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東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」
2015シーズン《オーケストラ・タイムマシーン》

「こども定期演奏会」は、日本で初めての子どものためのオーケストラ定期演奏会。2002年にスタートして14年目となる2015年は<オーケストラ・タイムマシーン>と題し、クラシック音楽とその歴史をご紹介します。「バロックと古典」「ロマン派前期/後期」「近代~コンテンポラリー」と4つの時代に分けて、4人の指揮者、藤岡幸夫、垣内悠希、岩村力、飯森範親が登場。毎回異なるソリストを迎え、坪井直樹(TV朝日アナウンサー)の司会でお届けします。

2015年4月11日(土)
第53回「ずっと昔…」バロックと古典
2015年7月4日(土)
第54回「ちょっとロマンティック」ロマン派前期
2015年9月26日(土)
第55回「もっとロマンティック!」ロマン派後期
2015年11月14日(土)
第56回「私たちの時代」近代~コンテンポラリー

*演奏曲目の試聴 【ナクソス・ミュージック・ライブラリー】
  各公演名をクリックすると表示されるページにて、ご案内しています。
*チケット(1回券)は、上記ページよりご購入いただけます。

司会・坪井直樹さんに訊くPDFファイル(1.6MB)  サントリーホールの情報誌「Enjoy! Suntory Hall」Vol.9より

こども定期演奏会ネット  演奏会情報、楽器紹介など  http://www.codomoteiki.net/

2015年公演の愉しみ方

指揮者インタビュー

4月11日『ずっと昔・・・』バロックと古典
指揮・藤岡幸夫インタビュー

「ホールに行って音を楽しんでほしい」

山田治生(音楽評論家)

関西フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者の藤岡幸夫さんは、年間40回以上、関西フィルと共演し、子どものための演奏会も手掛けている。また、昨年10月から始まったテレビ番組「エンター・ザ・ミュージック」※ では、関西フィルを指揮するほか、番組ナビゲーターも務め、好評を博している。そんな多方面に活躍する藤岡さんが「こども定期演奏会」にデビューする。
※BSジャパンにて毎週火曜日、23時~23時30分放送
http://www.bs-j.co.jp/enterthemusic/

子ども向けの演奏会を指揮するときに心掛けていることは何でしょうか?

「子どもは正直だから、相当気合を入れて、本気でやらないとそっぽを向いてしまう。子ども相手だからこそ、マジで、真剣にやらないといけない。でも、子どもを教育するというのは大キライ。教育的なのは嫌なんです。面白いよと情報を提供して、良い演奏をして、感じてもらうしかない。クラシック音楽を聴くのに知識はいらない、ホールに行って音を楽しめば良い、僕らは良い演奏をすれば良い、と思います。子どもたちが本当に楽しんでくれているときは、僕もすごく楽しい」

藤岡さんは子どもの頃からクラシック音楽がお好きだったのですか?
指揮者を志したきっかけは何でしょうか?

「子どもの頃からレコードで親しんでいましたね。うちは妹が二人いて、就寝が早く、7時だった。親が、オペラを聴かせておけば寝るだろうと、毎晩『椿姫』のハイライトのレコードをかけていました。それでどうしても全曲が聴きたくなって、お小遣いを貯めてトスカニーニの全曲盤を買ったんです。まだトスカニーニの名前も知らなかったんだけど。そしたらそれが火の玉のようなすっげえ演奏で、『何でこんなに違うの?』と親にきいたら、指揮者が違うからと教えられ、それで僕は指揮者になりたいと思ったのです。そのあと、トスカニーニのLPを集めて聴いていましたね。それで小学校4,5年生の頃に両親と三人で初めてオペラを観に行きました。イタリア歌劇団の『椿姫』でした。前奏曲で体が震えましたね。

中学1年生のとき、おふくろが目白の東京カテドラルでの小澤征爾さんが指揮する新日本フィルの『第九』のチケットをクリスマス・プレゼントに買ってくれたのです。後ろの席は自由席だったので、席を取るために昼間から並んでいたら、おふくろのいとこがそこの神父さまをしていて、中でやっているリハーサルを見せてくれたの。オーケストラの楽員が私服でやっているリハーサルを見るのは初めてでした。小澤さんが現れ、初めて見る小澤さんが指揮台の上で振ったり指示を出しているのを見て、それまで寒くて冷えていた体中が燃え上がるように熱くなって、鳥肌がたった。そのとき、何が何でも指揮者になってやる!と思ったよ。今でも、僕にとっての一番大切なクリスマス・プレゼントはそのときの鳥肌なんです。小澤さんと会って話したのはそのとき、小澤さんのパリ管との『悲愴』のレコードを持って行って、『サインしてください』と言った一回だけ。小澤さんは誰でも読めるように『小澤征爾』とサインして、それがカッコよくて。僕もサインは読めるように書いています(笑)。僕は、何度も小澤さんのコンサートに行っているけど、デビューしてからも小澤さんとは接点がない。ずっと自分のなかでその当時のままの小澤征爾を保っておきたいというか、永遠の憧れというか・・・」

指揮者になりたいと思っている子どもたちにメッセージはありますか?

「大切なのは、人一倍強く指揮者になりたいという気持ちを持ち続けられるかです。今活躍している指揮者は、自分を疑わない、思い込みの強いヤツばかりです。自分は指揮者になれるのだろうかと思うヤツはなれない」

今回の「こども定期演奏会」の聴きどころを教えてください。

「自然をテーマに選びました。『運命』はロックみたいだけど、『田園』はハッピーで楽しい。民衆の踊りがあり、嵐があり、祈りや喜びもある。目の前に情景を浮かべやすいしね。僕の大好きなシベリウスもヴォーン・ウィリアムズも自然を愛して、自然を描こうとしました(注:ヴォーン・ウィリアムズの交響曲第3番も『田園交響曲』と呼ばれ、藤岡さんは11月に東京シティ・フィルの定期演奏会で、二つの『田園交響曲』を指揮する)。ベートーヴェンは自然が大好きで、彼は自然から受けた個人的な感情を表現した。ベートーヴェンは一人の素晴らしい女性に出会い、この曲を書いた。誰でも恋をすると普段見ている景色が色鮮やかに見えるでしょう。僕はそういう曲だと思っていますよ。

ヴィヴァルディという作曲家は本当に凄い。『四季』は、当時の過激な音楽でした。歌心があり、鳥の声も立体的に響いて、見事な曲です。小さい編成でこれだけの自然を表現しているのも凄い。

藤岡幸夫指揮 関西フィルハーモニー管弦楽団と、北村陽の初共演(2013年8月)

藤岡幸夫指揮
関西フィルハーモニー管弦楽団と、
北村陽の初共演(2013年8月)

また、今回は、チェロの北村陽君を是非聴いていただきたいと思っています。まだ小学校4年生で、フルサイズの楽器ではないですが、演奏が凄い。びっくりですよ。彼はとても楽しそうに演奏しますが、目をつむって聴いていると、子どもが弾いているようには聴こえない。はじめ『魔法使いの弟子』を聴いて、ファゴットをやりたくなったが、まだ小さくてできず、コントラバスをやりたいと思ったが、結局、チェロを始めた。ハイドンのチェロ協奏曲は、楽しい歌が詰まった作品です。モーツァルトやハイドンなど古典派の音楽で子どもたちの心をつかむの難しい。僕にとっても挑戦です。
とにかくサントリーホールでオーケストラを聴くのは素晴らしい体験です。4回のコンサート、それぞれキャラクターが違うので、1回1回、楽しめると思うよ」

藤岡幸夫公式ファンサイト http://www.fujioka-sachio.com/



北村 陽(チェロ)

【メッセージ】 4月の演奏会に向けて

ハイドンのチェロ協奏曲第1番は、弾けば弾くほど面白くなってくる大好きな曲です。今回演奏するカデンツァ*は、ベルリン・フィルの首席奏者だったヴォルフガング・ベッチャー先生が作曲されたもので、とってもかっこいいです! 2013年には、ベッチャー先生にカデンツァもレッスンしていただきました。
「こども定期演奏会」では、ぼくの思いをホールいっぱいに響かせて、聴きに来てくださった人たちと心がつながりたいです。

*カデンツァは、独奏楽器がオーケストラ伴奏なしで自由に即興的な演奏をする部分。実際には、楽譜に残されたいくつかの名演から選んで演奏することが多い。

「エンター・ザ・ミュージック」収録風景(2014年9月)

「エンター・ザ・ミュージック」収録風景(2014年9月)

 

藤岡幸夫(指揮)と北村陽(チェロ)

藤岡幸夫(指揮)と北村陽(チェロ)

ヴォルフガング・ベッチャーのハイドン・レッスン

ヴォルフガング・ベッチャーのハイドン・レッスン

2004年兵庫県西宮市生まれ。大阪国際音楽コンクール、熊楠の里音楽コンクール、全日本芸術コンクール全国大会、泉の森ジュニアチェロコンクールで優勝。佐渡裕とスーパーキッズ・オーケストラに最年少(小2)で入団し、東日本大震災の被災地など全国各地で公演を行い、「題名のない音楽会」に出演。14年、初リサイタルを行う。BSジャパン「エンター・ザ・ミュージック」に出演。「音楽の友」で紹介される。これまでに、関西フィルハーモニー管弦楽団、伊丹シティフィルハーモニー管弦楽団と共演。故ギア・ケオシヴィリ、太田真実、山崎伸子各氏に師事。
※インタビューはこちら http://www.cello.gr.jp/cellists/513/ 【日本チェロ協会のサイトへ】

7月4日(土) 『ちょっとロマンティック』ロマン派前期
指揮・垣内悠希インタビュー

「演奏会では、耳を澄ませることを知ってほしい」

山田治生(音楽評論家)

垣内悠希さんは、最も期待されている若手日本人指揮者の一人。1978年、東京に生まれ、2001年、東京藝術大学楽理科を卒業。2009年にはウィーン国立音楽大学指揮科を首席で卒業した。そして、2011年のブザンソン国際指揮者コンクールで第1位を獲得。小澤征爾をはじめとする著名指揮者を輩出してきた伝統あるコンクールでの優勝によって世界的な注目を集めた。
東京交響楽団とは、2012年10月、サントリーホールの「オープニング・ガラ」でヴェルディの「運命の力」序曲を振って以来、何度も共演を重ねている。ウィーン在住。
7月のこども定期演奏会では「ロマン派前期」を取り上げる。バロック、古典派に続くロマン派の時代を切り拓いたシューベルトらの作品は垣内さんの最も得意とするところである。

左から 垣内悠希、大友直人(東京交響楽団 客演名誉指揮者)

左から 垣内悠希、大友直人(東京交響楽団 客演名誉指揮者)

サントリーホール フェスティバル オープニング・ガラ「響」2012(指揮:垣内悠希)

サントリーホール フェスティバル オープニング・ガラ「響」2012(指揮:垣内悠希、管弦楽:東京交響楽団)

今回のこども定期演奏会では、ウェーバー、リスト、メンデルスゾーン、シューベルトの作品を取り上げられますね。

「古典派からロマンティックが始まる一番面白い時代だと思います。本当のロマン派に入っていく、僕の好きな時代です」

まずはウェーバーのオペラ「魔弾の射手」序曲。

「向こう(ウィーン)でオペラの勉強をしましたが、ドイツ・オペラにおいて『魔弾の射手』は、ロマン派オペラの幕開けを告げる金字塔のような特別な作品です。これがなければ、ワーグナーやシュトラウスのオペラはなかった」

次はメンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」です。

「メンデルスゾーンはバッハを再発見した人ですが、彼は、(バッハの得意とした対位法的な)構造の中でどうロマン的な表現を作るのかを考えていました」

メンデルスゾーンは、バロック的な構造をリスペクトしながら、ロマンティックな音楽を書いていた、ということですね。序曲「フィンガルの洞窟」はかなり描写的ですね?

「いかに具体的に音楽を書いていても、作曲家が、ここがこういう場面という風に聴いてもらいたくて書いているとは僕は思わないんですよ。メンデルスゾーンも、そこで受けたショックや感動を伝えたくて書いている。ですからこの曲でも、波かどうかよりも、ざわつきが伝わってほしい。音楽は感情とどうリンクするかが大切です。できるだけニュートラルで聴いた方がいいと思います」

リストのピアノ協奏曲第1番では金子三勇士さんと共演されますね。

「金子さんとはチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番で共演していて、今回が2度目になります。音楽に真摯な方で、好印象を持ちました」

最後はシューベルトの交響曲第7番『未完成』第1楽章を取り上げられますね。ウィーン在住の垣内さんにとって、ウィーンの作曲家シューベルトとは?

「シューベルトは一番尊敬している作曲家です。最近になってシューベルトの偉大さがますます分かってきました。もちろん、ベートーヴェンはすごいです。既成のものを壊し、新しいものに挑戦するエネルギーと強さを持っていました。でも、ベートーヴェンのすごさは言葉で説明できます。一方、シューベルトの才能は、自然にわきでる泉のようなもので、自然にわきでてきた音楽の美しさを言葉で説明することはできません。だから余計にすごいと僕は思います。そしてその自然さをそのまま再現するのが(演奏家にとっては)難しい。『未完成』には晩年のシューベルトの難しさがあって、山登りだとしてもどこに頂点があるのかわかりにくく、長く続く音楽のなかで、緊張感を持ちながら自然な形でもっていけるか、調性の変化の面白さをいかに作為的にせず作るか、苦労します」

「エンター・ザ・ミュージック」収録風景(2014年9月)

 

指揮者になろうと思われたきっかけは何ですか?

「義太夫や文楽の研究者である父(京都教育大学教授・垣内幸夫氏)が、もともと作曲をやっていて指揮者にすごく憧れていたらしく、小学生の頃から、父からいろいろな指揮者の話を聞かされていたのが大きかったですね。 中学生のとき、吹奏楽部でトロンボーンを吹いていて、そのときに指導されていた先生との出会いもありました。トロンボーンは3本でハーモニーを作る楽器で、3人でいかにハモるか、真ん中の3度の音をちょっと低くするときれいにハモるとかそういうことをすごく熱心に指導してくださいました。そして、そういう努力をすると音楽がより面白く、深くなるということを身をもって示してくださった方でした。そういうことが僕にもできればいいなと思いました。
中学3年生のときに指揮のレッスンを受け始めていましたが、大学は楽理科に進みました。でもそれも指揮者になる目的があってでした。指揮者にはいつかなれればいいと思っていました。その後、佐藤功太郎先生と知り合って、大学3年生のときから卒業まで個人的に指揮を見てもらっていました。
指揮者は一人ひとり在り方が違うので、今でもどういう指揮者になりたいかを探しながらやっているところがあります」

垣内さんにとって指揮者って何なのでしょうか?

「即物的には、それぞれ思いを持って弾いているプレーヤーたちを何とか一つにして、それを少しでも上にあがれるよう、目標を掲げてそれに向かわせるリーダー的な存在といえますが、ここまで指揮者をやってこられた原動力というのは、本当に感動させてもらったいくつかの演奏会であり、そういう体験をしてもらえる音楽家になりたいという思いです」

その強く影響を受けられた演奏会というのは、たとえば何ですか?

「カルロス・クライバーですね。クライバー指揮の『ばらの騎士』(1994年ウィーン国立歌劇場日本公演・東京文化会館)です。16歳のとき、生まれて初めて生で聴いたオペラでしたが、まったく飽きることなく、楽しくて楽しくて、あっという間に終わったんですよ。僕は、クライバーそのものにはなれませんが、そういうことができる指揮者になりたいなと思います」

子ども(少年)の頃に聴いた演奏会で特に印象に残っているものは何ですか?

「15、6歳の頃、父の仕事の関係で、海外にいたのですが、ロンドンでのシェーンベルクの『月に憑かれたピエロ』は、誰の演奏だったかは忘れましたが、初めて聴いて、ものすごくショックを受けました。と同時に、自分に近い音楽だとも思いました。ベートーヴェンは昔話のような美しさだと思っていましたが、『月に憑かれたピエロ』は自分の感覚に近いと感じました。それをきっかけに何度もこの曲を聴いて、その複雑な響きを美しいと感じるようになりました」

こども定期演奏会に向けてメッセージをお願いします。

「ウィーンに暮らしていて、鳥の声が聞こえたとき、一番音楽を感じます。ベートーヴェンの『田園交響曲』で聞こえてくるまんまの鳴き声が聞こえてくるのです。静けさの中で耳を澄ませるというのはとても能動的な行為です。演奏会では耳を澄ませることを知ってもらえたらいいな。耳を澄ませることだけをやってもらえればいいと思います。
プラハのチェコ・フィルの演奏会でインバル先生の指揮するマーラーの交響曲第6番を聴いた時、先生が中学生くらいの生徒10人ほどを引率して連れてきていました。すごいなと思いました。チェコ・フィルのおじさんたちがウーンと言って汗かきながら必死の形相で弾いているのを見たら、その体験は絶対に残るだろうなと思いました。“素晴らしかった”でなくてもいい、“よく分からなかった”でもいい、何か記憶に残ってほしい。こども定期演奏会が一人でも多くのこどもたちに何かが残る演奏会にしたいし、そのためにがんばりたいと思います」

「こども定期演奏会」2015年4月11日

「こども定期演奏会」2015年4月11日
司会:坪井直樹(TV朝日アナウンサー)、指揮:藤岡幸夫

司会:坪井直樹(TV朝日アナウンサー)、指揮:藤岡幸夫

9月26日(土) 『もっとロマンティック』ロマン派後期
指揮・岩村力インタビュー

「オーケストラを身近に感じるコンサートを、3世代で楽しんでほしい」

山田治生(音楽評論家)

岩村力さんは、早稲田大学理工学部電子通信学科卒業後、桐朋学園大学に学び、指揮者となった異色の経歴の持ち主。
NHK交響楽団アシスタントコンダクター(2000~07)を経て、現在、兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオーケストラ)のレジデント・コンダクターを務め、中学1年生を対象とした「わくわくオーケストラ教室」の多くの公演を指揮。
この5月には兵庫県功労者(文化功労)として表彰された。

兵庫県功労者(文化功労)表彰、おめでとうございます。兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACオーケストラ)のレジデント・コンダクターとしての活躍が高く評価されたわけですね。

「『わくわくオーケストラ教室』という県の事業がありまして、兵庫県の公立校では中学1年生になると必須でPACオケの60分のコンサートを兵庫県立芸術文化センター(西宮)まで聴きに来ることになっています。1年度中に40公演ありまして、1公演で千人から千五百人聴くので、1年間に5万人近くが聴くことになります。今年で10年目なので、兵庫県の50万人の若い人たちが生のオーケストラに触れました。こういう活動が評価されたのだと思います。
最初はほとんど全部、僕が振っていましたが今は、若い指揮者とシェアをして、3分の1から半分くらいの公演に関わっています。朝と午後の公演で、中学1年生の子供たちを飽きさせないように、親しみをもってトークもしていきます。」

兵庫県でのコンサート 指揮:岩村力

兵庫県でのコンサート 指揮:岩村力
【撮影】飯島隆 【写真提供】兵庫県立芸術文化センター

そんな若い聴衆のためのコンサートに熱心に取り組んでおられる岩村さんが「こども定期演奏会」では何を聴かせてくださるのでしょうか?

神尾真由子

「ロマン派の後期ということで、神尾真由子さんにチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の第1楽章を弾いてもらいます。神尾さんとは何度も共演しています。ロマン派では、ワーグナーは避けて通れません。オペラのストーリーやオーケストラの華やかさから、すっとワーグナーの世界に入れる『さまよえるオランダ人』の序曲を選びました。それら2曲は生き生きとした音楽ですが、ドヴォルザークからは少し内面的で祈りのような交響曲第8番第2楽章を選びました。交響曲にこのような内省的な音楽を取り入れるようになったということで取り上げました。こういう音楽を飽きさせず、うまく伝えられれば嬉しいですね。そしてグリーグの『過ぎし春』はBGMでも使われるような音楽ですが、長調でも哀しみを誘います。
ロマン派は、前期はドイツ音楽が中心でしたが、後期になってくると、チェコのドヴォルザーク、ロシアのチャイコフスキー、北欧のグリーグのように、各国へ浸透していきます。」

「こども定期演奏会」の聴衆の中心は小学生です。彼らに楽しんでもらうためのアイデアはありますか?

「みなさんに何か面白かったなと思っていただけばと思います。親子で満足してもらうのをモットーとしていますから。トークにもある種の技が必要かもしれません。曲そのものの歴史を話しても授業みたいになってしまいます。コンサートホールは教室ではないと思います。ですからいつもお客さんとオーケストラの距離が縮まるような工夫を心がけています。作曲家にしても、ドヴォルザークがものすごい鉄道ファンだったことを話したり。先ほど述べた後期ロマン派の周辺国への広がりには、電気技術や鉄道の発展が関係あります。それから、ヴァイオリン協奏曲がありますので、ヴァイオリンの音程の難しさやヴィブラートについてもお話しできればと思います。」

岩村さんは、早稲田大学理工学部を卒業されていますが、どのように指揮者になられたのですか?

幼少の頃、指揮棒?を
持つ岩村さん

「父はエンジニアで、母は歌手で合唱指揮者もしています。小さい頃からピアノを習っていましたが、母が寝る前に『子どものためのソルフェージュ』という本を使って1曲だけ歌い、新曲視唱を教えてくれたのがとても楽しかったですね。

小学校4年生からクラリネットのレッスンを始めました。カトリック系の小学校に行っていて、オーケストラの部活があり、そこでヴァイオリンを弾き、クラリネットを吹いていました。そしてオーケストラに興味を持つようになりました。先生がヴァイオリン弾きだったので、ヴァイオリンを教えてもらい、『威風堂々』や『ロザムンデ間奏曲』や賛美歌などを演奏しました。
『威風堂々』ではクラリネットを吹いて、『アヴェ・ヴェルム・コルプス』ではヴァイオリンを弾いたり。そして小学校の卒業文集に、将来やりたい仕事として『管弦楽の指揮』と書いていました。

左が岩村さん

後列左から2番目が岩村さん

中学時代はアマチュア無線にはまり外国の人とも話しましたよ。スポーツは小学校から40歳後半までサッカーをしていました。高校の時の神奈川県でベスト4まで行ったサッカー部でのポジションはゴールキーパー。そこで必要とされる決断力は指揮者に似ていると思います。クラリネットはオーケストラの同好会で吹いていました。

私は、母も行っていた桐朋学園大学に進みたかったのですが、指揮者をやるなら、急いで音大に入らないで、別のジャンルを学んでからでもいいのではと言われました。そこで、電気関係に興味があったので、浪人して早稲田大学の理工学部に進みました。4年後には桐朋学園大学を受験しようと思っていましたが、桐朋の入学金や学費は、数学の家庭教師や宅配便の仕分け、JRの駅のキオスクに雑誌を収めるアルバイトなど、自分で稼いだお金を当てました。桐朋学園大学にはまずクラリネットで入学。その後転科してホルン科に移り、さらにその後、指揮を4年間専攻して、桐朋には8年間通いました。

イタリアの新聞より

オーケストラの現場に行くようになったのは30歳になってからでした。最初は読売日本交響楽団に通い、1991年にNHK交響楽団の見学生になりました。初めてN響に来たサロネンのリハーサルも見ましたね。そして2000年から7年間、N響のアシスタントコンダクターを務めました。
その後、ヨーロッパに住んでみたいと思っていたところ、北イタリアのトレントのコンクールに入賞して、その街が気に入ったので、そこに住むことにしたのです。好きだったアバドのフェッラーラ歌劇場でのリハーサルに通い詰めたときに、そこでのアバドの若手歌手への指導を見て、彼の生き方から大きな影響を受けました。
自分にしか歩めない道で指揮者になるには時間がかかりましたが、指揮者はいろいろな人と接することも多く、音楽だけでなく、さまざまなことが学べて良かったと思います。」

東京交響楽団についての思い出は?

「東京交響楽団は中学生の頃から定期会員になって通っていました。一番接する機会が多く親しみを感じます。老舗のオーケストラで温かみのある美しい音がします。最近ではメンバーが若返り、老舗の重厚さから今の雰囲気に変わり、新しい時代が訪れているようにも思います。東響とこどものための演奏会をするのは初めてなのでとても楽しみです。」

岩村さんのこれからの目標は?

「若い時代とは違った表現ができると思うので、70、80代まで元気でいて、そのときにまたバッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンをやってみたいですね。」

最後にこども定期演奏会に向けてメッセージをいただけますか。

「なんか面白かったな、聴いてよかったなと思っていただけるコンサートにしたいと思っています。できれば、お父さまお母さまだけでなく、3世代で来ていただいて、オーケストラを近くに感じて、世代を越えてオーケストラの話に花が咲くような一日にしていただければと思います。」

「こども定期演奏会」2015年7月4日

「こども定期演奏会」2015年4月11日

司会:坪井直樹(TV朝日アナウンサー) 指揮:垣内悠希

司会:坪井直樹(TV朝日アナウンサー)、指揮:藤岡幸夫

ピアノ:金子三勇士

11月14日(土) 『私たちの時代』近代~コンテンポラリー
指揮・飯森範親インタビュー

「力が湧き出てくるリズム感―現代の音楽は、聴いたら絶対に面白い」

山田治生(音楽評論家)

飯森範親さんは、現在、東京交響楽団正指揮者、山形交響楽団音楽監督、日本センチュリー交響楽団首席指揮者、いずみシンフォニエッタ大阪常任指揮者などを兼務する、最も多忙な指揮者の一人。「こども定期演奏会」へは、第52回(昨年11月29日)に続いての登場となる。

昨年の「こども定期演奏会」で特に印象に残ったことは何ですか?

「(こども奏者が参加した)『エウゲニ・オネーギン』のポロネーズを、こどもたちがよく練習してきてくれたことですね。中学2年の彼がコンサートマスターとして立派にやってくれました。こういう共演は他ではなかなかやっていません。先日のオーディションにもたくさん受けにこられたのも、こういう機会がご両親やこどもたちに認知されてきた証かなと思います。
演奏会は親子でとてもまじめに聴いていただいているのが印象に残りました。以前は演奏する方も、こども向けの演奏会は普段よりもリラックスしすぎていたこともありましたが、最近はこどもたちに大人が一生懸命演奏しているところを見せないと、オーケストラの将来が本当にシビアになることをみんなわかっているので、決して手を抜きません。大人が必死にこどもたちの心に届けようという意識を持っているので、こどもたちとオーケストラの間で真剣な糸が張り詰めているのを感じるのでしょう」

2014年11月「こども定期演奏会」指揮:飯森範親 司会:坪井直樹 東京交響楽団

2014年11月「こども定期演奏会」   指揮:飯森範親  司会:坪井直樹  東京交響楽団

今年は、「私たちの時代」というタイトルで、近現代音楽を取り上げられますね。和田薫、吉松隆、カバレフスキー、ハチャトゥリアン、ストラヴィンスキーの作品です。

三村奈々恵

「リズムを強調したプログラムにしました。特に聴いてほしいのは、吉松隆さんの「バード・リズミクス」の第3楽章。マリンバとオーケストラ、オーケストラの打楽器セクションが見事に人の心を揺さぶるリズムを奏でます。高揚させてくれる素敵な作品です。 この曲は、僕が2010年に京都市交響楽団で初演して、11年に山形交響楽団で再演しました。作品は、今回のこども定期にも出演する三村奈々恵さんに捧げられています。鳥の鳴き声もメシアンみたいなのだけでなく、きつつきのコンコンという効果音のようなリズム感のあるものもあります。どちらかというと、吉松さんらしい、ロック、ジャス、ポップ・ミュージックとクラシックとの融合の作品。そのこだわりが鳴き声のリズムとマッチしています。山形交響楽団では、第3楽章の終わりで金管奏者を立たせて吹かせて、聴衆から大ブラボーをもらいました。今回もそれをやろうと思っています。

和田薫さんはアニメの音楽やゴジラの編曲で有名な方で、日本センチュリー交響楽団との関わりも深くファンファーレを書いてくださったりしています。吹奏楽の作品も多く、若い人にも演奏されています。今回は『犬夜叉』の音楽による幻想曲です。
カバレフスキー『道化師』の「ギャロップ」は、もともとシロフォン(木琴)で演奏するのですが、この日は三村さんによるマリンバ編曲版で演奏する予定です」

ハチャトゥリアンの『ガイーヌ』から「剣の舞」と「レズギンカ」は、こども奏者と一緒に演奏する曲ですね。

こども奏者の演奏(2014年11月「こども定期演奏会」)

『剣の舞』は、リズムが面白く、直ぐに体のなかに入る作品だと思います。今回はリズムがテーマで、こどもたちができる曲ということで選びました。でも『レズギンカ』は技術的に難しい曲なので弦楽器は必死になって練習しないといけません。集中力をもって同じ方向を向かせることが大切です。
今回の参加は、ヴァイオリンが8人、チェロ、フルート、オーボエ、トランペットですか。『レズギンカ』は、1996年にモスクワ放送響で世界一素晴らしいリズムを叩く小太鼓奏者と一緒にやったことがあるのですが、彼は天才的でした。通常の楽譜とはアクセントが違っていたのでそれを東京交響楽団の楽譜にも書き加えました。」

最後は、ストラヴィンスキーの『春の祭典』の第1部ですね。

「冒頭の有名なファゴットのソロとザンザンザンザンというリズムを聴いてもらいたくて第1部を選びました。『春の祭典』を聴くきっかけはディズニーの映画『ファンタジア』で、クラシック音楽に詳しい祖父に何の曲か教えてもらったことでした。5年生のとき、初めて全曲を聴きましたが、それはバーンスタイン指揮ロンドン響のレコードでした。それではまって、初めて自分のお小遣いで買ったスコアが『春の祭典』です。11歳の頃です。小学5、6年生のときには凝りまくって、バーンスタインのほか、コリン・デイヴィス指揮コンセルトヘボウ管のレコードも聴きました。ブーレーズも聴きましたが、オーケストラの自由なスタイルの演奏に衝撃を受けました(笑)。19歳か20歳のとき、桐朋学園の文化祭で振りました」

小学校のときに既に『春の祭典』の楽譜を読んでいたとは驚きです。ご自身はどのように音楽を学ばれたのですか?

「祖父は京都大学で朝比奈隆氏とカルテットを組み、チェロを弾いていました。音楽家にはなりませんでしたが。父は、親戚で作曲家のいずみたくと仲が良く、いずみたくからSPレコードを聴かせてもらって、クラシック音楽の影響を受けました。
ですから、チェロが子守唄代わりになっていたようです。3歳半のときに、チャイコフスキーのピアノ協奏曲のレコードを聴いて、『この楽器をやりたい』と言ったそうです。それでピアノを始めました。小学校4年生の頃には指揮者になりたいと思っていました。でも普段は、地元・葉山の山の中をかけずりまわっていました(笑)。10歳の頃、オーマンディ&フィラデルフィア管弦楽団の『ボレロ』のLPを父(祖父かもしれません)が聴かせてくれて、「この曲を指揮したい」と言ったそうです。
中学2年生の終わり頃には真剣に指揮科に行きたいと思ったのですが、音楽高校へ行くには遅く、高校は神奈川の県立に行きました。そして、東京芸大を目指すつもりが、小澤征爾先生や秋山和慶先生に習いたくて、桐朋学園大学に志望を変えて、現役で入りました。

中学・高校生の頃は、1か月に少なくとも10回はオーケストラを聴きに行っていました。カラヤン&ベルリン・フィル、ノイマン&チェコ・フィル、コシュラー、ジュリーニ&ロサンジェルス・フィル、スイトナー&ベルリン・シュターツカペレなど相当外国のオーケストラも聴きました。もちろんN響のコンサートにも行きました。
桐朋学園大学に入ったのですが、僕の学年は凄くて、ピアノの仲道郁代、ヴァイオリンの豊嶋泰嗣、木野雅之、鈴木理恵子、作曲の田中カレン、チェンバロの中野振一郎らが同期でした。現在オクタヴィア・レコードの江崎さんは天才トランペッターでした。僕は超劣等生だったので、あまりのストレスで吐血しましたよ。トランペットの祖堅(方正)先生だけは優しかったですね。大学での担当教官は尾高忠明先生、大学外で井上道義先生に学びました」

飯森さんには、小学校の息子さんもおられますが、子どもの音楽教育についてはどのようにお考えですか。

「息子は8歳ですが、ソルフェージュを3、4歳から勉強し、絶対音感はあります。ピアノとかヴァイオリンの楽器のプロは難しいとしても、耳さえあればと思いまして。本人は作曲に興味を持っているようです。
僕は息子を音楽家にしようとは思っていないので、音楽をやりたかったら応援するという感じですけど、とにかくいろんなものに触れさせたいとは思っています。本人は、ガウディみたいな建築家になりたいと言っているので、先日、サグラダ・ファミリアとカーサ・ミラに連れて行きました。サグラダ・ファミリアよりもカーサ・ミラにイメージが涌くと言っていました」

指揮者になりたいと思っているこどもたちには何かアドバイスはありますか。

「まずは耳を鍛えておくことですね。それが根本的なことです。美しいものに触れて、何がきれいな音なのか耳を養ってほしい。美しいものの色彩感と音色感を頭のなかで融合できるかどうか、共感覚ではないですか。僕は昔から共感覚があるので、色と音とがいつもリンクしてしまいます。音色感をオーケストラでどのように調整するかは経験ですが、それを持ってないと難しいですよね。僕は、絵が大好きで、自分でも描きます。日本画を片岡鶴太郎先生に学んでいました」

東京交響楽団とは、専属指揮者そして正指揮者として、20年来のつきあいですね。

「東京交響楽団は一人ひとりのポテンシャルがものすごく高い。一つひとつのコンサートを100%、いや120%の力を出して全員が演奏するすごいオーケストラです。本当に素晴らしいですよ。
ここ10年の日本のオーケストラは飛躍的に進歩しています。ここまで来ると、オーケストラの差というよりも指揮者とオーケストラの関係性が重要になっています。コンディションがよければ、どのオーケストラも神掛かりな演奏ができる時代になっていると思います」

最後に「こども定期」のお客様へメッセージをお願いします。

「今回の演奏会では、『リベルタンゴ』や『犬夜叉幻想』は、純クラシックではないですが、オーケストラのサウンドに乗って聴くことのできる耳触りのよい音楽ですし、現代の音楽とはいえ、耳から離れない吉松さんの作品もありますし、僕がクラシックにのめり込むきっかけとなった『春の祭典』の第1部もあります。そして、『レズギンカ』では、力が湧き出てくるリズム感をみなさんに届けられればと思います。食わず嫌いにならないで来てみてください。現代音楽になじみのない方にも、ぜひ聴いてほしいです。聴いたら絶対に面白いと思いますよ」

「こども定期演奏会」2015年9月26日

「こども定期演奏会」2015年4月11日

指揮:岩村力  東京交響楽団  ヴァイオリン:神尾真由子

指揮:岩村力 東京交響楽団 ヴァイオリン:神尾真由子

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