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サントリー地域文化賞

活動詳細

北海道

北海道 壮瞥町 2007年受賞

昭和新山国際雪合戦
国内さらには海外にも愛好者を持つスポーツ雪合戦を創出

代表:松本 勉 氏

2007年8月更新

活動紹介動画(1:50)
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写真
昭和新山の麓での決勝戦

 むき出しの溶岩から噴煙が立ちのぼる昭和新山は、1943〜45年の有珠山の噴火に伴い、突然畑が隆起してできた活火山である。昭和新山国際雪合戦は、この火山の麓、洞爺湖の南岸に位置する壮瞥町で毎年2月の下旬に2日間開催される。ここで行われる雪合戦は、監督の指揮のもと、コートの上で選手たちが雪球を投げあうチーム対抗の競技で、壮瞥町の町民が作り上げたオリジナルのスポーツである。

 もともと壮瞥町は、春から秋は洞爺湖、昭和新山の観光や果物狩りでにぎわうが、冬は目玉と言えるものがなく、町民たちは何か人を集められるイベントを作れないかと考えていた。まず雪に目をつけたが、雪像作りや犬ぞりレースなど既にあるものの二番煎じでは目立たない。結局苦肉の策で行き着いたのが雪合戦だった。

 1987年、町内の有志が集まって、雪合戦のアイディア検討会を立ち上げた。現在の1チーム7人による3分×3セットマッチの原形を作り、雪球の数も一度に45個の球を作るたこ焼き器型の器具を考案し、同じ規格の球を量産できるようにした。ほかにも審判のやり方やコートの広さなど、様々なルールを決め、誰もが同じ条件で公平に戦えるスポーツとして整えていった。

  1989年に第1回大会を開催。第1回から70チームの募集に2倍近くの申し込みがあり、予想以上の反応があった。その人気は年々高まって、現在は壮瞥町の実行委員会のほかに北海道から九州まで国内20地域に雪合戦の連盟・協会もでき、各地で予選を行うまでになった。予選には約2500チームがエントリーするが、頂点を決める昭和新山の大会には150チームしか出場することができない。決勝は昭和新山を臨むコートでしか行われず、「雪合戦のウィンブルドン」とも評されており、そのために夏から練習を積むチームも現れるほどである。

 また当初から国際性を重視し、“Yukigassen”として海外でも普及活動を行っている。フィンランドとノルウェーには連盟ができ、ヨーロッパ大会も開催された。昭和新山の大会には第1回から現在までに50以上の国と地域の選手が参戦し、世界中の人が楽しめる国際スポーツ大会としての地位も築きつつある。

 このように国内外から多くの選手をひきつけるのは、競技としての面白さはもちろん、昭和新山国際雪合戦のローカルな魅力が大きな要素となっている。年間を通して準備を進める実行委員会は行政と民間が一体となった組織であり、当日の審判や会場準備には多くの町民がボランティアで参加する。会場でふるまわれる豚汁作りをお年寄りが手伝うなど、人口約3000人の町で1割以上にあたる400人が大会に関わり、選手たちを歓迎する。

 選手たちとの交流は町民の楽しみでもあり、大会を包むあたたかいもてなしの空気は選手たちの心を和ませる。雪合戦の聖地として、また地域の良さに触れる場所として、昭和新山国際雪合戦は今後も多くの人々を魅了するだろう。

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