際指揮者コンクールの本選で指揮をして、30歳のときモスクワ放送交響楽団と全曲をCD録音するなど、自分にとって、節目節目で演奏してきた重要な作品です。母校(高校)の吹奏楽部で、自分で編曲した吹奏楽版を指揮したこともあります。
この作品の大きな魅力は、楽器の扱い方が見事に天才的なこと。いくつかの版がありますが、今回演奏する1919年版は、まったく無駄のない作品に仕上がっていて、必要な音をこの楽器しかないという楽器で奏でている。そしてこれだけのドラマを色彩豊かに描いています。

初めてオーケストラを聴く人にも、さまざまな楽器の使い方の素晴らしさを聴いてほしいということですね。

化け物の叫びのようなトロンボーン、耳をつんざく悲鳴のようなトランペットのミュートの音、心臓の鼓動を示すティンパニ、さまざまな描写が見事にいろいろな楽器で演奏されるので、コンサートではその話にも触れたいですね。とにかく、フィナーレの遠くから聞こえてくるホルンの美しいソロは是非聴いてもらいたいなと思います。

ファリャの『恋は魔術師』からは「火祭りの踊り」です。

『恋は魔術師』は、昨年、いずみシンフォニエッタで全曲を演奏したばかりです。「火祭りの踊り」は、ろうそくの灯された暗い部屋で、女性がたいまつのようなものを持って踊っている雰囲気です。

モーツァルトのオペラ『魔笛』から夜の女王のアリアは、怒りの炎ですね。

佐藤優子

オペラ『魔笛』から「夜の女王のアリア」は、ザラストロへの、パミーナへの、今の自分の立場への、夜の女王の複雑な思いがアリアに込められています。歌っていただく佐藤優子さんはサントリーホール オペラ・アカデミーの出身です。自分の意に反することへの怒りが短いアリアに凝縮されています。そして、それが交響曲第40番にうまくつながります。

モーツァルトの「交響曲第40番」はどのような炎なのでしょうか?

交響曲第40番は、モーツァルトのたった2曲しかない短調の交響曲の一つです。大ト短調交響曲といわれます。ウィーンでモーツァルトの人気に翳りの見えた時期の作品であり、彼の心の中の葛藤や、見返してやるという怒りの炎が感じられます。

どうして、よく知られている第1楽章ではなく、第4楽章を演奏されるのですか?

第4楽章は当時の前衛のような音楽です。デモーニッシュ(悪魔に取りつかれたよう)で常軌を逸しています。常に心は安定せず、突然、大きな音で爆発して火がつきます。それが第1楽章よりもはっきりと表現されています。『なぜ自分が理解されないのか』という葛藤が怒りの火として表されています。炎というタイトルはついていませんが、そういうファクター(要素)があり、それを演奏で出したいと思っています。今だって、学校や友だちに理解されないというジレンマをかかえるこどもたちがいっぱいいるわけですよ。そういう思いと重ねてもいいです。
この10年、僕は、モーツァルトやハイドンなど古典派の音楽をかなり演奏してきました。山形交響楽団では、モーツァルトの作品を100曲以上取り上げて、アマデウスとは相当友だちになりましたよ(笑)。こどもたちにも古典派の音楽をきちっと聴いてもらいたいと思い、18世紀の作品のなかで炎というテーマを考えた時、この2曲が思い浮かびました。

『くるみ割り人形』の「花のワルツ」はこども奏者との共演ですね。

『くるみ割り人形』はクリスマスの頃、ろうそくの灯りで見える幻想的な世界というイメージ。初演が、この「こども定期演奏会」の公演日とほとんど同じ(1892年)12月18日なのです。ロシア音楽は、比較的、こどもでも演奏しやすいと思います。リズミックなところ、メロディックなライン、それらの対比を、プロのオーケストラの人がどう身体で感じているのか、そばで体感してほしいです。

こども奏者のオーディションの審査をされたとききました。審査のポイントは?

こども奏者(2015年11月)

オーディションには、小学校2年生から中学2,3年生までの、64人が来てくれました。欠席者はゼロ。そして、ヴァイオリン、チェロ、フルート、トランペット、トロンボーンの17人が合格しました。
演奏にちゃんと主張が感じられるかどうか。やりたいことに技術が伴うか。そのバランスを考えながら選ばせていただきました。ソリストになりたいと思っている人も、こういうチャンスにプロの演奏家がやっていることを学んで、良い影響をうけてほしいと思います。

東京交響楽団については?

ミューザ川崎シンフォニーホールで練習できるようになったことが、オーケストラのひとり一人の音楽家としての向上に歴然と寄与しています。練習環境は、オーケストラのモチベーションをあげるために一番大事なのですね。東京交響楽団には1994年から関わって、22年になりますが、ミューザ川崎に移ってから、すごく進歩したと思います。東京交響楽団は、名実ともに、今、日本で一番乗っている楽団じゃないですか。

最後にこどもたちにメッセージを。

こども定期演奏会では、皆に聴いてほしい曲を常に取り上げています。年間4回を通して聴くことで、東京交響楽団やサントリーホールの思いも感じてもらえると思うので、是非、通して聴いてもらいたいですね。

「こども定期演奏会」2016年9月10日

「こども定期演奏会」2015年4月11日

指揮:現田茂夫  ヴァイオリン:千住眞理子  東京交響楽団  司会:坪井直樹(テレビ朝日アナウンサー)

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