2025.11.04
外食産業に新風を。サントリー「グルメ開発部」が進める新業態づくりの裏側

さまざまなフィールドで活躍するサントリーの社員=サントリアンにスポットライトを当て、「挑戦」をテーマにインタビューしていく特集企画。第16回目は、サントリー株式会社で外食企業様の新業態開発を担う、営業推進本部グルメ開発部の鈴木華子さんにお話を伺いました。
飲食店様とともに新たな業態を模索する「グルメ開発部」
サントリー株式会社の営業推進本部グルメ開発部では、外食企業の新業態開発のほか、サントリーの持つ多様なブランドの公式レシピ開発など新しい飲み方の提案も行っています。
そんなグルメ開発部でディレクターとして活躍しているのが鈴木さんです。
前職では飲食店の求人広告会社で約4年半、広告営業を担当した鈴木さん。違う角度から外食産業に携わりたいという想いからサントリーへの転職を決意。
鈴木さん:グルメ開発部では、例えば大手の居酒屋チェーン店様が既存の店舗とは違う、新しい業態のお店を立ち上げたいというときに、どんなお店を立ち上げるかという業態の企画から、メニュー開発や環境イメージ、収支計画立案、そして店長やスタッフの研修、開業までをトータルでプロデュースしています。
現在、私が担当している案件は、九州の居酒屋チェーン店様への寿司居酒屋の提案や、大阪の飲食店様で既存店の強みを生かした新業態への転換を提案しています。
通常、このような業態プロデュースは、飲食店様がコンサル会社などに依頼された場合は有償になります。しかし、私たちグルメ開発部はそのお店でサントリー製品を専売で取り扱っていただくことを前提に、無償でサポートさせていただいています。
老舗酒場にモダンなデザインを取り入れてアレンジした餃子酒場「太陽ホエール 野毛本店(横浜・桜木町)」。
グルメ開発部は鈴木さんのようなディレクター、ドリンクスーパーバイザー、フードスーパーバイザーからなるプロ集団で専門チームを結成。プロジェクトごとにチームを組んで業務を進めています。
そんなグルメ開発部のミッションの根幹をなすのが「ユーザー起点」だと鈴木さんは語ります。
鈴木さん:つくり手やプロの目線とともに、生活者にどんな体験をしてほしいかを提案していけるかという「ユーザー起点」を常に意識しています。
リサーチのために、飲食店はもちろんですが、人の集まる場所に週3回くらいは足を運び、SNSも細かくチェックしながら流行の変化をキャッチするようにしています。どんな人が、どんな場所で、何を食べて、何を飲んでいるのかを観察することが習慣になっています。
外食のプロ人材と協働することでよりよい企画を提案
グルメ開発部の特徴は、それぞれの立場のプロが協働し、成果を生み出せる体制にあります。ドリンクやフードのスーパーバイザーは、グルメ開発部の契約社員となる前は一流ホテルのバーテンダーや星付き有名飲食店のシェフなど、経験豊富なプロ人材。
一方で、ディレクターであるサントリー社員は、業態開発に欠かせないターゲット設定やコンセプト立案、収支計画、出数シミュレーション(その店舗でどのメニューがどれくらい注文されるかの予測数値)といった数字の組み立てや店舗の環境づくり、生活者視点からの提案という点で強みを発揮しています。
グルメ開発部ではメニュー開発や試食会ができるテストキッチンを完備。飲食店で実績を積んだスーパーバイザーと二人三脚でプロジェクトを進行。
鈴木さん:それぞれがプロとしての誇りとスキルを持っており、よりよいものを作り出しているという自負があります。プロ同士、本気だからこそ、意見がぶつかることもあります。でも、そういうときこそ、それぞれの立場から真摯に意見を伝え、向き合い、対話を重ねることで、最適な答えを導き出しています。
例えば、プロジェクトメンバー3人で店舗のリサーチに行き、ひとつの皿を前に意見を交わしてみても、自分とは違う視点に気づかされることが多いです。同じものを見ながらいろいろな視点が出てくるなかで、次第に共通言語が生まれ、プロジェクトの方向性が定まっていきます。
そういう試行錯誤を経て開業したお店で、お客様が楽しそうに過ごしている姿を見ることがやりがいです。
グルメ開発部で8年目を迎える鈴木さんにとって、もっとも印象に残っているのが、東京・上野にある「HIGHBALL BAR 上野駅 1923」への業態変換でした。中高年層が中心だった前業態から20代後半から30代の若年層もターゲットにした店舗へとリニューアルしました。
鈴木さん:それまでの常連のお客様も大切にしながら、若い世代をどう取り込むかをプロジェクトメンバーと何度も議論を重ねながら検討しました。結果的に「常連層6割:若い新規層4割」と、狙い通りに幅広い客層が来店してくれるお店にでき、大きな手応えを感じました。
鈴木さんたちが担当した「HIGHBALL BAR 上野駅 1923」のメニュー。若年層を取り込みながら既存の常連層にも受け入れられるメニューを開発。
迷っても挑む。「やったもの勝ち」で突き進む原動力
鈴木さん:私は、飲食店の求人広告会社から2010年にキャリア採用でサントリー株式会社に入社しました。前職のクライアントが飲食業中心だったこともあり、もっと飲食店の売上に直結する仕事をしたいと、転職を決意しました。
そして、「やってみなはれ」の文化に共感したことも挙げられます。この会社なら、やったことのない世界に飛び込んでも、挑戦できると思えました。
「営業部で培った経験は、グルメ開発部でも活きています」と鈴木さん。
入社後は家庭用営業(※)に配属され、群馬・栃木・長野・山梨エリアでスーパーや量販店を担当。7年間、お酒の営業の基礎を徹底的に学びました。
鈴木さん:商品を覚えるところから始まり、すべてが勉強でした。このときの経験が今の仕事にも大きく役立っています。POSデータ(※)の分析は数字を見る力を養えましたし、営業の立場からサントリーの酒類戦略や、生活者との接点をどうつくるかということは営業時代のノウハウが活きていると思います。
「いずれはグルメ開発部で食に関わりたい」という強い意思で希望を出し続け、2018年に念願のグルメ開発部に異動。最初に配属された営業部で得たことが武器となり、夢を手にすることができました。
※家庭用営業:スーパーマーケットやコンビニ、酒量販店といった小売店への営業。
※POSデータ:レジを通して記録される、店舗での販売情報のこと。
大阪・関西万博では万博推進室メンバーに参画。会場内の「SUNTORY PARK CAFE」の開発を手がけ、かき氷の名店「埜庵」が監修した「サントリー天然水」のかき氷を提供。
日々、新しい経験を積み重ねている鈴木さんですが、自分を励ますために大事にしているのが「やったもの勝ち」という言葉です。
鈴木さん:もともと私は冒険家タイプではなく迷いがちなところがあるんです。だから、自分に言い聞かせる意味で「やったもの勝ち」と考えて、まず行動する。そういう挑戦マインドで、「あったらいいな」と思える新しい飲み場を実現し、ブランドの新たな価値につなげていきたいです。
プライベートではパン屋巡りや飲み歩き、街歩きを楽しむ鈴木さん。外食や飲む機会を愛するライフスタイルは、そのまま仕事にもつながっています。
鈴木さん:プライベートでの発見が企画のヒントになることも多いです。休日でも街を歩きながら「次のプロジェクトではこうしたら面白いのでは」と考えてしまいます。そして何より、私自身が、いいときも悪いときも、誰かとお酒を酌み交わすことで支えられてきました。そういう意味でも、飲食業界の方々への感謝と尊敬の思いが強くあります。
企業理念として「やってみなはれ」があるサントリーは、失敗を恐れずに挑戦できる環境があります。キャリア採用で入社した私も、その環境のなかで思い切り挑戦することができています。新卒の方も、キャリア採用の方も遠慮せずに「やったもの勝ち」の精神で、一歩踏み出してほしいです。
「サントリーには、飲食店とともに外食産業を盛り上げようという、メーカーを越えた志が関係者みんなにあるように思います」と鈴木さん。
※社員の所属・役職、内容は取材当時のものです。
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鈴木華子Suzuki Hanako
サントリー株式会社
営業推進本部 グルメ開発部 ディレクター
求人広告会社を経て、2010年サントリー株式会社にキャリア採用で入社。家庭用チャネルで約7年間スーパーや量販店の営業を担当。2018年にグルメ開発部へ異動し、新業態開発やドリンクメニューをはじめとしたコンテンツ開発などに携わる。大阪・関西万博では万博推進室メンバーとして兼務。趣味はパン屋巡りや街歩き。