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サントリー地域文化賞

活動詳細

中国

広島県 廿日市市 2004年受賞

説教源氏節人形芝居「眺楽座」
市民のあたたかいサポートを受けながら、全国で唯一残る説教源氏節を保存・継承

代表:築地 一幸 氏

2005年2月更新

活動紹介動画(01:50)
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写真
移動文化教室での舞台挨拶

 広島県廿日市市の原地区は、極楽寺山のふもとに位置するのどかな農村である。この地区で、江戸時代から伝わる説教源氏節を現在に伝える一座「眺楽座」が活動している。

 「説教源氏節」とは、天保末期に名古屋の岡本美根太夫によって始められた、新内節を起源とする音曲である。哀切な調べを特徴とし、浄瑠璃や新内などの作品を元にした演目を持っている。その後全国に広がったこの芸能を、原の庄屋であった藤原淳一郎・イワ夫妻が明治期に広島で習い、自分達も地元で弟子をとって教えた。さらに淳一郎は、自ら人形や舞台装置を制作し、一座を組んだのが「眺楽座」の始まりである。後に他の地域の説教源氏節が途絶えてしまったため、「眺楽座」が唯一の継承団体となった。

 一座は、語り3人、三味線3人、人形の使い手8人、その他、囃し方数名で成り立つ。舞台装置にも工夫を凝らし、何枚にも重ねた襖絵を三味線の音に合わせて次々と左右に開いて行く「はったん返し」は一座の名物となっている。これは御殿の場に用いられるからくりで、舞台に奥行きを持たせる視覚効果があり、観客をあっと言わせる。現在、演目は30数曲、段数にして100段以上になるが、「はったん返し」と共に演じられる「佐倉宗吾郎」や「石井常右衛門」は特に人気がある。

 メンバーは毎週一回、地元にある広さ10畳の練習場に集まって稽古に励み、地元の小中学校での定期公演を始め、市民会館や老人ホームなど、各地で出張公演を行っている。また公民館の文化教室や学校での体験学習は、若い人々に伝統文化に触れる機会を提供し、新たな活動の担い手を育てる場となっている。また、地域住人も後援会を結成し、財政面で「眺楽座」の活動を援助している。

 このような、地域ぐるみの地道で熱心な活動は自治体からも評価され、1975年には広島県の無形民俗文化財に指定され、1979年には東京の国立劇場での公演も行った。さらに2000年には文化財保護功労者として文部大臣賞を受賞している。さらに廿日市市も、説教源氏節を後世に継承するために、「眺楽座」の稽古や劇場に使用できる専用劇場として、「民俗芸能伝承館」を建設することを決定した。これまでは、公演の度に舞台装置を倉庫から出して組み立てなければならず、高齢者が中心の一座には重労働になっていた。また、練習も稽古場のスペースの関係上、語りと人形使いを中心としたものだった。専用劇場が出来ることによって、舞台装置を使っての練習も可能になると一座のメンバーも喜び、志を新たにしている。

 今後、新しい拠点を中心として、より充実した公演活動を行い、さらに「眺楽座」という地域の財産が、未来に受け継がれていくことが期待されている。

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