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【作曲ノート】

野平一郎:触知できない領域 ~チェロとピアノのための~ (2016)
サントリーホール委嘱・世界初演  ―堤剛プロデュース2016 (6/4)-

野平一郎

すぐ理解できる音楽、一回聴いてすべてが把握できてしまうような音楽は、私にとっては「底の浅い」「つまらない」音楽だ。
音も、これがハ音、それがニ音と、すぐに聴音できてしまうものにはわたしにとって価値がない。人間の知覚に挑戦するような音楽、これが理想型。形式は迷路のよう。すべてのカテゴリーを排しながら進んで行く。
全体は2楽章からなる。静と動の極端な対比からなる最初の楽章の主要な動きは、チェロが超高音域のトレモロで次第に下行してくるもの。ピアノはソステヌート・ペダルの共鳴を利用して響きは常に不安定なままである。
第2楽章は、機械的で規則的なパルス、いくつかの単純なリズム音型に支えられている。螺旋の形式と言えるだろうか。ある方向性への展開が終わると最初の状況へとリセットされ、別の異なった展開の方向性へと再び別の円を描いて行く。「展開」と書いたがそれは名ばかりで、デジタルなリズムへの虚無的な感情があるだけである。リズムはここでは演奏する人間の持つエネルギーを利用してはいるが、単にデジタルな突拍子もない変化として現われるだけである。
堤剛先生とは古典音楽を中心に、もう何度も共演させていただいているが、その年齢を感じさせない若々しくみずみずしい音楽、先生の新しい作品への情熱を支えに書き進めた。この場所を借りて大いなる尊敬と感謝を捧げる。





公演情報詳細はこちら    堤剛プロデュース2016 6/4(土)18時開演

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