Kousuke
Tamura 田村 康祐

サントリープロダクツ株式会社
榛名工場 生産技術部

入社後、サントリービジネスエキスパートの生産技術部に配属され、多摩川工場の製造ラインの検査機の設計・立上に携わる。その後、木曽川工場の検査機の設計・立上を担当。木曽川工場では大規模な設備や缶の充填機フィラー・シーマーの設計や家庭用ウォーターサーバーの設計にあたる。入社3年目にインドネシアにある「サントリーガルーダビバビレッジ」のシドアルジェ工場に出張、製造ライン全般の設計・立上を経験する。2014年、サントリープロダクツ榛名工場に異動になり、プリフォーム自製ライン建設プロジェクトの統括リーダーを任される。

Project

ペットボトルの原型となる
プリフォームの自社製造に挑む。
近年、飲料業界ではペットボトルの軽量化が課題の一つとなっている。軽量化することで、ペットボトルの原料となる石油由来樹脂の使用量を減らし、CO2排出量など環境負荷を軽減することが大きな目的だ。サントリーでも、2013年2月発売の「サントリー天然水」で30gを切る国産2Lペットボトルを実現するなど、自社工場でのペットボトルの設計・製造に取り組んできた。今回の榛名工場における「プリフォーム自製ライン建設プロジェクト」も、環境負荷の軽減対策の一環として、ペットボトルのもとになるプリフォームを自社工場で製造しようというものである。今回のプロジェクトでは、世界初となる技術の開発・導入により、新たなプリフォーム成型機の開発を実現。2014年にスタートしたプロジェクトは、2015年12月にプリフォーム成型機が完成し、2016年春にラインの建設が完了した。
プリフォームの作り方
それ自体を見直し、新たなマシンの開発・設計に挑む。

今回の「プリフォーム自製ライン建設プロジェクト」では、プロジェクト全体を統括するリーダーを任され、主にプリフォーム成型機の設計・開発に携わりました。プリフォームは試験管の形をしたペットボトルになる前の原型のようなものです。この試験管のような容器をペットボトルの金型に入れ、加熱後、圧縮した空気によって一気に膨らまれることでペットボトルにしていきます。これまで榛名工場では、外部の他社メーカーからプリフォームを調達していました。しかし、さらなる軽量化や、当社が求める品質の高いペットボトルを製造するためには、プリフォームそれ自体を自社工場で作る必要があるとの判断から、今回のプロジェクトがスタート。今回のプロジェクトの最大の狙いは、単に自社でプリフォームを成型しようというだけではなく、プリフォームそれ自体の作り方を抜本的に変えることで、新たなプリフォーム成型機を設計・開発することでした。

世界初の技術への挑戦。
安定稼働しない成型機。最初の大きな壁が立ち塞がる。

プリフォームの成型法には、インジェクション(射出)とコンプレッション(圧縮)という2つがあります。それぞれ一長一短があり、われわれは新包材技術開発部の知見やメンバーの知恵を借りながら、この2つの成型法を融合したインジェクション-コンプレッション成型機の開発を提案。この成型法だと軽量化や高速化はもちろんのこと、ペットボトルに充填する製品に合わせた多種多様なプリフォームを容易に作ることができるというメリットがあります。しかし、これまで世界にはない成型法の技術であり、もちろん成型機もありません。

われわれは新たな成型機の仕様を固める中で、イタリアの大手プリフォーム成型機メーカーSIPA社に製造を依頼、共同開発がスタートしました。当初、2015年春のライン導入を目指してスタートし、順調に進むかに見えたのですが、世界初の技術の開発はそう簡単なものではありません。2014年12月、SIPA社による成型機が完成し、現地に飛んでの試運転が始まりました。ところがこの成型機は、われわれが求めたものにはほど遠いもので、安定稼働はおろか、金型の破損や部品の損傷など、さまざまな不具合が生じるものでした。このままでは最終製品の品質が保証できない。まさに大きな壁が立ち塞がりました。

不具合の要因は何か。
あるべき姿を求めて、2,000以上にも上る部品の徹底解析が始まる。

もはや2015年春の導入には間に合わないと判断。不具合の要因は何か、徹底的な検証が始まりました。開発・導入の遅れに対して、経営陣や上司から、「諦めることなく、プロジェクトを進めろ!」というアドバイスがなかったならば、私も諦めていたかもしれません。まさに「やってみなはれ!」精神が問われた瞬間でした。ここから1年、メンバーたちによる緻密な原因究明が始まります。まず、飲料メーカーとしての知見を活かし、数千本にも及ぶプリフォームを解析し、0.01ミリ単位の形状の違いが製品の密封性に影響を及ぼすことを突き止めました。そのための最適な金型形状やプロセス条件を抽出。さらにねじや電子部品を含む2,000項目以上の部品について、議論・検討を繰り返しました。

その結果、0.1ミリというわずかな成型機の歪みがプリフォーム成型に影響を及ぼすことを解明。要求機能を満たす設備の開発を実現しました。その間、イタリアを何度も往復し、言葉や文化のハードルを越えての共同開発が行われました。2015年12月、ようやく改良機が完成。現地での試運転の結果、われわれが求めた成型機が誕生しました。

ものづくりに終わりはない。
さらなる技術の進化を求めて、高いハードルに挑む。

今まさに、世界で1台の新しいプリフォーム成型機は、イタリアから日本に向けて輸送中です。2016年の春までには設置が完了し、プリフォーム自製ラインが稼働します。今回のプロジェクトは、メンバーはもちろん、夜遅くまでサンプルの評価をしてくれた他部署の社員たちや、機械の組み立てのために昼夜を問わず作業をしてくれた設備メーカーの方など、周囲の協力がなければ達成できなかったと思います。改めてチームワークの大切さを実感しています。

また、前例のない技術をメーカー任せにすることなく、自分たちの力で実現できたことは、サントリーのものづくりに対する姿勢の現れだと思っています。共同開発にあたったSIPA社からも、「サントリーと共同開発ができて良かった」という言葉をもらいました。飲料メーカーの枠を越えて、機械設備の基本設計まで踏み込んでの開発は、技術者としての今後のキャリアにおける大きな糧となりました。実際、プリフォームの製造に関して、社内でも第一人者と呼ばれるくらい詳しくなったと思います。もちろん、これがゴールではありません。導入後の安定稼働、さらにはプリフォーム成型機とペットボトルを作るブロー成形機との一体化など、取り組むべき課題は多々あります。さらに技術の進化を求めて、次なるハードルに挑みたいですね。

* 内容・社員の所属は取材当時のものです。