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サントリー地域文化賞

活動詳細

東北

山形県 上山市 2005年受賞

全国かかし祭
ユニークなかかしのコンクールを地域をあげて開催

代表:佐藤 信幸 氏

2005年8月更新

活動紹介動画(01:50)
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写真
秋の風物詩として市民に愛される祭り

 蔵王連山を見はるかす風光明媚な丘の上に位置する月岡公園は、上山市の中心部にあり、市のシンボルとも言うべき上山城と温泉町に隣接する。明治時代に「日本奥地紀行」を著したイギリスの旅行家イザベラ・バードも賞賛した風情が、今もこの丘の上にたたずむと感じられる。

 上山出身の歌人齋藤茂吉が「秋晴の ひかりとなりて楽しくも 実りに入らむ 栗も胡桃も」と詠んだ9月、今日ではこの月岡公園を舞台として、実りの季節の到来を告げる「全国かかし祭」が10日間、県外からの見学客を含め、のべ15万人が参加してにぎやかに開催される。

 「案山子音頭」「かかし祭音頭」などの歌や踊りが流れる会場いっぱいに展示された200体以上の創作かかしが、それぞれに工夫をこらして、アイデアの独創性・作品の芸術性・口上(メッセージ)のおもしろさを競い合う。

 世相を巧みに反映したものや見る人の笑いを誘うユーモラスなかかし、さらには「山田の中の一本足のかかし…」と唱歌にまで歌われた藁製一本足のかかしのイメージを逸脱した、様々な材料でつくられた変形かかしまで登場し、コンクールを彩る。

 出展されるかかしの制作者は地元や県内外の農家ばかりでなく、老人クラブや小・中学校などグループ単位での出品も盛んで、毎年かかし祭の時期が近づくと、それぞれの部門ごとの入賞をめざして、老若男女がかかしづくりに熱中する。また市内には商店などがつくる「街角かかし」も飾られ、「かかし祭」は上山市の秋を彩る風物詩として幅広い市民の支持を受けている。「下駄飛ばし大会」などの祭を盛り上げる関連イベントも次々に企画され、また会場の清掃・後片付けには市民ボランティアが積極的に参加する。

 もともとは農業高校の学園祭として行われていた「かかしコンクール」が中止されるということを聞いた上山市観光協会の佐藤信二氏らが中心となって、各界に働きかけ、市民レベルのユニークな「かかし祭」に発展させ、昭和46年以降毎年継続開催し、今年で35回目を迎える全国一のかかし祭として定着させた。

 平成2年には、20周年を記念して全国15市町村によびかけ、「全国案山子サミット」を上山市で開催するなど、かかしを通じた交流の輪を広げている。さらに、韓国、台湾やオーストラリアなど海外のかかしも随時展示している。

 かつては「田畑を守る神」として、全国どこにでも見られたかかしだが、近年は現実的効果を期待した「キラキラ光るテープ」や「鳥よけネット」に取って代わられて、田畑でほとんどその姿を見ることはなくなった。「田畑の守り神」としての役割を終えつつあるかかしが、ユニークな「かかし祭」の成功によって、地域づくり・町おこしの神に変身したと言えるかもしれない。

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