サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン
「プレシャス 1pm Vol. 2 ドビュッシーと反好事家八分音符氏(ムッシュー・クロッシュ・アンティディレッタント)」

児玉桃(ピアノ)が語るドビュッシーの多彩な魅力

今年はドビュッシー(1862~1918)の没後100年ということで、音楽に朗読を交えたコンサートを企画しました。とっつきにくい作曲家だと思われることもありますが、そんなことはありません。「月の光」や「亜麻色の髪の乙女」は、ドビュッシーだと知らずに聴いている人がいるかもしれませんが、ポピュラーな曲がたくさんあります。ロマンティックなショパンの影響を受けたこともあり、そしてワーグナーにも惹かれたこともありますが、作品全体を見渡せば若いときから亡くなるまで、その音楽や作風は常に発展していました。

ドビュッシーは19世紀後半から20世紀初めに生き、格式ばったことが嫌いで、愛国心がとても強く自国フランスならではの音楽にこだわりを持っていました。パリ音楽院で学んだアカデミックな土台があり、若くして独自の世界観を持ち、特に風や雨の音など、自然のリズムに基づいた作曲をしました。風の音を聞けば、たくさん本を読むよりも世界のニュースを教えてくれるという感性の持ち主でした。従来の音楽から自由で独立していたいという意志を強く持ち、音楽の伝統的なルールを壊したことで、現代にも大きな影響を残しています。ドビュッシーは煌びやかなものよりも、当時からサロン風の音楽会を催すなど、気楽な雰囲気が好きだったのですが、そういう意味でも、今回演奏するブルーローズ(小ホール)は、とても素晴らしい会場です。

ドビュッシーは私が大好きな作曲家で、ピアノのソロ曲は全て演奏したことがありますが、そんなドビュッシーを通じて音楽以外のジャンルの朗読の方とご一緒するのは今回が初めてです。言葉と音楽を一緒のステージで行うことは、お互いの邪魔になってしまうこともありますが、ドビュッシーは興味深い執筆を数多く残していて、その書簡や評論を曲間の朗読で紹介していくことで、作曲家の本質に様々な側面から近づくことができると思います。 

  • 2018年3月25日 ラ・ベルヴィロワーズ(パリ)におけるドビュッシー・プロジェクト
    出演:Pascal Rénéric(俳優)、児玉桃(ピアノ)、Josep-Ramon Olivé(バリトン)

2018年3月25日 ラ・ベルヴィロワーズ(パリ)におけるドビュッシー・プロジェクト
出演:Pascal Rénéric(俳優)、児玉桃(ピアノ)、Josep-Ramon Olivé(バリトン)

ドビュッシーが亡くなった3月25日、今年はパリで、歌とピアノ・ソロに役者を招いた演奏会を行いました。ちょうど100年前に亡くなった命日なので、当時パリで流行っていた「スピリティズム(降霊)」を取り入れたステージとなりましたが、今回の日本でのコンサートは、パリとは違った構成です。晩年のチェロ・ソナタや、ヴァイオリン・ソナタなどの名作も取り上げ、若い弦楽器の素晴らしい方と一緒に演奏します。そして実は、コンサートで歌曲の伴奏をするのは、パリやCMGで行うこのドビュッシーのプロジェクトが初めてのことです。今回はバリトンにあっている曲をセレクトし、様々な作品を一つのコンサートに組み込むことで、コンテクストの中でそれぞれの個性が浮き出てくると思います。歌の詩で引用するテキストは面白く、有名なボードレールのものを使うこともあれば、14~16世紀の詩人のものを自ら見つけてくることもあります。有名や無名を問わず積極的に詩を音楽に採用するのがドビュッシーらしさです。

ドビュッシーが生きていた時代は、パリが最も興隆していました。音楽家をはじめ、画家、作家などの芸術家が交じり合い、新たな機械が次々に発明されるなど、パリでは色々なことが起きていました。とても優雅で活気があって、気品のあふれたところと、賑々しいところがあり、芸術的にも特別な時期でした。ドビュッシー自身が影響を受けたり反発したりする中で、素晴らしい時代や街の香り、エレガントでユーモラス、そして詩的な世界を、1時間のコンサートにまとめたいと思っています。

2018年3月25日 ラ・ベルヴィロワーズ(パリ)におけるドビュッシー・プロジェクト
出演:Pascal Rénéric(俳優)、児玉桃(ピアノ)、Josep-Ramon Olivé(バリトン)

*ラ・ベルヴィロワーズ(パリ)におけるドビュッシー・プロジェクト(2018年3月25日)
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