サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン 20192019年6月1日(土)~6月16日(日) 会場 ブルーローズ(小ホール)

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葵トリオのベートーヴェン―ピアノ三重奏曲全曲演奏会

  • 葵トリオ©Nikolaj Lund Photography葵トリオ

2018年、ミュンヘン国際音楽コンクールのピアノ三重奏部門で日本人初の圧倒的な第1位を獲得した葵トリオ。メンバー3人はサントリーホール室内楽アカデミーや東京藝術大学で出会い、現在はドイツで更なる研鑽を積み常設団体ならではのサウンドに磨きをかけています。
6月の「ピアノ三重奏曲全曲演奏会」では、個性豊かなベートーヴェンの作品番号(Op.)付き9曲の本質に迫ります。
彼らにとって全曲演奏シリーズに臨むのは今回が初めて。秋元孝介(ピアノ)、小川響子(ヴァイオリン)、伊東裕(チェロ)に意気込みや聴きどころを伺いました。

*公演情報は下記よりご覧いただけます。チケット購入も可能です。
Ⅰ 6月10日(水)19:00開演 
Ⅱ 6月14日(日)14:00開演 
Ⅲ 6月18日(木)19:00開演

【葵トリオ インタビュー】

渡辺和彦(音楽評論家)

  • 葵トリオ©Nikolaj Lund Photography

「チェンバーミュージック・ガーデン」で6月10日から18日まで、3回に分けて、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲全曲演奏会を挙行しますね。弦楽四重奏曲の場合「全曲」は珍しくありませんが、トリオの「全曲」はとても珍しい。単独で採り上げられる曲も、「大公」「幽霊」「街の歌」くらいです。それに今回は、俗称「カカドゥ変奏曲」作品121a と「ディッタースドルフによる14の変奏曲」作品44もあるので、ほとんど完璧な全曲演奏ですね。問題はメイン7曲の配列です。

小川:自分たちの中で第1番を1日目1曲目に、第7番『大公』を3日目の最後の曲に、という思いはあったのですが、なかなか配置が難しく、トリオ・ヴァンダラーのピアニスト、ヴァンサン・コックさんにご相談しました。コックさんは過去の全曲演奏会のご経験から、この組み合わせがベストだよ、とアドバイス頂き、調性、曲の雰囲気や知名度を含め、私たちもとても素敵な組み合わせだと納得したので、こちらの演奏順に決めました。

秋元:タイトル付きの第5番「幽霊」、第4番「街の歌」、そして第7番「大公」をそれぞれの回に1曲ずつ入れよう、と。

その場合、タイトルがないのに大名曲の「第6番 変ホ長調 作品70-2」や、聴きばえのする「第3番 ハ短調 作品1-3」をどこに配列するかが思案のしどころです。結果として、第3番は3日目の冒頭に配置しました。「第6番 変ホ長調」は最終楽章がかなり派手で、最後は民謡風の主題が大爆発する。

小川:6番の最終楽章は技術的に難しいです。けれども、とても華やかなので第6番を2日目の最後にすることにしました(一同賛同)。

  • ドイツでのリハーサル風景ドイツでのリハーサル風景

その案は大賛成です。3回とも最後はしっかり盛り上がって終わる。

伊東:実は第6番は葵トリオで初めて取り組んだ作品です。その後も何度か演奏機会があり、ミュンヘン国際音楽コンクールでもセミ・ファイナルで演奏した思い入れのある曲です。

「作品1」の3曲、第1~3番の魅力は?

秋元:ある程度ピアノがメインの曲です。第2番などピアノがソリステイックな部分が多いのですが、後の曲になるほどその役割がヴァイオリンやチェロにも振り当てられていく感じですかね。

伊東:初期の作品は、チェロは基本的にはピアノの左手と共にバスの役割を担っていますが、後の作品になるにつれて、チェロにも独立した役割が与えられて行きます。

小川:チェロに比べると、ヴァイオリンは初期の作品から独立している部分も多いです。ベートーヴェンのピアノトリオの中のヴァイオリンの立ち位置は、ヴァイオリン・ソナタのように一番上の声部を弾くというよりは、ピアノが作っている音域の、中間部分の響きを補強する側面が強いと感じます。弦楽四重奏に例えると、2ndヴァイオリン的な役割が多いですね。

  • バーデン=バーデンでの公演の際に立ち寄ったブラームスハウスバーデン=バーデンでの公演の際に立ち寄ったブラームスハウス

ところで2019年5月1日にトッパンホールで演奏しました「幽霊」で、あなた方は近年のヨーロッパの傾向に合わせて、第1楽章は前半だけでなく、後半の繰り返しも実行しました。提示部・提示部・展開部・再現部プラス(もう一度)展開部・再現部の形。そのため冒頭楽章はかなり長くなりました。楽譜にはそうしろと書いてありますが、提示部リピートはともかく、後半のリピートは省略されるのが普通でした。23分くらいと思っていた曲が結果として35分くらいかかったりする。

秋元:そうですね。ベートーヴェンの楽譜はかなり厳密に書かれています。特に「幽霊」の第1 楽章後半で繰り返す部分は、1回目と2回目でハーモニーが全く異なるので、その通り実行したほうが良いと思いました(これも一同、納得)。

リピートでは「大公」の場合は大問題があります。特に第2楽章スケルツォ。普通の三部形式ではなく、トリオが2度入る五部形式で再現するのが正しいとする説が昔からあり、私はその形が正解と思っています。

小川:最近は確かに「楽譜通り」というのが当たり前になってきていますね。

今回はどうしますか? 昔のギレリス、コーガン、ロストロポーヴィチの録音は五部形式で演奏していますので、「大公」1曲だけで50分以上かけていました。

秋元:当日のお楽しみ、ということでどうでしょうか(笑い)

またチェロ・パートの話に戻りますが、2018年12月ブルーローズ(小ホール)でのシューベルトの「トリオ 第2番 変ホ長調」は、ほとんどチェロのための曲、という印象がありました。最終楽章でヘンレ版で大きく省略されている部分があります。

伊東:その部分はシューベルト自身が長くなり過ぎるのを避けるためにヘンレ版で省略したと言われており、私たちはその形で演奏しました。

  • 葵トリオ

そうでしたね。私の友人たちで、あそこも「繰り返すべきだ」を実行して全曲55分かけて演奏したトリオがいました。さすがに長くなり過ぎて閉口しました(笑い)。
ピアノ三重奏という形態はカルテットとは少し違って、臨時編成の3人が音楽祭などで、「初めましてコンニチハ」「さあ、やりましょう」みたいなことがけっこう多い。そのほうがスリリングで面白いこともある。「葵」は3人別々のソリスト活動に意欲はないですか?

小川:現在私たちは、ミュンヘン音楽大学の室内楽科で学んでいますが、それぞれ日本やドイツで、ソロや室内楽の演奏会をしたり、オーケストラでの演奏活動も行っています。全ての活動がこのトリオの成長にプラスになると考えているので、個人の活動に制限はかけていません。
葵トリオは、私にとってとても大切なもので、これからの音楽人生の大きな柱にしていきたいと思っています。

3人のうちのだれかが、どこかの国のメジャー・クラスのオケの首席になったり、ソリストとして有名になったりすると、「葵」からはサヨウナラはないですよね。

秋元 小川 伊東:(3人全員口を揃えて)それは絶対ないです!

安心しました。それでは6月の演奏会を楽しみにしています。



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