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サントリー地域文化賞

活動詳細

東北

秋田県 小坂町 2010年受賞

エコの文化が根づくまち 小坂
環境と文化が調和したエコ・タウンづくり

代表:細越 満 氏

2010年8月更新

活動紹介動画(1分24秒)
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写真
常設公演で賑わう康楽館

 秋田県の北東の端に位置する小坂町は、明治初期より鉱山城下町として経済的、文化的に発展した。鉱山は藩営、官営と経営主体を変え、1884(明治17)年に藤田組(現DOWAホールディングス)に 払い下げられ、日本でも有数の銀、黒鉱鉱山として長い間繁栄した。しかし資源の枯渇、昭和60年代の閉山の危機を経て、最盛期は3万人だった人口は5分の1まで減り、高齢化が進んでいる。小坂町は、町の生き残りをかけ「全ての基本はリサイクルにある」をコンセプトに、工業、農業、観光、文化等、様々な分野でリサイクル事業を積極的に展開した。現在では環境と共生する循環型都市「エコタウン」が小坂町民の誇りとなり、全国的にも特色ある町として注目されている。

 DOWAグループが環境、リサイクル事業に特化する中、小坂町はリサイクル関連企業や研究施設を積極的に誘致し、エコタウン化を推進した。また町民や行政の取り組みとして、バイオマスタウンをめざし、生ゴミの回収、大規模養豚団地の糞尿堆肥化施設を活用して堆肥化を行い、住民へ還元している。生産調整水田を利用して景観作物である菜の花の栽培、菜種の搾油、「菜々の油」として商品化、廃食用 油の回収による資源循環を行うなど、町民主体のエコタウン構想の実現を図っている。

 小坂鉱山の従業員用厚生施設であった「康楽館」、「鉱山事務所」等を保存し、観光資源として活用、アカシア並木の美しい道路を「明治百年通り」として整備するなど、面的な整備を進めている。今年100周年を迎える日本最古の木造芝居小屋である「康楽館」は洋風の外観と本格和風舞台を有する小坂町のシンボル的建造物である。一時は取り壊しの話もあったが、1986年に修復され、現在は春から秋までは大衆演劇の常設小屋として連日複数の公演が行われ、年に一度の松竹大歌舞伎も恒例となっている。 黒子による舞台施設見学も好評で個人旅行者だけでなく、修学旅行生等、数多くの観光客を受け入れ、修復後の総入場者は190万人を突破している。「康楽館友の会」という住民の組織が運営のサポートにあたっており、冬季には、地元の人達によるアマチュア演劇集団の公演と交流のための「北の演劇祭」、住民参加の芸能フェスティバル等にも利用され、小坂町の文化の核施設ともなっている。産業遺産を保存するだけでなく、積極的に活用し、成功している良い例といえるだろう。

 2003年には市民によるボランティア団体である「小坂町観光案内人協議会」と、明治百年通りをクリスマスローズで彩る「フラワーボランティアの会」が設立され、町民自らがエコタウンを掲げる町を応援しようという機運が生まれている。また2009年には環境教育旅行に焦点を当てた取り組みとしてリサイクル関連施設の案内をする「あきたエコタウンセンター案内人の会」が発足する等、地域をエコ・ミュージアムとして捉える活動も始まり、エコタウンは地域文化として根付き、進化し続けている。

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