サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン
「トリオ・ヴァンダラー 円熟のピアノ三重奏」

トリオ・ヴァンダラーの名曲プログラムと「常設のピアノ三重奏」

今回で何回目の来日になりますか?これまでの日本でのコンサートや聴衆について、印象に残っているエピソードはありますか?

今回が11回目の訪問となる日本には、数々の素晴らしいコンサートホールがあり、とても熱心に聴いてくださる温かいお客さまに恵まれています。すべてが素晴らしい思い出ですが、1997年の初来日での出来事は今でも忘れられません。大阪国際フェスティバルの招聘による来日でしたが、東京での演奏会で、聴衆がステージではなく天井を見ながら聴いていたのです。というのも、演奏中に地震が起きてシャンデリアが大きく揺れたのでした。皆さん落ち着いていて、我々も演奏を続けられたことは幸いでした。初来日が人生初の地震体験となった私たちでした。

今では世界的に希少な存在となっている「常設のピアノ三重奏団」として、長く続けて来られた秘訣があれば教えてください。

私たちは「ルールを設けないことがルール」です。「暗黙の決まり事」を持つことですら大変危ういことです。そして、メンバーがトリオの活動の外では各自の裁量を確保できていることが、とても大切です。ちなみに、これは音楽に限らないと考えます。何かのグループを作って長く活動するときに共通する秘訣ではないでしょうか?

「トリオ・ヴァンダラー」の演奏をまだ聴いたことがない方に向けて、音楽的な魅力や特長を聞かせてください。

魅力を自ら語ることは難しいですが、ヒントになるかもしれないことが3つ挙げられます。
1つ目は「リーダーを置いていないこと」、言い換えれば「3人のリーダーがいること」です。
2つ目は、私たちが「ソリスト的に」演奏するか、「室内楽的に」演奏するかは、その音楽次第であるという点です。モーツァルトの協奏曲をブラームスの協奏曲のように弾くことは許されないのと同じように、3つのソロパートの集合体のようなトリオの演奏を目指してはいけません。演奏家というものは、ベストを尽くしてその時演奏している音楽に奉仕するのが本分であり、それぞれの曲目に応じた「正しい道」を見つけなければなりません。
最後に、私たち3人が若い頃に、偉大なピアニストであるレオン・フライシャーのマスタークラスを受けた時の教えを原点にしていることです。彼は「音楽家にとって最も大切なのは経験を積むことである」と言いました。結成30年を迎えた私たちが、彼の教えに少しでも近づけたなら光栄なことです。

今回は名曲揃いの魅力的なプログラムですが、どのような意図でこの3曲を構成されましたか?各曲の聴きどころを教えてください。

今回のプログラムは、1つのテーマで貫かれているというよりも、ピアノ三重奏曲のレパートリーの3つの異なる視座を1つのコンサートで楽しんでいただけるように考えました。
ベートーヴェンは、3つの楽器が対等に扱われるピアノ・トリオの様式を確立した作曲家です。第4番作品11「街の歌」では、ヴァイオリンのパートは元来クラリネットのために作曲されましたが、3つの楽器のバランスは完璧なものです。
アレンスキーは知名度こそ高くはありませんが、第1番のトリオは大変にロマンティックで情熱的であり、ときにラフマニノフを想起させます。ロシアの室内楽作品の中でも「宝石」というべき最高傑作の一つです。
シューベルトの第2番(D. 929)は、私たちトリオのお気に入りの曲です。シューベルトが生涯を通じてモチーフにし、我々のグループ名でもある「ヴァンダラー=さすらい人」のコンセプトに近いものを持っているからです。終わりなき「さすらい」の中に、人間の強さと弱さなど魂のすべての面が表現されています。
「名曲」とは、感情を描き出す力が一般的な曲よりも優れていて、作曲技法においても非の打ち所のないものです。しかし、だからと言って、唯一の「正しい鑑賞法」があるわけではないと考えています。私たちは、「この曲はこういう聴き方をして欲しい」ということは申し上げません。音楽を聴くことはプライベートなもので、自分の聴き方で楽しむべきだと思っていますし、むしろ先入観を持たずに聴いて欲しいです。

結成30年を超えた円熟のグループとして、今後の目標をお聞かせください。

私たちのグループ名(ヴァンダラー=さすらい人)のように、「計画を持たないのが私たちの計画」です。引き続き前に進み続けること、そして未発見の新しい音楽的境地を探してゆくこと、それに尽きます。

チェンバーミュージック・ガーデンに来られるお客様へのメッセージをお願いします。

日本を代表するクラシックの殿堂であるサントリーホールでの素晴らしいフェスティバルで演奏させていただくことを大変に楽しみにしています。この経験を通じて、日本の音楽界について、私たちがこれまで知らなかった新しい視野を広めることができれば幸せです。

(翻訳:ムジカテミス)

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