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こども定期演奏会の愉しみ方

2015年公演の聴きどころ~2014年公演レポート

山田治生(音楽評論家)

第49回 下野竜也(指揮) 坪井直樹(司会)

第49回 坪井直樹(司会)と下野竜也(指揮)

2002年に日本で初めての子どものためのオーケストラ定期演奏会として始まった「こども定期演奏会」。
2013年まで大友直人が指揮とお話を担ってきたが、2014年からはスタイルを変え、コンサートごとに違う指揮者が登場し、司会をテレビ朝日アナウンサー・坪井直樹が務めるようになった。

2015年は、14年のスタイルを継続・発展させ、「オーケストラ・タイムマシーン」をテーマに、バロックから古典派、ロマン派、そして近現代と、過去から現在に至る音楽を時代ごとに楽しむ。

藤岡幸夫(指揮)

藤岡幸夫(指揮)

4月は、「ずっと昔・・・」というタイトルで、クラシック音楽のベースといえるバロックと古典派の音楽を聴く。関西フィル首席指揮者の藤岡幸夫が、バロックを代表するバッハとヴィヴァルディ、古典派を代表するベートーヴェン、モーツァルト、ハイドンの名曲を振る。チェロ北村陽くんはまだ小学4年生だが、まさに神童というべき名手。関西では有名な彼がハイドンチェロ協奏曲を弾いてサントリーホール・デビューを飾る。ベートーヴェン交響曲第6番「田園」ヴィヴァルディヴァイオリン協奏曲集「四季」から「」とでは、自然が音楽でどのように表現されているのか聴き比べたい。

垣内悠希(指揮)

垣内悠希(指揮)

7月は「ちょっとロマンティック」というタイトルで、メロディが美しいシューベルトメンデルスゾーンなどの初期ロマン派の音楽を聴く。指揮の垣内悠希は2011年のブザンソン国際指揮者コンクールで優勝した新進気鋭のマエストロ。ウィーンで長く研鑽を積んでいただけに、シューベルトなどは得意とするところ。ハンガリーで育った金子三勇士がハンガリー出身のリストピアノ協奏曲第1番の第2,3楽章を弾くのにも期待!

岩村力(指揮)

岩村力(指揮)

9月は「もっとロマンティック!」というタイトルで、ロマン派音楽の中心というべき、ワーグナー、ドヴォルザーク、チャイコフスキーの名曲を楽しむ。兵庫芸術文化センター管弦楽団のレジデント・コンダクターを務める岩村力は、子どものためのコンサートでの経験も豊富で、楽しいコンサートにしてくれるに違いない。稀代のメロディ・メーカーであるドヴォルザーク交響曲第8番から第2楽章とオペラ界の革命児ワーグナーオペラさまよえるオランダ人序曲は本当に楽しみ。また、チャイコフスキー国際音楽コンクール優勝者の神尾真由子が十八番のチャイコフスキーヴァイオリン協奏曲から第1楽章を披露する。神童を経て、日本を代表する名手となった神尾の演奏には誰もが注目だ。

飯森範親(指揮)

飯森範親(指揮)

11月は「私たちの時代」ということで、20世紀から今世紀にかけての作品を楽しむ。指揮には、2014年に続いて飯森範親が登場する。現代の音楽といっても難しいものばかりではない。むしろ現代の人々のために今の時代に書かれた作品は、古典派やロマン派の音楽よりも親しみやすいかもしれない。「春の祭典」は今から約100年前に書かれた20世紀の古典。吉松隆カバレフスキーの作品でのマリンバ奏者の三村奈々恵のソロも聴きもの。ハチャトゥリアンの「ガイーヌ」から有名な「剣の舞」と「レズギンカ」では「こども奏者」の出演もある。

  • 北村陽(チェロ)北村陽(チェロ)
  • 金子三勇士(ピアノ)金子三勇士(ピアノ)
  • 神尾真由子(ヴァイオリン)神尾真由子
    (ヴァイオリン)
  • 三村奈々恵(マリンバ・木琴)三村奈々恵
    (マリンバ・木琴)


2014年を振り返ると「オーケストラで世界旅行」をテーマに、音楽でウィーン、日本、イタリア、ロシアを巡った。計4回の演奏会は、今最も注目される若手指揮者三ツ橋敬子から日本現役最長老指揮者外山雄三まで、あるいはピアノの仲道郁代やシロフォンの通崎睦美らそれぞれの楽器の第一人者など、登場する出演者の多彩さが印象に残った。

また、子どもたちにも耳馴染みのある、ベートーヴェン交響曲第7番から第1楽章、伊福部昭の「SF交響ファンタジー第1番」から ゴジラのテーマ、ヴェルディオペラ『アイーダ』から「凱旋の行進」、チャイコフスキー祝典序曲「1812年」だけでなく、黛敏郎の「シロフォン小協奏曲」やカリンニコフ交響曲第2番から第4楽章など、通常の定期演奏会でも滅多に取り上げられない珍しい曲を生演奏で聴くことができたのは、大人にとっても貴重なひとときとなった。

第49回 下野竜也(指揮) 仲道郁代(ピアノ)

第49回 下野竜也(指揮) 仲道郁代(ピアノ)

第50回 外山雄三(指揮) 通崎睦美(シロフォン)

第50回 外山雄三(指揮) 通崎睦美(シロフォン)

第49回音楽の都ウィーン」の下野竜也は、まず、難解とされるウェーベルンの「管弦楽のための6つの小品」から3曲を取り上げ、大人の聴衆をも驚かせたが、ウェーベルンをモーツァルトやベートーヴェンの名曲と並べることによって、子どもたちもウィーンの歴史の深さを実感しただろう。

第50回日本の作曲家たち」では、伊福部昭、芥川也寸志、黛敏郎、外山雄三、久石譲の作品が取り上げられた。作曲者自身の指揮となった外山雄三ヴァイオリン協奏曲から第1楽章(独奏:大谷康子)にみんな興味津々。久石譲の「オリエンタル・ウィンド」はお茶のCMで耳にしたことのあるものだった。

第51回オペラって面白い」は、『愛の妙薬』『ラ・ボエーム』などイタリア・オペラの名曲を楽しんだ。イタリア語での歌唱は子供たちにはちょっと難しかったかもしれないが、人間の生の声の素晴らしさは伝わった。

第52回華麗なるロシア音楽」では、こども奏者(10人)も参加し、飯森範親の指揮のもと、チャイコフスキーオペラ『エウゲニ・オネーギン』から「ポロネーズ」が演奏された。こども奏者たちは飯森の速めのテンポに乗って颯爽と演奏。これを聴いて、楽器をやりたくなった子どもたちもいるはず。祝典序曲「1812年」では、ロシア軍とフランス軍のそれぞれのテーマが解説され、それらが実際の演奏で交わった。

第50回 外山雄三(指揮) 大谷康子(ヴァイオリン)

第50回 外山雄三(指揮) 大谷康子(ヴァイオリン)

第51回 三ツ橋敬子(指揮) 馬原裕子(ソプラノ) 東響コーラス

第51回 三ツ橋敬子(指揮) 馬原裕子(ソプラノ)
東響コーラス

子どもたちがクラシック音楽を聴く上で最も大切なことは、その音楽を好きになることに違いない。「こども定期演奏会」はそのための数多くの出会いを用意している。様々な作曲家、作品、指揮者、独奏者、オーケストラの奏者たち、聴きに来たお友だち、などなど。なかでも名曲との出会いは大事だ。クラシック音楽とは、つまるところ、長い時間(時代)によって淘汰され、生き残った名曲の数々のことなのだから。

2015年の「こども定期演奏会」では、バロックから現代にかけての名曲が目の前で演奏される。しかも、オーケストラは日本を代表する楽団の一つである東京交響楽団。サントリーホールというクラシック専用の音楽ホールで聴くことも、子どもたちにとっては特別な体験となるであろう。

第50回 外山雄三(指揮) 東京交響楽団

第50回 外山雄三(指揮) 東京交響楽団

第51回 こども奏者 飯森範親(指揮) 東京交響楽団

第51回 こども奏者 飯森範親(指揮) 東京交響楽団

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