巻頭言

 
ASTEION vol.088 Current Issue vol.088 特集 リベラルな国際秩序の終わり

 

いま、世界の色々な場所で、リベラルな国際秩序の終わりが語られている。その最大の理由は、トランプ米大統領がリベラルな国際秩序の中核となる重要な規範を軽視して、侮蔑しているからである。とはいえ、トランプ大統領がホワイトハウスから去った後も、リベラルな国際秩序の衰退は続くであろう。同時に、オバマ大統領の時代からすでにその終わりが語られてきている。この問題を、長い歴史の中に位置づけて考えることが重要だ。

このような、リベラルな国際秩序の終わりを語る言説に対しては、二つの対照的な反応が見られる。一つ目は、リアリズムの観点からの反論である。そもそもリベラルな国際秩序などといったものは蜃気楼のようなものにすぎない。いつの時代においても国際政治の世界では、国家は自己利益を追求してきたし、究極的には紛争は軍事力によって解決されてきたのではないか。

他方で、二つ目の反論は、すでにそのような秩序は崩れてしまっているという認識である。外交問題評議会(CFR)会長であるリチャード・ハースは、「リベラルな世界秩序よ、安らかに眠りたまえ」と、すでにそれについての死亡宣告をしている。もはや手遅れなのだ。トランプ大統領が登場する前から、リベラルな国際秩序はすでに瀕死の状態だったのだ。

リベラルな国際秩序が現実には存在していないと考えるにせよ、あるいはすでに過去の遺物であると考えるにせよ、これからは権力政治、地政学、軍拡競争、貿易戦争によって彩られる、より不安定で、より危険に満ちた世界となるであろう。はたしてわれわれは、リベラルな国際秩序を擁護し、修復し、強化させるべきか。あるいは新しい地政学と権力政治の時代に備えて、軍備を増強すべきか。本特集に寄せられた論文の数々を読み、それらを理解する契機となれば、大きな歓びである。

細谷雄一



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