サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン 20192019年6月1日(土)~6月16日(日) 会場 ブルーローズ(小ホール)

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「ディスカバリーナイトⅡ」プログラム・ノート

藤倉 大:『Hop』クラリネット、チェロとピアノのための

  • 藤倉大 画像
  • 藤倉 大(作曲)

    世界で演奏される機会の最も多い作曲家の一人。ザルツブルグ、ルツェルン、BBCプロムスなどの音楽祭、欧米のトップ・オーケストラから国際共同委嘱を依頼され、世界一級の音楽家達が作品を初演・演奏している。ヴェネツィア・ビエンナーレ音楽部門銀獅子賞、芸術選奨音楽部門文部科学大臣新人賞、アイヴァー・ノヴェロ賞など受賞多数。 オペラの国際的評価も高く2015年に『ソラリス』、18年に『黄金虫』を世界初演。現在3作目の世界初演が控えている。録音はソニーミュージックなどから、楽譜はリコルディ・ベルリンから出版されている。

6月17日(水)19:30開演「ディスカバリーナイトⅡ」では、藤倉大:『Hop』クラリネット、チェロとピアノのための が日本初演となります。この作品は、サントリーホールとラジオ・フランス、アレイミュージックの共同委嘱によるもので、この日本初演では吉田誠(クラリネット)、横坂源(チェロ)、福間洸太朗(ピアノ)の3人が演奏します。
作曲の経緯や作品のイメージを、作曲者本人による書き下ろしのプログラム・ノートでご覧ください。
なお、この作品は6月の日本初演に先立ち、2月にパリ、トロントで世界初演される予定です。

*「ディスカバリーナイトⅡ」 公演情報詳細・チケット購入はこちら

【プログラム・ノート】
僕にとって、ピアノトリオを作曲するというのはいつもチャレンジ。
学生だった頃にいくつかピアノトリオを作曲したんだけど、僕自身は全然満足しなかった。
そのうちのひとつは、なにかの賞を受賞したこともあったと思うけど。

ある朝、おそらくその時に飲んだコーヒーも不味かったんだろう、僕は過去のピアノトリオをすべて破棄することにした。
その時点で、何曲も書いた僕のピアノトリオはこの世に存在しない状態になった。

それなのに、今でも時々知らない演奏家が、昔の僕のピアノトリオをわざわざ「発掘」してきて、演奏しても良いかどうか尋ねてくる。

どうやって調べたんだろう。

僕はたいてい、「そんな曲、存在しないですよ」とか「それは僕の作品ではない!」など言って嘘をつく。

なので、この「Hop」という作品は、僕の個人的なリベンジ。
昔の自分と、昔の僕のピアノトリオへのリベンジ。

とは言うものの、「Hop」の作曲はとっても楽しいものだった。

きっと、作曲家にとって歳を取る、ということは良いことなんだと思う。少なくとも今はピアノトリオの作曲は楽しい、と感じられるようになったから。

音楽的な話をすると、(プログラム・ノートなんだから、そろそろ音楽の話をしもしないといけないんだろうな)この作品で僕は、チェロとクラリネットの音と、ピアノの音をリフレクション(=反射)させることを思いついた。
それにおいては、元チェロ奏者の妻に相談したり、この作品を世界初演をすることになっているトリオ・キャッチのチェロ奏者に楽譜を見てもらったりしながら、曲の冒頭を何度も書き直した。

さて、リフレクションの話に戻ろう。それは、ボールが跳ねるイメージ。それもこっちの期待通りに跳ね返らないボールのイメージ。

スーパーボールが(見かけは平らなのに)平らじゃないらしいところに当たって、予想外の方向に飛んでいっちゃう、そんなイメージ(世界中みんな誰しもが、子どもの頃に1日中ボールを投げて遊んでいたことがあると思う。それは音楽のように普遍的なことなんじゃないかなと僕は思う)。

僕は、クラシック音楽でよくある、ピアノとその他の楽器が「持続的に」フレーズを交換していくというのは嫌い。
だけど、3つの楽器がそれぞれ高速で演奏した時に生まれる音はとてもいい響きなんじゃないかなと思った。

3つの楽器から生まれたテクスチャーは、スイスの美しく穏やかな湖面に、太陽が反射して静かにきらめくような感覚だと僕は思った。
そのきらめきの断片は、突然大きなフレーズに変わる。木の枝の成長の早送り映像を見ているような、そんなイメージ。

ピアノの鍵盤を押すと、音が鳴った後、自然に音が減衰するところが僕は大好き。
一度鍵盤を鳴らしたら、あとは弾き手にも聴き手にもできることは何もない。すごく自然なディミヌエンドが起きる。

ディミヌエンドの迷宮の中では、クラリネットとチェロの音色があなたをくすぐる。ぴょんぴょんと、時にはこちょこちょと。

藤倉 大 (日本語訳:滝田織江)

I always found it challenging to write piano trios.
I have written several in the past, during my student days. One of them even received some kind of prize I think. But I was not happy with any of them.
Therefore one morning, probably after a bad coffee, I withdrew them all. All my piano trios were hidden somewhere, not to be found.
From time to time someone “detects” the existence of these trios and I get asked if the work can be performed.
I often lie, saying that work doesn’t exist, or worse still, “that’s not by me”.

So this new piece, Hop, is indeed my personal revenge.
Revenge on my old self and my old piano trios.

Having said that, the compositional process of Hop was very joyous one.
Surprising.
Maybe getting older is a good thing. At least I feel I can compose a piano trio happily.

Musically speaking (I guess I should talk about that since it is supposed to be a programme note), I wanted to make a reflection with the ideas of the cello and clarinet against those of the piano. So it begins in that way.
After re-writing the opening section many times, consulting my wife who is an ex-cellist, and also showing it to cellist of the Trio Catch (who is giving its World Premiere), the cello part became quite a tricky one.

Back to the reflection idea. It’s like a bouncing ball, but one of those balls that won’t bounce as you expect. A rebellious one. When a super-ball accidentally hits a non-even surface, it bounces in an unexpected direction. It’s like that.
I am sure you remember a time when you were a little kid throwing balls around all day, something like that is universal, like music, perhaps.

So we have the opening.

I am not a big fan of sharing musical material between ‘sustaining’ instruments and the piano, which happens a lot in classical music.
However, the sound of the three instruments when they are played fast, even with piano, match well sonically. At least to my ear.

Some textures created by all three instruments are shimmering. Like watching the surface of gentle water in a beautiful lake in Switzerland with the sun reflecting off it creating a sparkling yet calm shimmer.
That develops into more lyrical section. A fragment of the shimmer suddenly grows into phrases. I imagine it like a fast forwarded image of how the branches of trees grow.

I like the characteristics of the piano. When you play the keys of a piano, the sound naturally decays. This decaying of the piano sound is automatic. There is nothing you can do, it is the most natural diminuendo.
Within that labyrinth of the natural diminuendo, the clarinet and cello creep in and out, tickling your senses. Or so I am hoping.

Dai Fujikura (edited by Alison Phillips)



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