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サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン 2020
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サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン 20192019年6月1日(土)~6月16日(日) 会場 ブルーローズ(小ホール)

館長メッセージ 館長メッセージ

10回目を迎えるチェンバーミュージック・ガーデン

ベートーヴェン・イヤーに贈るフェスティバル

2020年のチェンバーミュージック・ガーデンは10回目という節目の年であると同時に、クラシック音楽の作曲家の中でも最も人気のあるベートーヴェンの生誕250周年にもあたります。そこで今年のフェスティバルもベートーヴェンが大きな柱となります。その柱は3つあります。

  • アトリウム弦楽四重奏団

まず、毎年恒例のベートーヴェンの弦楽四重奏曲を全曲演奏する「ベートーヴェン・サイクル」にはロシア出身のアトリウム弦楽四重奏団が出演し、6回のコンサートで全曲を演奏します。これまでヨーロッパやアメリカ、日本の弦楽四重奏団がこのサイクルに挑戦して来ましたが、ロシア出身の弦楽四重奏団は初めて。ロシアと言えば、ロストロポーヴィチ、オイストラフやリヒテルと言った巨匠ソリストを輩出した国ですが、実は弦楽四重奏でも重要な団体が存在しています。アトリウム弦楽四重奏団はそれを再認識させてくれると思いますし、これまでの団体とは少し違った色彩を持ったベートーヴェンになるのではないかと期待しています。

  • 葵トリオ 萩原麻未

次に、サントリーホール室内楽アカデミー出身で、2018年にミュンヘン国際音楽コンクールで第1位となった葵トリオ(ピアノ三重奏団)が、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲を3回のコンサートで全曲演奏します。これはベートーヴェン・イヤーにふさわしい意義のある企画だと思います。
9曲のプログラミングは、表題付きの著名な作品と変奏曲をうまく分散し、1日で色々なベートーヴェンが聴けるように配慮しています。葵トリオのメンバーは、室内楽アカデミーの第3期・4期(2014年〜18年)で学び、私もディレクターとして彼らの演奏に接してきました。今後のさらなる活躍が楽しみです。

そして3つ目の柱として、このフェスティバルのオープニング・コンサートである「堤剛プロデュース」では、ベートーヴェンの5曲あるチェロ・ソナタを全曲演奏します。弦楽四重奏曲もそうですが、チェロ・ソナタでもベートーヴェンはその作曲活動の初期、中期、後期にあたるそれぞれの時期にチェロ・ソナタを書いています。まだ20代の時期に第1番と第2番を。傑作の集中する中期に第3番を、そして後期には第4番と第5番を残してくれました。チェリストにとっては、ベートーヴェンが5曲のチェロ・ソナタを書き残してくれたということはとても大きな意味を持っています。J. S. バッハの6曲の「無伴奏チェロ組曲」が旧約聖書だとすれば、ベートーヴェンの作品は新約聖書だとよく言われますが、まさにそれが実感出来るコンサートになると思います。

そのチェロ・ソナタの全曲演奏会ではピアニストの萩原麻未さんが共演者として出演してくれます。萩原さんとは実演でも、また録音でも共演して来ましたが、彼女との共演では実に音楽が自然に流れるような気がします。チェロをよく聴いて、その上で、自然に自分の音楽の方向性を示してくれるので、チェロのほうでもそれに反応することが出来るという感覚です。彼女の室内楽的なセンスは天与のものなのか、あるいはフランスで勉強した結果なのかはよく分かりませんが、共演する中で、何か新しいものを私から引き出してくれる可能性を感じるのです。それがどう表現されるか、自分自身でも楽しみなコンサートです。
ベートーヴェンの音楽の魅力は一言では言い表せませんが、その傑作の多くが、彼が耳の病気に気付いて以降、その障害の中で書かれたということ、そして、その人間としての苦しみの中から、自分の心に問いかけて、素晴らしい音楽を作り出した点にあると思います。それは複雑な現代社会に居る私たちにも励ましとなるのではないでしょうか? 

世界的に有名なクロンベルク・アカデミーの日本ツアーも

  • クロンベルク・アカデミー
    ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)のレッスン

2020年のチェンバーミュージック・ガーデンのもうひとつの大きな話題は、ドイツのクロンベルク・アカデミーのコンサートがこのフェスティバルの中で開催されることです。クロンベルク・アカデミーはドイツのチェリストであるライムント・トレンクラー氏が始めたアカデミーで、最初の頃はクロンベルク・チェンバーミュージック(ドイツ風に言えばカンマームジーク)・アカデミーという名称でした。クロンベルクはドイツの金融の中心地フランクフルト近郊にあり、裕福な銀行家なども多く住む街です。トレンクラー氏はその家々を周り、コツコツと寄付を募って、まったく何も無いところからこのアカデミーを始めました。

現在はチェロだけでなく、ヴァイオリン、ピアノなど世界的な演奏家がこのアカデミーの先生として、若い演奏家たちを指導しています。また日本人でもクロンベルク・アカデミーで学んだ演奏家が増えて来ています。
今回の初めての日本ツアーには、そのアカデミーの先生であるミハエラ・マルティンさん(ヴァイオリン)、フランス・ヘルメルソンさん(チェロ)が参加し、このアカデミーで学んだ宮田大さん(チェロ)や、現役のアカデミー生である毛利文香さん(ヴァイオリン)などが共演します。2回のコンサートは日本の若い演奏家にも多くの刺激を与えることと思います。

室内楽にも未来に向かう新しい風を

  • ENJOY!室内楽アカデミー・フェロー演奏会

その他、「プレシャス1pm」「ディスカバリーナイト」「アジアンサンブル@TOKYO」など、毎年行っているコンサートも開催されます。その中で「ディスカバリーナイト」では、権代敦彦さん、藤倉大さんというふたりの作曲家に新しい作品を書いて頂きました。またアトリウム弦楽四重奏団の「ベートーヴェン・サイクル」の中でも、クズマ・ボドロフさんの作品「弦楽四重奏曲第2番」が日本初演されます。室内楽はどちらかと言えば保守的なジャンルと思われがちですが、その中にも未来に向かう新しい風が吹いていることを聴衆の皆様に知って頂き、その風を感じて頂きたいと思って企画しました。

ベートーヴェンという大きな柱、そしてドイツのアカデミーの参加など、2020年もたくさんの色彩の花が咲き競う庭となるでしょう。その中で、サントリーホール室内楽アカデミーのフェロー(受講生)たちも「ENJOY!室内楽アカデミー・フェロー演奏会」などで、それぞれの花を咲かせてくれることと思います。また、これまでに室内楽アカデミーを受講し、現在はOB、OGとしてオーケストラなどで活躍している演奏家の方々もコンサートに参加してくれます。

そもそもサントリーホールで室内楽アカデミーを始める時に思い描いていたのは、かつてハンガリー出身の名だたる演奏家たちがその教えを受けたと言われる作曲家ヴェイネル・レオー(1885〜1960)が、ブダペスト音楽院で開講していた室内楽のクラスのことでした。彼は、演奏技術に留まらず、その音楽の生まれた背景に始まり、演奏家の身体の使い方に至るまで、幅広い視点から音楽を見つめていたようです。その教えの中からフリッツ・ライナー、ゲオルグ・ショルティ、ヤーノシュ・シュタルケルなどが登場して来たのです。サントリーホールの室内楽アカデミーもそうした存在でありたいというのが大きな夢のひとつです。

最後に感謝したいのが、このチェンバーミュージック・ガーデンと共に歩んで下さっている数多くの聴衆の皆さんです。客席に座っていると、「あの箇所で、あのクァルテットのフィンガリングはこうだったね」などという会話が聴こえて来ることがあります。ご自身でも楽器を演奏して、弦楽四重奏を楽しんでいらっしゃる方も多いようです。そうした熱心な音楽ファンのひとりひとりが、このチェンバーミュージック・ガーデンを支えて下さっているのだと思います。
2020年も咲き競う室内楽の花を楽しんで頂ければ幸いです。

(インタビュー・構成:片桐卓也/音楽ライター)



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