アジアンサンブル@TOKYO

プログラム・ノート

オヤマダ アツシ


モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲第1番 ト長調 K. 423

 自らもヴァイオリンやヴィオラを演奏したと伝えられるヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~91)。その2つの楽器によるデュオは、彼にとって一人二役のようなものだったろう。曲が誕生したのは1783年、彼が27歳のとき。当時、ザルツブルクの宮廷や教会において要職を務めていたミヒャエル・ハイドン(1737~1806)が急病のため、本来なら彼が作曲すべきだった二重奏曲(2曲)を、モーツァルトが影武者となって(M. ハイドンの作風を真似て)作ったというエピソードが残されている。曲は3つの楽章(急・緩・急)で構成されており、対位法の妙から生まれる楽器の対話を聴くことができる。


ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調

 モーリス・ラヴェル(1875~1937)にとって、数少ない室内楽曲のひとつである弦楽四重奏曲。伝統的な4楽章形式(急・急・緩・急)という構成をとる中、多彩な香りがするハーモニーと精緻な対位法によって存在感を高めている。1902年から翌03年にかけて作曲され、1904年にパリで初演されたが、その後に改稿されて現在の形となった。作曲時の彼は、フランスの作曲家にとって登竜門だったローマ賞へ挑戦し続けており(結果的には獲得できずに終わった)、新進作曲家として注目が集まり始めていた頃。初演後に賛否両論を巻き起こしたこの曲は、急進的な芸術グループ「アパッシュ」の中心メンバーだったラヴェルにとって有効な一打だったのかもしれない。


メンデルスゾーン:ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲 ニ短調

 モーツァルト同様に少年時代より音楽の才能を発揮し、早くも10代で多くの充実した作品を残しているフェリックス・メンデルスゾーン(1809~47)。1823年5月、つまり彼が14歳のときに完成したこの二重協奏曲もそうした傑作のひとつであり、ベルリンの自宅で行われていたサロン・コンサートで発表されたと伝えられている。曲は3つの楽章で構成されており、大規模な第1楽章が演奏時間のおよそ半分を占める。穏やかな歌謡楽章である第2楽章、力強さと躍動美にあふれている第3楽章と続くが、作風の背景にモーツァルトの影を感じさせながらも、オリジナリティを確立しているといえるだろう。

(おやまだ あつし・音楽ライター)

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