巻頭言

 
ASTEION vol.095 Current Issue vol.095アカデミック・ジャーナリズム

 

アカデミック・ジャーナリズム

 かつて自在に相互乗り入れができたアカデミズムとジャーナリズムは、それぞれの発展とともに分化し、分断を深めてきた。今号の特集テーマである「アカデミック・ジャーナリズム」は用法が確立された概念ではないが、両者の間の対話や交流を回復させる主にジャーナリズム側からの様々な模索を紹介する際のキーワードとして用いている。

 たとえば学知の織りなす「論」を広く社会に示す「壇(アリーナ)」をジャーナリズムが用意してきたという意味で新聞論壇面は早くからアカデミック・ジャーナリズムを実践している。科学の最前線の動きを、その歴史的意義を社会が判断できるように正確性を犠牲にせず平易な表現で伝えられれば、科学報道もアカデミック・ジャーナリズムの名で呼ぶに値しよう。

 アカデミズムとの交流はジャーナリズムを技術的に補強する可能性も秘めている。たとえばジャーナリズムは取材源秘匿と情報ソース明示のダブル・スタンダードを臨機応変に使い分けるが、後者に関してはエビデンスを示しつつ緻密な議論を積み上げてゆくアカデミズムの思考法と記述スタイルが参考になる。逆にアカデミズムもジャーナリズムを通じて社会に向けて開かれることで専門家の独占物でなくなり、社会的評価にさらされるが、それこそジャーナリズムが議論の場を的確に用意し続けられれば、対話を重ねるうちに公共性に資する方向性を得てゆくことができるはずだ。

 こうしてアカデミズムとジャーナリズムを仲立ちしつつ両者を刷新するアカデミック・ジャーナリズムを、激変する情報社会環境の中でいかに維持・発展させてゆくか。本特集の中にそのヒントが見つけられることを期待する。

武田 徹



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