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サントリー地域文化賞

活動詳細

東北

青森県 八戸市 1990年受賞

八戸市民創作オペラ協会
総合芸術のオペラ上演に市民手づくりで取り組み、市民文化全体の向上に貢献

代表:工藤 欣一 氏

1999年11月更新

写真
「炎の中の炎の心」

 「みんな、素人だしオペラのオの字も知らない。作曲家はオペラは大嫌いだというし、私だって、それまでそんなもの一度も見たことない。でも、今から思うとかえってそのほうがよかったのかもしれないナア。」

 初演当時を振り返り、演出担当の小寺氏はこう語る。1980年12月、八戸市の市政50周年を記念して行われたこの公演、当初は記念行事としてプロのオペラを招聘するはずだったのが予算の都合で断念、「それなら自分たちだけでやってみよう」とスタートした企画だった。オペラは文学、音楽、演劇の組み合わされた総合芸術であり、市の合唱連盟、オーケストラ連盟、演劇連盟をはじめ、その頃八戸で活躍していた人たちを総動員。関係者すべてが初めてのことであり、未知のものへの不安ととまどいを感じながら文字通り手探りで進められた。初めは音楽の人と演劇の人とで専門用語が通じず、練習中にぶつかりあうこともたびたびあったという。しかし、公演当日、スタッフと出演者のほとばしるような情熱に支えられた舞台「炎の中の炎の心」は、会場を埋め尽くした満員の聴衆から圧倒的な支持をもって迎えられた。そして、ぜひ再演をという声は日に日に市民の間に高まり、翌81年2月、「八戸市民創作オペラ協会」が発足、以降、ほぼ1年に1回のペースで公演が続けられている。

 市民オペラは、“すべてを市民の手で”を合言葉に、脚本、作曲、演出はもちろんオーケストラや歌い手から大道具、小道具、衣装にいたるまですべてが地元の人たちの手づくり。メンバーもサラリーマン、公務員、大工さん、学生、先生、主婦と実に様々、初演時には古い野良着を見つけにみんなで近郊の農家を探しまわったという苦労話もある。

 これまでに創作された6作は、いずれも観衆にわかりやすく、広く市民の共感を得ており、また代表作である「炎の中の炎の心」は1989年度の文化庁優秀舞台芸術公演奨励作品に選ばれ、その芸術性は高く評価されている。98年の第6作「フォスター・その愛 夢見る人」はそれまでの民話伝承の世界からはじめて国際的なテーマをとりあげ、大きな反響を呼ぶ。八戸市内では、元来、音楽、演劇など各分野の文化団体が活発な活動を続けていたが、協会の発足を機に横のつながりが密接になり、相互の技術向上にも役立っている。全国大会で好成績を収める団体が多数でてきたのをはじめ、小中学校の生徒だけのジュニア・オーケストラが結成され、オペラの演奏という重責を果たした。

 初演から19年、この間観客の眼も肥え、より優れた作品が求められる一方、演じる側もより高い次元に挑戦したいという意欲が高まっている。

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