Takayuki Funatsu
船津 孝之

サントリーMONOZUKURIエキスパート株式会社
原料部

船津 孝之
船津 孝之

入社後、財務部に配属され、為替ヘッジや金利ヘッジ、資金調達、金融機関とのリレーションなどを5年間担当する。その後、市場開発本部に異動し、大手居酒屋チェーン本部への営業を担当するとともに、投融資を審査する開拓サポート業務に携わる。入社10年目にロンドン支店に移り、3年間、欧州グループ会社の資金調達業務を担当。帰国後、現在の原料部に異動し、主にウイスキー用の麦芽と樽・樽材の調達業務に携わっている。

ウイスキー用樽の安定的な確保を目指し
グローバルなスキームづくりに挑む。

現在、私は原料部に所属し、主にウイスキー用麦芽と樽・樽材の調達を担当しています。各原料の安定的な供給体制を構築するとともに、品質の安定化やさらなるコストダウンを目指した活動が、私の役割になります。2013年の秋、私がロンドン支店から原料部に異動後、すぐに携わった案件が、アメリカン・ホワイト・オーク樽の調達でした。ここで言うアメリカン・ホワイト・オーク樽とはバーボンの熟成に一度使用した後の樽のことを指し、ウイスキーの熟成に不可欠な樽の一つです。
私が異動した頃、ウイスキーブームを背景に樽が全般的に不足し、世界中のウイスキーメーカーが樽を取り合うという状況がありました。当社でも樽の安定的な確保が大きな責務となっており、異動後の私に与えられた最初のミッションが、この樽の安定的な供給体制の確立でした。

当時、当社はアメリカのサプライヤーから調達しており、2014年初頭にはアメリカ現地で樽の調達交渉を始める予定でした。しかし、ちょうどその頃、サントリーによるビーム社買収の情報が伝わりました。ビーム社はジム・ビーム銘柄で知られる世界的なバーボンメーカーであり、ビーム社がサントリーのグループ会社になることで、樽の調達スキームを抜本的に変革できる機会に恵まれることになったのです。私たちは安定的な供給体制を築くために、ビーム社と連動した調達体制の検討にすぐさま入りました。
樽そのものの不足や価格高騰という市況環境の中、ビーム社と協働することで、当時のマーケットプライスよりも低い価格に抑え、かつ必要数量を安定的に確保することができました。異動後すぐのミッションだったこともあり、ウイスキーの知識はもちろん、樽の知識もないなか、ビーム社の知見に学びながらの活動でしたが、シナジーを活かして樽の安定的な供給体制の構築を実現できたことは最大の成果であったと思います。

麦芽原料調達のコスト削減に向けて、
ビーム社との共同調達体制を築く。

2015年には、麦芽のグローバルな調達体制の構築に挑みました。ビーム社のグループ会社化により、麦芽調達をグローバルな観点から推進しようというものです。ビーム社ではアメリカでバーボン用麦芽を購入するとともに、欧州ではスコッチウイスキー用の麦芽を購入しています。日本でもザ・プレミアム・モルツや金麦に使用するビール用麦芽に加え、山崎・白州を含む国産ウイスキー用の麦芽を購入しています。それぞれが別々に調達するのではなく、サントリーグループとして一つのユニットを組んで麦芽の調達体制を構築できれば、価格や物流コスト面で大きなメリットになると判断しました。

2015年の3月、アイルランドのダブリンで世界中の麦芽メーカーが一堂に会する「世界麦芽会議」が開催されました。私たちはビーム社の調達担当者とともに現地に入り、この会議の前後に各サプライヤーとのキックオフ・ミーティングをスタートさせました。一口に麦芽といっても、それぞれの銘柄によって使用する大麦の品種や産地などスペックは異なります。従って一律に量や価格を決めるわけにはいきません。それぞれのビジネスユニットの思惑を尊重しながら、一グループとして共同調達のメリットを活かす、そこがいちばんの交渉の難しさでもありました。その後、各麦芽メーカーとの個別交渉を繰り返し、夏頃には合意に至り、グローバル交渉によるコスト削減を達成することができました。

お客様に高品質な製品をお届けするために、さらなる調達スキームの刷新へ。

私が原料部に異動後、深く携わってきた案件はいずれも、グローバルプレーヤーとして世界展開を図るサントリーが、そのウイスキーの原材料の調達分野においても、グローバルな調達体制を確立することにあったと思います。これまでとは異なる調達スキームを考えることは、原料部にとっても、私にとっても、非常に難しい案件ですが、前例なきものへの挑戦という意味で、とてもやりがいのある仕事でした。サントリーのウイスキー分野は好調な事業の一つでもあり、それを支える仕事に携わっているという誇りと責任を感じています。

一口にウイスキー用の樽と言っても、樽材の産地だけでなく樽のサイズもさまざまです。こうした多様な種類の樽を、関係各部署と連携しながら、長期的なウイスキー戦略に基づいてどのように調達していくか、なかなか奥深くおもしろい仕事です。
麦芽の調達では、前年に翌年度に必要な数量と価格を決めますが、大麦の生産は各国の需給バランスや天候に準じた作況によって収量や価格が左右されます。さまざまな要素を考慮しながらサプライヤーと交渉する点もまた、この仕事の醍醐味でもあります。私たちは、お客様に高品質な製品をお届けするために、品質を維持しながら原材料の安定供給に取り組んでいます。その上でコストダウンも含め、さらなる調達スキームの刷新に挑んでいきたいと思います。

* 内容・社員の所属は取材当時のものです。