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サントリー地域文化賞

活動詳細

中部

石川県 白山市 2006年受賞

白峰・桑島地区の雪だるままつり
住民ひとり1個の雪だるまづくり

代表:北野 滋 氏

2006年8月更新

活動紹介動画(1:50)
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写真
白峰地区の雪だるまたち

 立春の声を聞く2月のはじめ、白山山麓、白峰・桑島地区の雪だるままつりは行われる。暦の上では春といいながら、3メートルにも及ぶ豪雪はまだ地区を覆っている。白峰・桑島地区は石川県下最大の河川である手取川上流に位置し、1974年、ダム建設によって造られた手取湖がかつての桑島集落全部と白峰集落の一部を呑み込んでいる。

 豪雪地帯の山里に冬場の楽しみは少ない。1989年の秋、当時の若者たち有志が、村のハンディでもある豪雪を活かし、老若男女誰もが簡単に作ることのできる「雪だるま」をモチーフにした素朴で新しい村まつりを考え出した。若者たちは「住民一人ひとつ」を合言葉に村の一軒一軒に頼んで回り、1990年、全世帯全住民が参加した第1回目のまつりが実現した。以来、毎年開催を重ね今年で17回を数える。

 桑島地区では月曜日、白峰地区では金曜日に、すべての世帯が思い思いの趣向を凝らして作った、住民の数を超える雪だるまが各家々の軒先や空き地に勢ぞろいする。お年寄りだけの世帯に雪だるまづくりは大変だが、まつりが近づくと他所に移り住んでいた子供や孫が戻ってきたり、親類や隣近所の人が手伝ったりする。また、住民の希望に応じて大学生のボランティアも駆けつける。まつりは、雪だるまを作るときから、家族や近所を始め、広く地域の人と人との心を繋ぐ場となっている。

 当日午後5時、予め各戸に配られた太目のろうそくへの点灯を合図にまつりは始まり、薄暮に淡いろうそくの灯が輝いて雪だるまたちが幻想的な光景を醸し出す。そして集落の整った家並みを緩やかに夜の闇が覆っていくと雪だるまたちは少しずつ違った装いを見せ、やがてろうそくの灯がすっかり消えてまつりは終わる。その数時間のあいだ、地区の住民も観光客も集落の街路を行き来し、屋台の料理を食べたりしながら、思い思いに雪だるまを見て歩く。屋台が用意するのは、主に栃餅、堅豆腐、岩魚、なめこといった村の特産品や、ブリ大根、かっちり、うさぎ汁など昔ながらの郷土料理。メインの雪像も、コンテストもない。また作られた雪だるまの数も概数を発表するだけ。「明日忘れる豪華さよりも永遠に心に残る素朴さを」という当初からのキャッチフレーズのままに、まず地区の住民自身が楽しむという基本コンセプトが変わることなく守られている。

 全国各地にも雪だるまや雪像・氷をモチーフにしたイベントはたくさんあるが、住民自らが発案、地区すべての世帯が参加し、17年の長きにわたって住民手ずから運営してきた実績は際立っている。今や、昨年2月の町村合併で生まれた白山市のみならず、北陸地方にとっても欠かせない冬の風物詩となっている。

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