サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン 20192019年6月1日(土)~6月16日(日) 会場 ブルーローズ(小ホール)

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アトリウム弦楽四重奏団 
ベートーヴェン・サイクルを語る

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を全曲演奏するチェンバーミュージック・ガーデン恒例の「ベートーヴェン・サイクル」。ベートーヴェン生誕250周年にあたる2020年は、カリスマ的な存在感を獲得しているアトリウム弦楽四重奏団が登場します。結成20年を誇るロシアの弦楽四重奏団が、満を持してベートーヴェンの全16曲に挑みます。メンバーに意気込みや聴きどころを聞きました。

*「アトリウム弦楽四重奏団 ベートーヴェン・サイクル」公演情報は下記よりご覧いただけます。チケット購入も可能です。

ベートーヴェン・サイクルは、演奏会5~6回の曲目構成にグループの個性が現れます。今回の曲目構成の意図・狙いについて聞かせてください。

全体に共通するコンセプトとしては1公演を初期、中期、後期の曲で構成しています。これによって、お客様にはベートーヴェンの作曲の流れと曲の発展を最大限に知っていただけることと思います。
今回の演奏会のプログラミングは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲と私たちの関係性を示唆するようないくつかの意味を持たせて考えました。たとえば、6月13日のコンサートⅤは、アトリウム弦楽四重奏団の歴史そのものにとても重要に関わってくる曲で構成しています。第4番は私たちが初めて勉強し、演奏をしたベートーヴェンの曲です。第8番は2003年のロンドン国際弦楽四重奏コンクール(現:ウィグモアホール弦楽四重奏コンクール)で第1位を獲得したときに演奏した曲です。第12番は、私たちの新しいリーダー、ニキータを迎えて初めて演奏したベートーヴェンの曲です。ひとことで言うと、コンサートⅤはアトリウム弦楽四重奏団の歴史そのものを反映させたプログラミングになっています。
また、私たち全員、このベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番がどの室内楽曲の中でも一番優れた作品であるという考えで一致していて、一番多く演奏している曲でもあり、この曲はどこか「故郷」のように感じさせてくれる曲でもあります。なので、全体のプログラムを第15番で終わりたいと思って構成したのが6月15日のコンサートⅥです。

皆さんにとってベートーヴェンとはどのような作曲家ですか?彼が残した弦楽四重奏曲の魅力を聞かせてください。また、2020年はベートーヴェン生誕250周年にあたりますが、この記念の年にベートーヴェン・サイクルに取り組むことをどのように感じていますか?

まず、ベートーヴェンの生誕250周年という記念イヤーに、サントリーホールでのベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲演奏会という機会を与えていただけたことを大変誇りに思っています。これは、私たち4人への名誉と、それに伴う重責も含めて大きなプレゼントです。弦楽四重奏を演奏する多くの音楽家たちは「ベートーヴェン」は「弦楽四重奏曲」の同義語と捉えています。彼はこの弦楽四重奏曲というジャンル全体を非常に発展させ、今でも弦楽四重奏曲の作品集として、後続のすべての世代の作曲家たちの素晴らしいお手本になっています。人間のドラマ、力、思想、喪失とその解決策、さらには神へのアプローチでさえ、人間についての非常に魅力的な物語を語る偉大な人文主義の聖書として在り続ける彼の音楽に私たちは非常に惹かれるのです。そして、曲にはベートーヴェン自身の作曲時の戦争や革命などの時事的なできごとや、そのときの個人的な感情も反映されています。ベートーヴェンはとても人間的であり、また、現在の私たちにとってもいまだに、「先進的」な人です。

一番好きなベートーヴェンの弦楽四重奏曲があれば、その理由もあわせて聞かせてください。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の中から、好きな曲を1曲選ぶことはとっても難しいことです。単純にそれぞれ全ての曲に、好きな部分と、その明確な理由があるからです。たとえ、どれか1曲を選んだとしても、それはすぐに変わってしまいます。なぜなら、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲はスコアを見返すたびに、新たな発見があるからです。おそらくメンバー全員に共通しているのは、ベートーヴェンの特に、中期から後期の作品で緩徐楽章を演奏するときに特に愛をこめて演奏しているというところでしょうか。

アトリウム弦楽四重奏団の演奏を初めて聴くお客様、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を初めて聴くお客様に向けて、今回のベートーヴェン・サイクルがどのようなコンサートになるのかご紹介いただけますか?

私たちはいつも、自分たち自身のことをストーリーテラーが語るかのように表現することを心がけています。そして初めてアトリウム弦楽四重奏団のコンサートに来たお客様に、ベートーヴェンが楽曲にこめた想いを、言葉を使わずに、私たちの演奏で、また、魂によって伝えることができればと思っています。皆様をベートーヴェンの世界と歴史を辿る、非常に興味深い旅へお連れしたいと思います。

アトリウム弦楽四重奏団はこれまでに、ショスタコーヴィチやチャイコフスキーの全曲を1日で演奏するなど、意欲的なプロジェクトに取り組んできました。今回初めて全曲演奏するベートーヴェン弦楽四重奏曲との共通点や違いについて考えを聞かせてください。また、ロシアの作曲家とベートーヴェンとの違いをどのように感じていますか?

その通り!ショスタコーヴィチやチャイコフスキーのプロジェクトはお客様にとってもそうであったと思いますが、私たちにとって大変なチャレンジ企画でした。一人の作曲家の全曲演奏会というのはその作曲家の人生に沿って、その作曲スタイルや音楽的な言語、美学や彼自身の人生そのものに深く関わり、飛び込んでいくようなものなのです。そして私たちとお客様がその作曲家の人生をつかの間、ともに生きてみる、という体験を提供するものです。そして、もちろん、弦楽四重奏曲の名曲の数々に長く浸っていただけるという素晴らしい機会にもなります。 ベートーヴェン全曲とショスタコーヴィチ全曲の違いですか・・・ベートーヴェンのほうが長い準備期間を要するので、その分集中するし、消耗もするというシンプルに肉体的な違いはありますが、ベートーヴェンとロシア人作曲家の、作曲家としての違いを見出そうとは思いません。たとえばベートーヴェンとショスタコーヴィチは生きた時代が1世紀も違い、生きている文化や歴史的背景、それによって形成される精神的な部分はすでに大いに違うのですから。ただ、1つ言っておきたいのは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、常に、ショスタコーヴィチが弦楽四重奏曲を作曲するときのお手本になっていた、ということです。

今回ボドロフさんに新曲を委嘱されますが、ボドロフさんとアトリウムが知り合ったエピソードや関係性、委嘱のきっかけや、どのような作品になるのかご紹介ください。

出会いは今回メンバーに加入したニキータとコズマ・ボドロフに公私に渡る友好関係があったことにあります。彼らは二人ともモスクワ音楽院を卒業していて、15歳くらいのときからの知り合いです。ニキータは、コズマのヴァイオリン、チェロ、ピアノのトリプルコンチェルトを含む何曲かの新曲を初演しています。このたび、アトリウム弦楽四重奏団の結成20周年と、ベートーヴェンの生誕250周年の記念イヤーにあたり、なにか新しい曲を委嘱したいと考えていたときに、ニキータが彼に打診をしてくれ、ありがたいことに、快く引き受けていただきました。新曲に関してはいつもそうですが、新曲は作曲家自身の魔法の力によるものなので、出来上がるまで、どんな曲になるのか私たちが想像することは難しいのですが、間違いなく、旋律的で誠実な、彼そのものを反映させた素晴らしい曲になると確信しています。そして、もちろん、ベートーヴェンに捧げる曲としてふさわしい1曲になることと思います。

前回の来日時からメンバーが変わり、現メンバーでの音楽作り、作品へのアプローチなどに何か変化はありましたか?また、グループとしての活動方針やプログラムなどは、普段どのように決めているのですか?

私たちは、結成して20年で2度しかメンバーチェンジをしていません。メンバーが変わる際、元からいるメンバーたちは、自分たちが音楽を作り上げていく上での音楽的な考え方や個性を変えてはいけないという考えで、常に新しいメンバーを探してきました。2017年のリーダー(第1ヴァイオリン)というポジションでの変更は、長年彼と一緒に取り組んできた結果を維持するという考えが第一にありました。今回加入したニキータはそういう意味で、アトリウム弦楽四重奏団の思想に完全に適合していて、その強い個性とスタイルで、クァルテットを音楽的にもテクニック的にもより良くサポートしてくれる存在となりました。
活動方針や計画は、メンバーそれぞれのソロ活動も含めて、かなり前から入念に決めていきます。通常は年に何度か、コンサートに向けての練習や新しいレパートリーを練習するための期間を設けています。コンサートのときは本番の数日前に集まって、成すべき作業を仕上げていきます。プログラムはいくつかのポイントに沿って決めていきます。たとえば、自分たちの音楽的な志向をキープできるものであるか、ロシアの作曲家の紹介などを大事にし、その曲に人気があってみんなに知られている曲かどうかや、今流行りの曲かどうかを気にして選ぶことはありません。そして私たちはいつも、あまり知られていなかったり、人々から忘れ去られたような曲を演奏することはすごく楽しみです。そういう曲をとりいれると、プログラム自体がとても特別で個性的なものになりますから。

2020年で結成満20年を迎えますが、これまでの活動を振り返り、ベートーヴェン・サイクルを経て、今後どのような活動をしていきたいですか?

もう結成して20年にもなるなんて、本当に信じられません。本当に、ついこの間始めたばかりのような気もしますが、それぞれの年を振り返ってみると、世界中のたくさんの人々に、私たちの音楽を聴いていただき、たくさんの結果を残せていることを大変誇りに思います。決して簡単なことではありませんでしたが、私たちの団結力が糧となって、少なくとも次の20年は迎えることができると確信しています。次の私たちの目標は、あまり知られていない、また、忘れられてしまったロシアの作曲家の名曲を取り上げ、世界有数のホールでたくさんのお客様に聴いていただくことです。また、それらの曲のレコーディングも視野に入れています。それから、これは夢ですが、自分たちのことを紹介するとともに、たくさんのお客様に弦楽四重奏の魅力を知っていただけるような、アトリウム弦楽四重奏団のフェスティバルを開催できたらと思っています。

音楽の楽しみ方が多様化する中で、生演奏を味わうコンサートの魅力について、どのようにお考えですか?

生の演奏会と、CDやインターネットのライブ配信のコンサートを比べることはできません。生の演奏会には、その時のそのホールにだけしか起きない、演奏家とお客様で作り上げる魔法のような空気がうまれるのです。これは演奏中にだけ生じる知識とエネルギーによる芸術なのです。それは人間同士の愛情のようなもので、決してヴァーチャルでは叶えられないものなのです。コンサートは演奏家の演奏を聴くだけでなく、お客様の反応をこちらが感じ取るという相互のやりとりがあり、そのときに生じる奇跡なのです。

オリンピックで注目される2020年のTokyo に長期間滞在しベートーヴェンを演奏されます。日本や東京の印象はいかがですか?

東京の変化は凄まじいです。私たちは、ずいぶん前に、各メンバーがそれぞれの演奏活動で、初めて東京を訪れました。そして、来るたびに、街がすごい速さで変化と発展を続けているのを目の当たりにしています。そして、東京オリンピック、おめでとうございます!今までにない素晴らしい会となりますように!私たちはいつも、東京の人々の生活のスピード感に圧倒されます。そして、皆さんがとっても忙しい時間の中に楽しみを見出していることに驚きを隠せません。東京はいままで私たちが訪れたどの街とも比べることのできない、特別な街です。世界一素晴らしいホールでの演奏、そして新しいたくさんのお客様との出会いをいまからとっても楽しみにしています。

2020年は、「チェンバーミュージック・ガーデン」が10回目を迎えます。フェスティバルに出演することへの意気込みを聞かせてください。

チェンバーミュージック・ガーデンの記念すべき10回目の開催に心からの敬意を表します。そのすばらしい企画力やプログラミングによって、室内楽の世界に大きく貢献している企画を誇りに思うとともに、その素晴らしい企画に携わることができることが大変嬉しく、自分で自分たち4人を祝福したいと思います。これからもこの素晴らしい企画がたくさんのお客様とともに発展し続けることをお祈りいたします。

最後に、来場されるお客様にメッセージをお願いします。

2020年のベートーヴェン全曲演奏会へお越しいただけることを心よりお待ちしています。ベートーヴェンの生誕250周年を皆さんと一緒にお祝いできる2020年は、東京にとっても、アトリウム弦楽四重奏団にとっても、大変特別な年になることと思います。私たちと一緒に、ベートーヴェンの名曲の数々を楽しむ忘れられない旅に出ましょう。



更新情報

6月1日
サントリーホール CMG オンライン<チェンバーミュージック・ガーデン有料ライブ配信> 開催
5月14日
サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン 2020 開催中止のお知らせ
4月30日
【動画】アトリウム弦楽四重奏団(演奏とメッセージ)
4月30日
【聴きどころ・曲目解説】[年表] ベートーヴェンとその時代
3月31日
【トピックス】インタビュー:佐藤晴真(チェロ)、工藤重典(フルート)大萩康司(ギター)、渡辺玲子(ヴァイオリン)、依田真宣(ヴァイオリン)
3月31日
【動画】工藤重典(フルート)大萩康司(ギター)、渡辺玲子(ヴァイオリン)
2月28日
【トピックス】インタビュー:葵トリオ(ピアノ三重奏)、ソヌ・イェゴン(ピアノ)、辻 彩奈(ヴァイオリン)横坂 源(チェロ)、川口成彦(ピアノ)
2月28日
【トピックス】室内楽とベートーヴェン~3つのベートーヴェン全曲演奏会に寄せて
2月28日
【動画】葵トリオ(ピアノ三重奏)、辻 彩奈(ヴァイオリン)横坂 源(チェロ)、依⽥真宣(ヴァイオリン)、堤剛プロデュース2018(演奏:堤剛&荻原麻美)
2月28日
【聴きどころ・曲目解説】プログラム・ノートを公開(公演当日配布のプログラムより)
1月31日
【トピックス】インタビュー:アトリウム弦楽四重奏団、毛利文香(ヴァイオリン)、室内楽アカデミー
1月31日
【トピックス】藤倉大:『Hop』日本初演~作曲者と作品の紹介
1月31日
【トピックス】NAXOSプログラム無料試聴コーナー~CMG2020で演奏するベートーヴェン全33曲
1月31日
【トピックス】特別プレゼント「CMG フィナーレ 2020」リハーサル体験
1月31日
【動画】川口成彦(フォルテピアノ)、毛利文香(ヴァイオリン)、CMG2019公演動画
1月31日
「チェンバーミュージック・ガーデン2020」特集ページ公開。今後、6月の公演開催に向けて情報を追加していきます。