刊行によせて

 
別冊 アステイオン それぞれの山崎正和

 

刊行によせて

ライトが消えて幕が下りた。どんな芝居にも必ず終わりがあるのだし、86年に及ぶ人生に幕を引く直前まで、実に半世紀以上にわたって華々しい文筆活動を続けたのだから、唐突な幕切れではないのかもしれない。それでももっと続いていて欲しかったという思いは禁じ得ないが、残されたわれわれは、劇場を出てそれぞれの家路にむけて歩む間にも、舞台の光景や台詞を反芻し、それを胸に明日からの日常に立ち向かう力にはできるはずだ。

学問的基礎には若き日に学んだドイツ哲学があった。名刺の肩書きにはただ「劇作家」の一語しか記されていなかった。知識人が見下しがちなジャーナリズムや政治・行政にも関与し、次々に立ち現れる社会的課題に積極的に発言を続けた。風通しのわるい学会や文壇とは違う文化制度の設計にも力を注いだ。こういうわけで彼の芝居では場面が大きく転換し、心にささる台詞も多いので、その解釈も観客によって様々であろう。

徒党を組むのを好まず、自由な中にも節度を持った打ち解けた他者との交わりを実践し組織してきた故人を追悼するのに、友人知人の感傷的な思い出話や、凡庸な取り巻きの美辞麗句は相応しくあるまい。交流のあったそれぞれの関係者が、劇作、哲学、評論、そして文化制度設計という長きにわたる故人の多彩な足跡と業績をたどり、改めてその意義を語る場として本号を企画した。

故人の業績の意義を噛みしめることで、残されたわれわれが喪失を乗り越え歩んでいく糧としようではないか。『アステイオン』は、われわれの感謝を込めてこの追悼号を読者と共有し、山崎正和氏の死を悼みたい。

先生ありがとうございました。

『アステイオン』編集委員長 田所昌幸



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