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サントリー地域文化賞

活動詳細

中国

鳥取県 米子市 2018年受賞

むきばんだ応援団
遺跡の保存運動および啓発普及活動を一貫して担う

代表:坂田 友宏 氏

2018年10月更新

活動紹介動画(01:58)
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むきばんだ応援団

 鳥取県の西部にある大山は霊峰として名高いが、その山麓に古墳時代、白鳳時代の遺跡があることもかねてより知られていた。1995年、リゾート開発計画によるゴルフ場の建設にともなう発掘調査で、900もの建物跡のある152haに及ぶ国内最大級の弥生遺跡(1700~2000年前)が発見された。

 1997年、この「妻木晩田遺跡」に、山陰に特徴的な「四隅突出型墳丘墓」が多数あることが報じられると、地域住民、考古学研究者から遺跡の保存を求める声が大きくなった。市民の団体が保存の署名を集め、文化庁も保存すべきとの意向を県に伝えるなど後押ししたが、開発計画は県の誘致事業であったため、保存の結論は先送りにされてきた。

 1999年2月、保存活動を展開してきた市民団体、全国の考古学者・文化人、地元経済界などが発起人となり「むきばんだ応援団」が結成された。応援団は、保存を要望するだけでなく、自分達も協力しようということで、募金を全国によびかけ、保存活動を具体的な行動で盛り上げた。こうした活動が功を奏したか、4月に県は一転、保存・活用を決定した。

 保存決定後の応援団は、東京・大阪・鳥取でフォーラムを開催し、複数の考古学者による妻木晩田遺跡の学術的な意義の検証や、遺跡活用の方策の提言を おこなった。また、地域住民の関心を喚起し、理解を促進するために、市民講座「むきばんだやよい塾」、植物観察会「むきばんだを歩く会」を発足させ、現在に至るまで毎月1度開催している。「むきばんだやよい塾」(現在第19期開催中)には、奈良文化財研究所、大阪府立弥生文化博物館、福岡県伊都国歴史博物館、明治大学などから研究者が講師として招かれ、研究者たちの同遺跡への理解促進にもつながっている。さらに、やよい塾の受講者の有志によって「妻木晩田遺跡ボランティアガイドの会」が発足し、今日までその中核を担っている。そのほか、機関紙「やよい塾通信」「応援団通信」の発行、様々なイベントの開催、鳥取島根両県の市民団体による「山陰遺跡ネットワーク会議」も結成し活動をリードしている。

現在、遺跡は「県立むきばんだ史跡公園」として公開されているが、今後の調査や活用についての定期的な会合は、応援団、ボランティア団体なども参画して行われている。保存決定前から今日まで一貫して、考古学者だけでなく多くの市民たちが参画して遺跡を守り活用してきたことは他に例がない。遺跡の価値と魅力を周知させ、様々な活用法を提案し続けることを通じて、地域の文化と歴史の重さを次世代に伝える大切な活動と言える。

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