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サントリー地域文化賞

活動詳細

近畿

京都府 京都市 1979年受賞

京都女子大子どもの劇場
児童劇の調査・研究、創作、上演活動などを通じ、健康で明るい児童文化を創造

代表:中川 正文 氏

1999年11月更新

写真
「ごんぎつね」

 「京都女子大子どもの劇場」は、1957年、深刻化していく受験戦争や、テレビ、漫画などで年ごとに俗悪化していく子どもたちの文化的環境を憂慮し、健康で明るい児童文化の創造と、積極的な普及をはかるために、当時の京都女子大学学長らの切なる悲願により組織された劇団である。商業劇団ではないが、わが国では珍しい影絵の自立専門劇団として、創設以来毎年100〜150回にわたる公演活動を続け、その足跡は京都市内をはじめ全国各地にまでおよんでいる。

 この劇団の活動は大きく三つに分けられる。一つは日本や東南アジア、インドなどの伝統的庶民芸能の調査研究活動、もう一つはそれらの素材を土台にした脚本、手法などの創作活動、そして第三は公演によって子どもたちに直接に伝えていく活動である。

 この劇団の大きな特徴として、常に新しい手法を工夫し続けていることがある。例えば現代ではほとんど滅び去った上方の錦影絵や、のぞきからくりの「昼夜モノ」や「ポンイチ」を現代絵本作家の協力を得て復興したり、立絵や平絵上演技術の演劇的改善を行うための工夫として、16メートル×6メートルという超大型スクリーン方式を開発している。これはスタッフ・キャストに50人以上を必要とする世界最大規模の影絵装置で、国際人形劇連盟(UNIMA)から「常識をこえた」と高い評価を受けている。さらに、東南アジアやインドの影絵を広く現地で調査、その成果をとり入れている。

 また舞台公演でも、さまざまな新手法を開発、その成果は「京都女子大方式」として注目され続けている。シルエットや不可視光線をとりいれた演技、いわゆる“Human Shadow”と呼ばれる手法がその一例で、アジアやヨーロッパからも見学者や実習生を受け入れるまでとなっている。その成果により、1976年に京都新聞文化賞を受賞した。

 ホールでの上演活動と並行して地域の保育所や子ども会での小規模な上演も熱心に繰り返し、各地で児童文化財の創造や普及の講座や技術訓練を行っている。

 創立以来、180本にわたる台本や演出などの全てに一貫して携わってきた主宰者の中川正文氏は語る。「今後の課題は、専門的な児童劇場を各地域に建設するための運動を進めること。成人用の貸館ではなく、座席、階段等すべて子どもの発達や成長に即した劇場をつくり、それを核として、真に子どもの人格形成に役立つ、本当の意味での子どもの心の栄養づくりをめざしていきたい。」

 中川氏の実践的な活動は、日本の児童文化界に影響を与え続けている。

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