熱中症の原因とは?起こりやすい条件となりやすい人、企業の対策事例を紹介

近年の夏は猛暑日が続き、連日「屋外での作業や激しい運動、スポーツは控えるように」というアナウンスがされています。しかし、建設業や製造業、運送業、警備業など屋外での作業が避けられない仕事に従事している方々もいます。また、熱中症は条件によっては屋内や真冬でも起こり得ます。熱中症を予防し、死傷事故を防ぐためには熱中症についてよく知る必要があります。
この記事では、企業の経営者や役員、総務担当者など社内の熱中症対策について課題があると感じている方々に向け、熱中症の原因やメカニズム、起こりやすい条件、なりやすい人ほか、熱中症予防に役立つ情報を紹介します。

熱中症の原因と発症のしくみ

熱中症はどのようにして起こるのか、また、そのメカニズムとどのくらいの体温のときは医療機関を受診したほうがいいのかの目安を紹介します。

体内で起きていること

<イメージ図>熱中症の原因(体温上昇、水分喪失、塩分喪失)

熱中症は体内で「水分喪失(脱水)」「体温上昇」「塩分喪失」のいずれかが起きているとき、またはそれらの組み合わせで発症する病気の総称です。

例えば、大量の発汗により体内の水分・塩分が不足し適切に水分・塩分の摂取が行われない場合、めまいや脱水症、熱けいれんなどが起こります。また、周囲の気温が非常に高い場合や、厚手の防護服、着ぐるみなどの着用、肥満などが要因となり体内の熱が逃げにくくなると体温が上昇し、熱射病や多臓器不全へとつながります。

以前は、汗がとまるのは体の水分が失われた後で、体温上昇は体温調整が効かなくなってから起こると考えられていました。しかし、近年の気温上昇に伴って、汗がとまる前から体温上昇が起こり、重篤な熱中症が発症する事例が増加しています。予防のためには水分・塩分補給にプラスして、体温チェックを行うことも重要です。

熱中症が起こるしくみ

人が通常、運動や仕事中の作業などで体を動かすと体の中で熱が生まれます。体には体温調節機能が備わっているため、汗をかいたり体の表面から熱を逃がしたりすることで熱を下げる作用がはたらきます。この体温調節機能によって通常は体温が36℃~37℃に保たれています。

しかし、気温や湿度が高い中で長時間にわたって体を動かし、大量に汗をかいて体内の水分や塩分が失われると体温を下げる機能が追いつかなくなり、体内に熱がこもるようになります。それによって体温が異常に上昇して熱中症が起こるのです。

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【 環境・作業状況・人】熱中症が起こりやすい条件とは?

暑いという理由だけで熱中症になるわけではありません。真冬でも条件次第で熱中症が起こることはあります。
以下の3つ、「環境」「作業状況」「人」の要因が関連し合って起こることをよく理解しておく必要があります。

1.環境

高温・多湿
輻射熱(照り返し)
無風
急激な気温上昇
窓を閉め切った屋内
エアコンのない部屋

2.作業状況

負担の大きい作業
慣れない作業
長時間の屋外作業
不十分な休憩
水分補給できない状況
通気性の悪い衣服・保護具

3.人

熱への順化ができていない
疲労や寝不足による体調不良
風邪などによる感染症
下痢や二日酔い
糖尿病など持病がある

熱中症になりやすい人とは?癖になることはある?

条件がそろえば誰でも熱中症を発症する可能性がありますが、特に注意が必要な人もいます。企業で熱中症対策をする場合はどのような人が熱中症になりやすいのか、よく知って配慮することが重要です。

高齢者や乳幼児、肥満の人は特に注意を

熱中症を発症するかどうかはその日の気温や湿度だけでなく、個々人の体調や健康状態も関係します。日頃、体力に自信のある人でも、寝不足や風邪を引いた後などは発症のリスクも高まります。
また、高齢者や持病のある人など以下に紹介した方々は、体温調節機能が不調になりやすいため熱中症になりやすいといえます。

・高齢者…体温調節機能が加齢により衰えており体温が上がりやすい、暑さを自覚しにくい
・乳幼児…体温調節機能の未熟により体温が上がりやすい、身長が低いため照り返しの影響を受けやすい
・肥満の人…皮下脂肪によって熱を逃がしにくくなるため、気温が低くても体を動かすと熱中症が生じやすい
・持病がある人…持病が体温調節機能の乱れる原因になることがある、服用している薬が汗の抑制や利尿作用のある場合は影響を受けることもある

熱中症は癖になることはないが暑さに慣れることが大切

熱中症に一度なると以後、癖になるのではないかと心配する方もいるかもしれません。癖になることはないといわれていますが、回復後は無理をしないことも重要です。治ったと思ってすぐに暑いところで活動を再開すると、症状が再び出る場合もあります。また、体を動かさずにエアコンの効いた室内や職場で一日過ごしている場合は体が暑さに慣れていない可能性があります。適度に運動し、湯船につかるなどして汗をかく工夫も必要です。

暑さに慣れることを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といいます。暑さに慣れていない体は体温調節がうまくできません。本格的な夏を迎える前、梅雨から初夏にかけて熱中症が起こりやすくなるのは体が暑さに慣れていないためです。屋外の作業などで、初日に熱中症が起こりやすいのも熱への順化ができていないからだといえます。

熱中症予防になぜ塩分が必要なのか?

熱中症を予防するためには暑さを避ける、服装を工夫する、こまめな水分補給などが必要だといわれています。ここからは水分補給をする際に重要な観点を紹介します。

知らないうちに体から2500mlの水分が消失

人間の体から出ていく水分量は1日に2500ml!
そう聞いてびっくりする方も多いのではないでしょうか。内訳は、尿や便として排出される水分が1600ml程度、皮膚や呼吸から蒸発する水分が900ml程度なのだとか。

食事から得られる水分と体内でつくられる水分量はあわせて1300ml程度なので、残りの1200mlは、飲み物として口から摂取するしかありません。

水分補給の際は塩分が必要

暑い日に屋外作業などで大量の汗をかくと水分と一緒に体内の塩分・ミネラルも失われます。このとき、水分補給が水だけで行われると熱中症の悪化につながることもあります。

人間の体は、自分の体に最適な量の水分、さらに、その水分が最適な濃度の塩分・ミネラルを含んでいるように保とうという働きを常に行っています。汗などによって水分が不足したとき、水分だけ、あるいはお茶やコーヒーなどの塩分・ミネラルを含まない水分を補給するのはよくありません。血液中の塩分・ミネラル濃度がさらに低くなってしまい、かえって熱中症を発症させたり悪化させたりという結果につながる可能性があります。

熱中症対策においては、水分と塩分・ミネラルの補給が重要だと心得てください。

熱中症予防で大切な水分補給のポイント

熱中症予防のために心得ておきたいポイントは以下の3つです。

1.あらかじめ水分補給をする(ウォーターローディング)

熱中症の症状が出てから水分と塩分・ミネラルを補給しても間に合いません。体が不足した水分、塩分・ミネラルを吸収するにはある程度の時間が必要だからです。症状が出る前にあらかじめ補給しておくことが大切です。

2.利尿作用のあるカフェイン含有飲料はとらない

塩分・ミネラルを含まない飲料によって水分を補給しても熱中症対策にはつながりません。また、カフェイン含有飲料は利尿作用があるため体の水分をさらに奪ってしまいます。

3.仕事の後のアルコールも利尿作用があるため水分補給とは考えない

アルコール飲料も利尿作用があるため熱中症対策としての水分補給には当たりません。アルコール飲料をおいしく飲むために、仕事中の水分補給を我慢することがないように注意喚起を!

【法人専用熱中症対策サービス】企業の導入事例を紹介

職場での熱中症災害の発生件数は年々減少しているものの、死亡災害の発生数は依然として減少していません。建設業や運送業、警備業など炎天下での事例だけでなく、パン工場や小売店での軽作業、工場内での溶接作業などさまざまな職場で起きています。

当社では、企業の熱中症対策に寄与するため自販機を活用した「法人専用熱中症対策サービス」を実施しています。


〈サービス内容〉
01. プロ仕様の熱中症対策飲料「DAKARA PRO
・法人専用の熱中症対策飲料
・発汗時に失われる塩分と鉄分を補給できる仕様に設計
・ゼロカロリーで無果汁

02. 飲料配布をソリューション
・自販機を活用した熱中症対策サービス
・従業員が専用カードで飲料を取り出せる
・利用状況をデータで確認できる

03. 従業員への安全教育をサポート
・従業員への安全教育を全面サポート
・セミナーのコース、所要時間、開催形式、開催場所はカスタマイズが可能

導入事例株式会社竹中工務店様

これまではジャグタンクで飲料を配布していましたが、コロナ禍以降、サントリーの自販機での運用に変更しました。自販機はジャグタンクのように作成・管理・運搬や配布の手間もなく、いつでも冷えた飲料を提供できるので助かっています。作業員さんには朝礼前や休憩時間など、一日に何回も利用してもらっています。

導入事例山九株式会社 千葉支店様

サントリーの熱中症対策オンラインセミナーは内容も分かりやすく、講師の方と直接お話しができるので、現場からも非常に好評です。拠点が点在していてもオンラインで対応してもらえるので、担当者としても助かります。空き時間に気軽に参加できるので、これまでよりも参加者の数が増加しました。

まとめ

熱中症は体内で「水分喪失」「塩分喪失」「体温上昇」のいずれか、またはそれらの組み合わせが生じたときに発症する病気の総称です。熱中症は気温が高く、湿度が高い条件下でだけ発症するのではありません。そうした環境下で負担の大きい作業をしたり、作業する人の側が体調不良だったりなど環境、作業状況、人の3つが関連し合って起こります。熱中症を予防するためにはただ水分を補給すればいいのではなく、汗で消失した塩分・ミネラルも同時に摂取することが大切だとされています。建設業や製造業、運送業、警備業など屋外での作業が避けられない業種においては、企業の側が社員の命を守るための対策を積極的に導入することが重要です。

監修ドクター紹介

田中 完(たなか・ひろし)先生

KOMET産業医センター 統括指導医
株式会社 HJ Link-do 代表取締役
医療法人 Link-do 総長

名古屋徳洲会総合病院・救急総合診療科勤務、製鉄会社専属産業医を経て2022年実践的産業医育成を行う神栖産業医トレーニングセンターを開設。2023年に小規模事業所にも手厚い産業保健サービスを提供することを目的に産業医DX、産業医支援(SaaS)を提供する株式会社を設立。
製鉄会社産業医のころより熱中症対策に力を入れ、2016年以降中央労働災害防止協会・熱中症予防対策の講師を務める。その他、熱中症対策ウエアラブル装置のベンチャー企業のアドバイザーを兼務。