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サントリー地域文化賞

活動詳細

四国

高知県 檮原町 1979年受賞

檮原史談会
過疎の山村に残る生活に根ざした史・資料を町民あげて収集整理

代表:二宮 清 氏

1999年11月更新

写真
歴史民俗資料館

 郷土の歴史を研究する史談会の組織は全国各地に多いが、檮原町のそれは他に類をみないユニークで、みのり多い活動を展開している。

 同町は愛媛県境近くの山また山に囲まれた典型的な過疎地域。昔から周辺を川に閉ざされてきた立地条件から独特な山村文化圏を形成してきただけに、いまも歴史的、考古学的、民俗学的に貴重な史・資料に恵まれた地域である。同町は1963年から、これらの資料の発見、整備、保存に力を入れ、文化財の町指定事業や旧役場庁舎を利用した民具資料館の設置などの活動を続けてきた。その中心となって活躍してきたのが、同町史談会の人たちだった。年を経るにしたがい資料の数はふえる一方で、民具資料館では収容できない状態にまでなってしまった。

 1978年11月、町は乏しい財政のなかから8500万円を投入して新しい「歴史民俗資料館」を建設した。純白二階建、五角形のべ660平方メートルの新館はすべて展示場。同時に旧役場の民具資料館もすぐ隣に移築され収蔵庫や研究室となった。こちらは1891(明治24)年建築の威容をそのままにとどめ、モダンな新館と対照的だ。

 「いれものはできた」と張り切った史談会員の活動にピッチが上がった。欲しい資料があれば町広報に掲載してもらう。町民の反応がある。史談会員が走る。町民は祖先伝来の品でも無償で寄贈する。まさに町ぐるみの資料収集システムが確立した。こうして収蔵品はまたたくまに1万点をこえた。展示場には各時代の農耕器具、各種運搬用器具、織機、台所用品、衣服、通貨、くすり、民芸品、祭の用具から武具、古文書、村のお歴々が愛用した弁当箱までいろいろ。一般の博物館や資料館と違うところは、この町の収蔵品は、みんな近い先祖が使いならしてきたものばかり。血と生活の香りが通い続けている品物なのだ。

 「檮原史談会」は、これらの資料を整理し、民具の使用法や分類、年代的な移り変わりなどの研究とともに、古文書解読、出土品鑑定による史実研究、他市町村の郷土史会との交流研修、町文化史の編纂、町内史跡、文化財の案内書の編集など郷土に密着した幅広い活動を行っている。

 「私たちはお手伝い役だけ。町民みんなのふるさとを愛する熱い気持が『檮原町の心の殿堂』を育てあげたのです」と史談会員の一人が語っていた。「これこそ手づくりの文化運動」と町を訪れた人たちは賛辞をおしまない。

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