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サントリー地域文化賞

活動詳細

九州・沖縄

大分県 由布市 1982年受賞

湯布院 自然と文化のまちづくり
自然と文化を核に斬新な地域活動を展開する全国の町づくり運動の旗手

代表:中谷 健太郎 氏

1999年11月更新

活動紹介動画(01:50)
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写真
牛喰い絶叫大会

 湯の町、湯布院の夏は活気に満ちている。「ゆふいん音楽祭」が町に芸術の香りをただよわせ、「映画館ひとつない町、しかしそこに映画が在る…」のキャッチ・フレーズで知られた「湯布院映画祭」に、全国から数多くのファンが集まるからである。

 音楽祭は、湯布院の美しい自然に魅せられた九州交響楽団のコンサート・マスター、岸辺百百雄氏の発案で1975年から始められた。高原のさわやかな風に吹かれながら聞く音楽には格別の趣があり、サロン・コンサートや、辻馬車を利用した辻音楽会は、大ホールのコンサートに馴れているクラシック愛好家に新鮮な驚きと喜びをもって受け入れられた。

 湯布院の夏を飾るもう一つの行事が映画祭である。これは、1976年にスタート、映画人とファンが一緒になって作りあげる手づくりの祭である。朝から晩まで、邦画を上映し、かたわらシンポジウムでは白熱した議論をたたかわせる。夜になれば、プロもアマも酒を酌みかわし、膝を交えて日本映画の将来を語りあう。その熱気は多くの映画人をして「ぜひもう一度、湯布院へ来たい」と言わしめる程である。

 こうした活動の背景には、「牛一頭牧場」に始まる湯布院の町づくり運動の歴史がある。

 由布岳の裾野に広がる草原をゴルフ場にする計画が持ち上がったとき、「原野こそわれわれの生活の基盤ではないか。牧野を残すために牛を飼おう」という声が地元の若者から湧き上がり、生まれてきたのが「牛一頭牧場」のアイデアである。

 これは、都会の人々に仔牛を購入してもらい、その飼育を地元の農家に委託する。出資者は飼育期間中、配当として米半俵を受け取り、5年後に出資金が返済されるというユニークな制度である。また、この牧場の牛をバーベキューにして食べ、大声を出してその声の大きさを競いあう「牛喰い絶叫大会」は、秋の湯布院に欠かせぬ催しとなっている。

 湯布院はこの運動を契機に、地元農家と契約した、自然で手づくりの食品づくり、地鶏の飼育、音楽祭、映画祭などの文化活動も含めた町づくりへとその輪を拡げ、地域振興の盛んな大分県においてもひときわ目立つ存在となっている。長期滞在型の温泉保養基地を目指した町づくりにむけて「50人委員による100日シンポジウム」、「地域ビジョン策定事業」を開催したり、町づくりを考える雑誌を発行するなど、安直な観光化とは一線を画した明日の湯布院町づくりを進めている。

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