2025.06.02
DEIがキャリアも価値観も越えていく──サントリーが描く「認知的多様性」の可能性

さまざまなフィールドで活躍するサントリーの社員=サントリアンにスポットを当て、「挑戦」をテーマにインタビューしていく特集企画。第13回目は、サントリーグループのDEI(※)戦略に迫ります。サントリーホールディングス株式会社 人財戦略本部 DEI推進部で、男性育休推進や女性管理職育成を担当する田中夕貴さんにお話を伺いました。
※DEI:Diversity(ダイバーシティ、多様性)、Equity(エクイティ、公平性)、Inclusion(インクルージョン、包含性)の頭文字を組み合わせた言葉。多様な人財の能力を最大限に活かし、公平な機会を提供し、誰もが安心して活躍できる環境を整備することを指す。
企業理念に根ざしたサントリーらしいDEI推進
サントリーホールディングス株式会社 人財戦略本部 DEI推進部の田中夕貴さん。
「DEI施策を進めるうえで人種、性別、年齢といった『属性』は切り口のひとつ。それよりもサントリーでは、『認知的多様性』を重視しています」と語る田中さん。認知的多様性とは、簡単にいうと、ものの見方や考え方の多様性を指します。
田中さん:サントリーグループの社員にはそれぞれに異なる背景、考え方、価値観があります。その認知的多様性(Diversity)を活かしていくことが、企業の成長にとって重要であると考えています。
サントリーグループでは、さまざまな個性や能力を持つ人財が、自分らしくイキイキと力を発揮できる職場づくり、またそれによって組織力を高める「成長のためのDEI」をテーマに、推進活動を行っています。
海外のグループの意見も交えて作成したサントリーグループの「DEIビジョン」。
田中さん:またサントリーにとってのDEIは、「『人間の生命(いのち)の輝き』をめざす」という企業理念に直結するものであり、企業が成長するための戦略のひとつでもあります。
組織構成の「多様性」と、それぞれが力を発揮できる「環境づくり」の両面からアプローチすることで、企業成長に貢献できる、そんな「サントリーらしいDEI」を目指しています。
そのなかでも、私が担当しているのが「男性育休推進」と「女性管理職育成」です。
男性の育休取得は100%を達成! 次なる目標は
サントリーでは、男性育休の取得率が2023年の92.9%から2024年は100%(サントリーホールディングス籍)へと大きく飛躍したそうですね。
田中さん:男性の場合、子どもが生まれたことを誕生してから周囲が知るというケースも少なくありません。しかし、出産してからでは育休取得の環境を整えるのが難しいのが現実です。
そのためにも「早め」に仕事と育児の両立についてご家族と話し合い、それに合わせて育休取得の設計・計画も周囲と一緒に進めることが育休取得の促進のポイントになります。そこで導入したのが「子の誕生予定申請」です。
安定期に入る妊娠5か月前後に申請を出してもらうことで、自動的に上司に共有され、男性育休取得の準備を上司と本人が一緒になって、前もって進める仕組みをつくりました。
そのなかでは、「仕事と育児の両立計画書」を作成してもらっています。育児と仕事をどう両立するか、育休期間をどうするかなどを上司とすり合わせることで、上司や周囲の理解も進みやすくしています。
もちろん、業務によっては休みづらいというケースはまだまだあります。
しかし、属人的な仕事も早めに引き継ぎをスタートすることで、例えば社外の関係者が多い営業職であっても、1か月間の育休を取得する事例も出てきました。実際、お得意先様にも安心していただける状態で引き継げたという声も上がっています。
次の目標は、男性育休の取得日数の増加です。現在は5日間の取得が多数を占めていますが、育休取得者への調査では、「1か月ほど取得したかった」という声が非常に多かったです。
制度の周知をより加速させ、事例を増やすことで、1か月間育休を取得する男性社員を増やしたいと考えています。
女性活躍のロールモデルと繋がる企画「サンジョ」
「サンジョリーダーズ セッション」の様子。
サントリーでは、まだまだ数の少ない営業部門の女性の成長を後押しするために、「サンジョリーダーズセッション(以下、サンジョ))」を行いました。
「サンジョ」は「サントリーの女性社員」の略で、女性役員と女性部課長がペアになって全国をまわり、各地の女性社員たちと語り合う交流会のこと。2025年春に、全国7拠点で開催されました。
田中さん:私は入社してすぐ、広島で業務用のお酒の営業を担当していましたが、女性の営業マネジャーは身近にいませんでした。女性営業マネージャーは雲の上のような存在で……(笑)。
ロールモデルがいないと、どうしても自分のキャリアが想像しにくいという課題を解消しようと企画したのが「サンジョ」です。
「サンジョ」を経て、自身を含めてより多くの女性社員がキャリアについて深く考えるようになったことを実感した、と田中さん。
「サンジョ」は、開催エリアに勤める女性営業職全員が対象で、参加は希望制。フランクに双方向での交流ができることを心がけたそうです。
田中さん:実際に対面でコミュニケーションをとることで、先輩たちの経験にもとづく深みのある言葉が伝えられたと思います。将来の働き方に悩んでいる人にとっては、ロールモデルとなる先輩から「大丈夫だよ」というひと言が大きな安心感や励みになったはずです。
「サンジョ」から女性社員のネットワークが生まれ、いつでも相談ができたり、背中を押してもらえたりするような場にしていきたいです。
視座を高め、成長を促す「ビヨンド異動」
現在はDEI推進部で活躍している田中さんですが、配属は第一希望だった営業で広島エリアを担当。学生時代、野球場でビールの売り子のアルバイト経験で感じた「サントリーの商品を通してお客様を笑顔にする」ことの醍醐味が、営業を志望した理由です。
田中さん:サントリーを志望した最大の理由は「人」でした。就職活動中にお会いしたサントリー社員30人、全員の方と一緒に働きたいと思えたのが大きかったですね。
地方拠点の営業現場を経験したことで、東京にいても全国の社員の顔を思い浮かべて仕事をする癖が身につきました。
現職のDEI推進部は、東京・お台場オフィスの人財戦略本部に属していますが、全国各地で活躍する社員たちがアクションしてくれるような人事施策をつくるために、中国エリアの先輩や後輩を想像し、「現場に根差した施策になっているか?」という視点で考えるようにしています。
広島の酒販店様が開催してくれた送別会。営業として、右も左も分からなかったころから育てていただき、現在も交流が続いている。
田中さんは4年半の営業経験を経て、2023年9月に人事部門へ異動となりました。 サントリーでは、それまで経験していない部門や職種への異動を「ビヨンド異動(※)」と呼び、新卒で入社して10年目で3仕事を経験、そのうち1回はビヨンド異動をすることになっています。
※ビヨンド異動:経験していない部門や職種への異動のこと。
田中さん:営業時代、ビール1本を売るにも会社のイメージが大きく影響しているのを実感しました。そこで今度は、サントリーの社会的イメージをつくることに貢献したいと人事部門を希望しました。
かつては教員を目指していたという田中さん。サントリーで幅広いキャリアを積んで今後もサントリーで活躍していきたいと意気込みを語ります。
田中さん:仕事内容が大きく変わり、最初の3か月は転職したかのような気分でしたが、異動をしたことで視野も広がり、視座も高まったような気がしています。
以前は女性管理職ということを考えたこともなかったという田中さんですが、日々DEI推進部としてさまざまなリーダーと対話するなかで考えも変わってきました。
田中さん:ある女性マネージャーに「目の前の仕事と一生懸命向き合い、少し大きな仕事をしたいと思ったら、自然と立場もついてくるもの」と言われて、「確かにそうだな」と思えました。
今はまだまだ目の前のことをがむしゃらにやっていますが、いずれ任せてもらえるチャンスがあれば挑戦したい気持ちになってきています。
※内容・社員の所属は取材当時のものです。

田中夕貴Yuuki Tanaka
サントリーホールディングス株式会社
人財戦略本部DEI推進部
2019年に新卒としてサントリーホールディングス株式会社に入社。サントリー酒類株式会社(現・サントリー株式会社)中国支店に出向し広島県内の業務用酒販店を担当する。2023年9月にサントリーホールディングス株式会社 ピープル&カルチャー本部DEI推室(現・人財戦略本部 DEI推進部)に配属され、国内DEI担当として主に男性育休、インクルージョン施策などを担う。