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サントリー地域文化賞

活動詳細

九州・沖縄

沖縄県 那覇市 2001年受賞

沖縄藝能史研究会
実演家も参画する真摯な研究活動で、沖縄芸能を学術的に裏付ける

代表:當間 一郎 氏

2001年5月更新

写真
幻の組踊「月の豊田」復活上演

 沖縄は昔も今も芸ごとの盛んな土地柄である。街を歩けばあちこちに楽器屋さんがあり、舞踊・琴・三線教室の看板がかかっている。

 「沖縄藝能史研究会」が発足した1975年、初代会長照屋寛善氏は次のように発足の辞を述べている。「最近、琉球芸能の研究が盛んになって参りましたが、単に実技実演の研究だけでなくその歴史的背景を考え、資料を持ち寄って多角的に対象に取り組むことは、実演者や一般の愛好家にとっても大事な事と思います。……」

 芸ごとは日常生活に溶け込み盛んだが、沖縄芸能の体系的な歴史や理論、樂理等の研究は必ずしも熱心に行われていたわけではなかった。そこで県が音頭をとり、芸能の実演家、研究者、愛好家を糾合するかたちで「沖縄藝能史研究会」がスタートしたのである。

 発足以来26年間、会長は2代目崎間麗進氏から3代目當間一郎氏へとバトンタッチされ、会員も発足時の14名から261名へと大きく増加してきている。活動の基本である毎月の研究会では、テーマを定め、それにふさわしい講師を招き、夕刻2時間の研究・討論を重ねてきた。これまでに300回近くの研究会を実施してきたが、その都度前回の報告要旨と次回の予告を掲載した会報を欠かすことなく発行している。月々の会報に加えて沖縄芸能に関する研究論文集「沖縄藝能史研究」を8号まで刊行しており、今や沖縄芸能の研究者にとって、本会員の手になる研究書、論考は信頼の置ける資料として高く評価されている。

 年に一度、2日間をかけて研究発表大会を開催している。そこでは舞踊の型の地域比較や変遷、三線の調弦のとり方といったテーマを設定し、実演やシンポジウムを公開することで、広く一般の人々の関心と参加を呼びかけている。一方、沖縄芸能の先達である新垣松含、玉城朝薫、平敷屋朝敏などの顕彰事業にも力を注いできており、2003年には田里朝直生誕300年事業を挙行する予定である。

 残念ながら沖縄では芸能関係の文献や台本など多くの貴重な資料を戦災で失なったが、本会の長年にわたる研究努力によって、幻の組曲と言われてきた田里朝直の「北山崩(ほくざんくじり)」をはじめ、「未生の縁(みしょうのえん)」、「月の豊田」ほか埋もれた演目をよみがえらせ、舞台上演にこぎつけるなど、芸能史に大きな意味をもつ成果を挙げてきている。将来は沖縄にとどまらず、アジア諸国の諸芸能にも目を向けていきたいと意欲的である。

 こうした多角的な活動を可能にしているのは、本会を引っ張り支えてきた歴代リーダーの存在と、研究者と愛好家と流派をこえた実演家が参画する本会の特色である“三位一体方式”の運営の妙であろう。

 「小さくてもいいから持続する研究会を」と言う志で発足した研究会だが、こんごも文字通り沖縄を代表する内容、陣容を擁する研究会として、息の長い活動を継続し、着実な成果をあげていくことと期待される。

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