巻頭言

 
ASTEION vol.093 Current Issue vol.093 新しい「アメリカの世紀」?

 

新しい「アメリカの世紀」?

1941年、20世紀は「アメリカの世紀」だと喝破したのはヘンリー・ルースであった。それは、単にアメリカが国際政治経済において超大国としての地位を占める状態が続くことを指すのではなく、アメリカの持つ社会文化的な魅力に世界の人々が惹きつけられる状態が続くことも指していた。自由で開放的な社会、個人の多様性や努力を重んじその成果を率直に評価する文化、ときにお節介と嫌われつつ正しいと信じることを国内でも世界でも実現させようとする情熱が「アメリカの世紀」を支えてきたのかもしれない。だからこそ、20世紀が終わっても、それは終わらなかったのである。
 現代の日本を生きる私たちもまた「アメリカの世紀」に育ち、暮らしているのであり、その変容の影響を受ける。そしてこのことは、日本だけではなく世界中の誰にとってもそうかもしれない。外国からアメリカを見ることには、このような視点を与えてくれるというメリットがある。
 しかし近年、「アメリカの世紀」を支えてきた諸要因は、急激に変化しつつある。国際政治経済における中国の挑戦は大きな変化だが、アメリカ自体の変化も無視できない。政治から生活習慣までを含む激しく深刻な党派対立、努力や寄付文化などによってはカヴァーしきれないほどの格差とその固定化、内向きな自国第一主義の台頭などである。2016年のトランプ当選は、変化の原因ではなく結果であった。2020年の新型コロナウイルス感染症の蔓延や人種差別抗議運動(BLM)の高まりは、このような変化をさらに強く世界に印象づけた。
 だとすれば、「アメリカの世紀」がいかなる要素から成り立っているのか、今後どうなるのか、長めの時間軸と広めの空間軸をとり、日本から遠望することには、大きな意味があるだろう。特集を構成する各論考は、いずれもそうした趣旨を体現するべく、国内外の第一線の研究者やジャーナリストによって書かれた。さらに本号では、ポリティカル・コレクトネスを求める近年の風潮が、アメリカの基底的価値としての言論の自由との緊張関係を高めていることについて、言論界の150人を超える人々により作成された公開書簡の邦訳とその解題を、特集に続く形で収めた。
 本号が、アメリカと世界について考えようとする読者に届くことを、願ってやまない。

待鳥 聡史



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