サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン

デビュー30周年記念 竹澤恭子の室内楽

チェンバーミュージック・ガーデンならではの「室内楽プログラム」を竹澤さんのデビュー30周年コンサートとして開催することになりましたが、リサイタル・プログラムとの違いや魅力をどのように感じていますか?

この度は、今まで何度も出演してご縁のあったチェンバーミュージック・ガーデン(CMG)シリーズで、「デビュー30周年」と銘打ったコンサートに出演できることは本当に嬉しく、感謝の気持ちでいっぱいです。いつもCMGのコンサートでは、素晴らしいベテランのアーティストの方々、そして若くフレッシュなアーティストの皆さまと共演することを楽しみにしていますし、これがシリーズの特徴でもあると思います。この特徴を生かしつつ、また30周年を記念して、私自身の今までの歩み、積み上げてきたものが発揮出来るような、バラエティ豊かなプログラムを組みました。前半は桐朋学園時代の同級生で友人でもあるヴィオリストの川本嘉子さんや、才能溢れる若手チェリスト横坂源さんとのデュオ、後半はサントリーホール室内楽アカデミー選抜フェローのアミクス弦楽四重奏団による演奏、そして最後に、川本さん、横坂さん、アカデミーメンバーの方々を交えての弦楽五重奏という、それぞれのアンサンブルを存分に味わえる、楽しめるプログラムになったと思います。

リサイタル・プログラムと、室内楽プログラムの違いについては、リサイタル・プログラムは無伴奏でない限り一般的にピアニストと共演し、基本的には室内楽における一つの編成という認識ですが、室内楽プログラムは、アンサンブルの形もデュオから時にはチェンバーオーケストラという風にサイズも楽器組み合わせも種々様々になり、レパートリーも膨大でバラエティ豊かに幅広く楽しめると思います。20周年にはブラームスのソナタ全曲リサイタルをこのサントリーホールで演奏しましたが、この30周年記念には室内楽コンサートとして、弦楽器同士のデュオやクインテットというアンサンブルを演奏できるので、近年積極的に取り組んで来て大好きな分野である室内楽の魅力をお届け出来ればと思っています。

  • 小山実稚恵(ピアノ)、堤剛(チェロ)と共演(CMG 2017)

前半の二重奏、特にコレッリは特別なアレンジが施された珍しい作品ですが、曲を見つけた経緯や、聴きどころを教えてください。

この曲は、私がヴァイオリンを始めたスズキメソードの教本の課題曲として、スズキメソードの創始者である鈴木鎮一先生が編集し、5歳くらいの時に勉強した曲でした。幼い私にとっては、もともとイベリア半島の舞曲だったというこの曲のテーマが、荘厳で威厳のある音楽に感じられました。ヴァリエーションとして色々な形で表現されていくこの曲を演奏するのは、チャレンジでしたがとても好きな曲でした。そして、昨年スズキメソードより、鈴木先生の愛弟子でもあった豊田耕児先生がヴァイオリンとヴィオラに編曲された版があることを知らされたことをきっかけに、再びこの曲と出会うことになりました。豊田先生はヴィオラも演奏されるので、このアレンジメントを考えられたことと思いますが、ヴァイオリンとヴィオラへのアレンジメントは大変珍しいです。この曲のテーマは、イタリアで大流行し多くの作曲家が手がけましたが、それぞれの変奏がヴァイオリンとヴィオラによってどのように絡み合い、展開して盛り上げていくのか、弦楽器同士の響き合いなどもあわせてお聴きいただければと思います。

  • 児玉桃(ピアノ)、アカデミー生と共演(CMG 2015)

メインとなるメンデルスゾーンのクインテットは、第1ヴァイオリンが大活躍する作品ですが、その聴きどころもお伺いできますか?

メンデルスゾーンは、ヴァイオリンのレパートリーの中で最もポピュラーであるホ短調のコンチェルトがあるので、避けては通れない作曲家といっても過言ではありませんが、室内楽でもピアノ・トリオや八重奏曲などの名作があり、とても好きな作曲家です。この弦楽五重奏曲第2番との出会いは、むしろ最近のことで、私が2年前に出演したアメリカのサラトガ音楽祭で初めて演奏しました。彼が亡くなる2年前の36歳のときに書かれた晩年の作品ですが、16歳の時に書かれた八重奏曲やその後に書かれた「真夏の夜の夢」を彷彿とさせるような若々しいフレッシュなエネルギー、躍動感に溢れ、魅力的で美しい旋律、哀愁を帯びた第3楽章など、メンデルスゾーンの魅力がたっぷり注ぎ込まれたヴィルトゥオーソ性が高くて聴き応えのある作品で、まさにCMGにふさわしいと思いました。八重奏曲と同様に、第1ヴァイオリンが活躍する曲でもありますが、それぞれの奏者がこの曲の持つエネルギーや各楽章のキャラクターを感じ合えることが大事になってきます。

  • 室内楽アカデミーでの指導(2015年)

メンデルスゾーンで、室内楽アカデミーの若い奏者たち一緒に演奏することについて、その期待をお聞かせください。

アカデミー選抜メンバーの演奏は、3月に参加した室内楽アカデミーのマスタークラスの折に聴き、それぞれが真摯な姿勢で音楽に取り組んでいることを、とても頼もしく思いました。そしてこの度、メンデルスゾーンでご一緒すること、この作品の持つ快活で生き生きとした生命力溢れる音楽を、メンバーの方々のフレッシュなエネルギーからも刺激を受けて演奏することができればと、とても楽しみにしています。

デビュー20周年リサイタルも、ここサントリーホールで開催されました。この10年の振り返りと、このデビュー30周年をきっかけに、今後の竹澤さんの音楽活動における新しい目標をお聞かせください。

20周年をサントリーホールで演奏してからの10年間、音楽家としての自分の可能性を広げるべく、色々なことにチャレンジしてきました。それは、長年の拠点だったニューヨークから、新たなる刺激を求めるべくアメリカからヨーロッパへ、フランスはパリに移住し、より幅広いレパートリーを求めて、日本はもとより、フランス、アメリカ、韓国、香港など、大好きな室内楽の音楽祭に機会があれば積極的に参加してきました。また、水戸室内管弦楽団やサイトウ・キネン・オーケストラなど、自分にとっての未体験ゾーンであるオーケストラ・メンバーにもチャレンジしました。これらの経験は、自分にとって確実に新たな一面を加えてくれたのではと思います。今後は、この節目を通して、またここからがスタートという気持ちで、今までやってみたかったと思う企画にできる限り挑戦していきたいと思います。その一つとしては、今までの経験を生かして音楽家の息づかいが間近に感じられる様な空間で、世界各国にて今まで知り合った音楽仲間たちや、日本の若手奏者の方々を交えて室内楽を中心とした音楽祭ができれば素敵だなと思っています。また、バッハの無伴奏や、新しいコンチェルトの委嘱なども興味がありますし、ベートーヴェンの弦楽トリオやピアノ・トリオなどの全曲チャンレンジもやってみたいです。

  • 竹澤恭子デビュー・リサイタル(1988年11月)

  • 竹澤恭子20周年ヴァイオリン・リサイタル(2009年12月)

最後に、CMGに来場するお客様へのメッセージをお願いします。

  • 川本嘉子(ヴィオラ)、堤剛(チェロ)、吉田秀(コントラバス)、亀井良信(クラリネット)、福士マリ子(ファゴット)、福川伸陽(ホルン)と共演(CMG 2017)

ここサントリーホールは私の音楽人生にとって、最初のデビュー・リサイタルを始めとして、20周年、そして30周年と節目のコンサートで演奏し、常に音楽家としての自分を問いかけられる、かけがえの無い大切な空間です。この度は、30周年記念コンサートを自分の大好きな室内楽で演奏させていただけること、本当に嬉しく、同級生であり友人であり、同じ音楽仲間としてとても尊敬している川本嘉子さんや、今回初共演になりますが、素晴らしいチェリストの横坂源さんとの共演、そして、最後の五重奏ではアカデミーの若手メンバーの方々も加わっての共演、今からとっても楽しみです。聴き応えのあるプログラムで、皆さまにも楽しんでいただけることと思います。

  • 川本嘉子(ヴィオラ)、堤剛(チェロ)、吉田秀(コントラバス)、亀井良信(クラリネット)、福士マリ子(ファゴット)、福川伸陽(ホルン)と共演(CMG 2017)

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