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サントリーが初めて解明したケルセチン配糖体の体脂肪低減効果

ケルセチンの吸収を向上させた“配糖体”というカタチ

ケルセチンは玉ねぎやブロッコリー、リンゴなどにも含まれているポリフェノールの一種で、古くはビタミンPなどとも呼ばれていました。もちろん今の科学の定義では、ビタミンではありませんが、それだけ体の健康維持には不可欠な要素だとされていたのでしょう。私自身、血管や血液を健康にする効果があるのではないかと以前から注目していました。

しかし、ケルセチンは水に溶けにくい性質を持っているため、飲料での提供が難しく、また人間の体内では吸収されづらいという問題がありました。そこで研究を進めた結果、ケルセチンを糖と組み合わせて「ケルセチン配糖体」という形にすると水溶性が向上し、飲料適性もアップし、体内への吸収効果が高まることがわかりました。

前任者からケルセチンには脂肪を分解する活性がありそうだという情報を引き継いでいた私の役目は、本当に脂肪低減効果があるのかを検証し、そのメカニズムを解明すること。もともと先行研究で、細胞にケルセチンを振りかけると脂肪が分解するということまではわかっていたのですが、ケルセチンがどの分子に作用してどうやって脂肪の分解を引き起こすのかまでは、完全には解明されていなかったからです。

まるでパズルの抜け落ちたピースを探し、穴を埋めていくような作業を行い、ついにケルセチンが脂肪組織に届くと脂肪分解酵素であるホルモン感受性リパーゼが活性化され、脂肪が分解されるというメカニズムを明らかにすることができました。ケルセチンという素材自体は既知のものですが、その体脂肪低減効果のメカニズムを解明したのはサントリーが世界初です。

ケルセチン配糖体は体内に吸収された後、脂肪分解酵素を活性化する

ケルセチン配糖体を使った飲料でトクホ申請するための準備が本格的に始まりました。トクホの申請において、最も大事なのは安全性試験のデータとヒトでの有効性の証明です。
人がその商品を摂取することで、安全、かつ確実に効果を得られることを示さなくてはなりません。また、それだけではなくメカニズムの解明も必要です。

メカニズムを解明することで消費者に届くワンメッセージ

「脂肪分解酵素を活性化させるケルセチン配糖体」のヘルスクレーム

特茶の場合なら、安全性と有効性が証明されていれば「体脂肪を減らす」というヘルスクレーム(※注1)までは表示できますが、その作用メカニズムを解明しないと「脂肪分解酵素を活性化させるケルセチン配糖体配合」とは表示できなくなってしまうからです。それが言えないということは、「丸太はそのままでは燃えにくい。だから“分解”。体脂肪も同じこと」というコピーも使えなくなってしまうのです。

つまり、メカニズムを解明するという仕事には、取得した科学的エビデンスを“ヘルスクレーム”に変換し、広告などでしっかりとしたメッセージとして消費者に正しく伝えるという役割もあるのです。「バラ、バラ、バラ」というコピーをはじめ、シュレッダーや薪割りといったものに象徴される“分解”というキーメッセージの裏付けを取るのが私の仕事だったわけです。

こうしたワンメッセージをお客様に届けるのに非常に長けているのが、当社の強みのひとつ。難しい研究の成果や複雑な科学的根拠などをわかりやすく適切な言葉に翻訳してみせる能力があったからこそ、特茶は多くの方に受け入れられたのだと思います。

※注1 ヘルスクレームとは「健康強調表示」のこと。トクホ商品、あるいはそこに含まれる成分をとることで健康にいい影響があると示唆する表示のことを言います。日本では消費者庁と食品安全委員会の審査が必要です。

商品として世に出せたのが何よりの喜び

私は製薬会社からサントリーに転職して以来、ずっと健康科学研究所に所属しています。医薬品の場合、研究開発に携わったとしても、実際に医薬品として世に出るのは10年、20年後になってしまうため、最初から最後まで見届けるということは難しい。

今、担当しているサプリメントにしても世に出るまでには時間がかなりかかりますし、通販なので実際に購入されているお客様の顔を見たり、接したりする機会はあまり多くありません。

でも、特茶ならスーパーやコンビニでお客様が商品を手にしているところを見ることができます。その瞬間の喜びは本当に格別なもの。自分が関わった商品がお店に陳列され、実際に売れていくということも嬉しいですが、商品を世に出すことができたこと自体が一番の喜びなんです。

そういう意味で、特茶開発にプロジェクトメンバーとして名を連ね、商品が世に出るところを目の当たりにできたのは本当にラッキーだったと思います。取り組んでいる研究が全て商品化に結びつくとは限りませんから。

このプロジェクトは、チームのリーダーがケルセチンという素材の可能性を見込んで大きく戦略を立て、メンバーみんながそれを実現するために気概を持って研究開発に取り組んだからこそ実現できたものだと思います。

私がメインになって担当したのはトクホの申請まででしたが、本当に大変だったのは申請後の厳しい審査対応を長い時間かけて乗り越えた人たちです。そして、壁にぶち当たったときでも最後までやらせてほしいと願う研究開発者の想いを許容してくれる風土がサントリーにあるからこそ、粘ることができたのだと思います。

  • 第1章 原点
  • 第2章 挑戦
  • 第3章 発見
  • 第4章 探究-1
  • 第4章 探究-2
  • 第4章 探究-3
  • 第5章 創造
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