Yuriko
Kominami 小南 有利子

サントリー食品インターナショナル株式会社
食品事業本部 ブランド戦略部

入社後、食品事業部に配属され、天然水宅配・海洋深層水新商品開発・コントレックス(フランスのミネラルウォーター)の日本導入などに携わる。入社5年目に「伊右衛門」のブランド担当になり、商品化・ブランドコミュニケーション全般に関わる。入社11年目に産休を取り、翌年、復職。新ブランドグループへ異動ののち、2013年に天然水のブランド担当になり、「サントリー南アルプスの天然水&朝摘みオレンジ」の商品開発を担当。

Project

1991年の発売以来、日本の水市場を牽引してきたサントリー食品インターナショナル(SBF)。90年代後半には、他社の強力なブランドを追い抜き、「サントリー天然水」が家庭用ミネラルウォータ市場のトップに躍り出た。その後、伸び続けるミネラルウォーター市場の中でも、特に伸長するフレーバーウォーター市場に参入を試みるも、なかなか納得ができる商品ができず、開発を継続する日々が続く。2014年、「“サントリー天然水”を事業の中核ブランドに据える」と宣言し、満を持して取り組んだのが「サントリー南アルプスの天然水&朝摘みオレンジ」の開発である。「本物の果実を使い、まるで搾りたてのようなおいしさ」をコンセプトに、これまでのフレーバーウォーターの概念を覆すことを目標に商品開発プロジェクトがスタート。2014年5月、発売を開始するとともに、かつてない自然でフレッシュなおいしさに、消費者からの圧倒的な支持を獲得した。

新鮮さも香りも失われない、新たな製法に挑め!

育休から復職後1年あまり、私はこの新商品開発の担当になりました。実は育休復帰後すぐに取り組んだ新商品が失敗し、意気消沈していたところでした。フレーバーウォーターの新商品開発はこれまでも何度も試みられてきましたが、なかなか納得のいく製品がつくれずにいました。直前の失敗もあり、今度こそはという意気込みもありましたが、重いプレッシャーも感じました。すでに確かな評価を得ているサントリーの「天然水」ブランドに、どういう価値が加わったら新たなお客様にファンになっていただけるか。商品開発チームの苦闘が始まりました。
目をつけた事実は、フレーバーウォーターは自然・ヘルシーさがお客様に支持されているにもかかわらず、今ある商品は実は無果汁でつくられたものばかりだということ。本物の果汁を使って、まるで搾りたてのような圧倒的なおいしさを実現できれば勝ちすじがあるのではないか、という思いでした。
まず、選んだ果実は「オレンジ」。朝飲まれるお客様の多さに目をつけ、一日の始まりに最もフレッシュな気分になってもらいたいと考えました。しかし、本物のオレンジ果汁を使うには高い技術的なハードルがあったのです。本物の果汁を使う場合、品質を保持するために高温での加熱殺菌が不可欠になりますが、その分、新鮮さも香りも失われてしまう。品質を守るためにフレッシュなおいしさを多少犠牲にすることも検討しましたが、ここで諦めていては、元の木阿弥。味の設計を担当する開発研究チームとの連日の検討が始まりました。

最大の関門は突破したが、
次なる壁が立ちはだかる。

品質を保持しつつ、果汁本来のフレッシュなおいしさができないのか。この課題を解決するために何度もディスカッションが重ねられ、そんななかで中味の開発チームが、より低い温度の熱殺菌を可能にする「低温フレッシュ製法」を開発。さらに、果汁本来の香りをエスプレッソマシンのように高濃縮する技術で、搾りたてのストレートオレンジジュースのフレッシュな香りを抽出することにも成功。この技術は、缶コーヒー「BOSS」の製法からヒントを得たもので、開発チームの粘りと発想の切り替えが生み出した製法でした。この時できあがった試作品で、「これまでにないおいしさ!」とお客様からの驚きの声を聞けると、商品開発チーム全員が成功を確信しました。
しかし、商品開発はそんなに甘い世界ではない。そう簡単にすべてが順調に進むわけではありません。今度は、パッケージングデザインに落とし込み、どういう売り方をしていくか。ここからが開発チームの腕の見せどころでしたが、検討していたデザインがどうもピンとこない。これでは売り方も従来の枠を突破することができないと、開発チーム全員が感じていました。

「南アルプス」のイメージを全員が共有し、成功へとつながる。

お盆休みも間近に迫ったある日、開発チームのミーティングで「みんなですぐ南アルプスに行くべきだ」と議論になりました。
実際に南アルプスの朝の清々しい空気を改めて感じ、それをデザインに落とし込めれば新しい価値を感じていただけるものになるかもしれない、そう考えチームで向かうことになりました。入っていた会議の予定も調整してもらい、宿の予約も完全ではないままに出発。みんなで南アルプスの冷たく澄んだ空気や自然を体感しました。そんな時、ある市場での光景に一同目が止まり、誰もがこれだと直感しました。その市場では多くの店が氷水にいれて果物を売っていたのです。きれいな木箱や、氷水に浸された果物。まさに朝の新鮮なおいしさそのものでした。現在のパッケージデザインには、この時開発チームが感じた南アルプスの光景そのものが詰めこまれています。

みんなが共有したこの朝の新鮮なイメージは、販売方法にもつながりました。全国の営業担当者とともに、再び南アルプスを訪れ、新発売時に店頭のお客様にも、この南アルプスの市場のイメージを体感いただこうと一致団結。木箱をモチーフにしたダンボールをつくったり、南アルプスの市場をイメージさせる店頭ポップをつくったり、みんなで共有した感覚を前面的に推し進めていきました。お陰で当初目標の初年度100万ケースの約4倍もの売上を達成しました。今回の成功は、全員がモチベーションを高く持ち、お客様に喜んでいただくことを目標に最後まで諦めずに開発にあたったことが大きな要因だったと思っています。

 PROJECT
MEMBERプロジェクトメンバー
安井 洋平

Yohei Yasui

安井 洋平

サントリー食品インターナショナル株式会社 食品事業本部 商品開発部

新しいことに挑むチャレンジングな姿勢と粘り強さを学ぶ。

今回の新商品開発プロジェクトでは、中味設計を担当しました。サントリー天然水ブランドで、これまでにない新しい価値を持った製品の開発ができるということでとてもやりがいを感じて、仕事に取り組めました。
「サントリー南アルプスの天然水&朝摘みオレンジ」は、「かつてないオレンジ果実のフレッシュなおいしさを最も健康的に楽しめる新しいフレーバーウォーター」というコンセプトで商品開発がスタートしました。中味開発チームに与えられた最大の課題は、本物のオレンジ果汁を使って、無色透明でありながら、いかにフレッシュな味を実現できるか、ということでした。中味開発チームではまず、「香り」に着目しました。サントリーの缶コーヒー開発で培った技術を活かして、搾り立てのストレートオレンジジュースから回収した香りを贅沢に使用することで、フレッシュな味わいを実現しました。ただ、従来の製法ではどうしても高温での熱殺菌が必要となり、オレンジのフレッシュな香りを維持することが困難でした。フレッシュな味わいはお客様に新しい価値を届けるために妥協できない重要なポイントだったので、開発チームで何度も試作検討を繰り返しました。その結果、「低温フレッシュ製法」という新技術の導入により、従来より低温での熱殺菌が可能となり、目標とするフレッシュな味わいを実現することができました。「南アルプスの天然水&朝摘みオレンジ」の開発では、天然水ブランドからの大型新商品なのでプレッシャーも大きく、また初めてのチャレンジが多かったので、想定外の課題にたびたび直面しましたが、ブランド戦略部や生産部などの関連部署と一丸となって商品化を進めることで実現できた商品だと思います。新しいことにチャレンジする姿勢や諦めずに最後までやり切る粘り強さなど、自分自身の大きなレベルアップにもつながったと思っています。

川崎 雅俊

Masatoshi Kawasaki

川崎 雅俊

サントリーグローバルイノベーションセンター 水科学研究所

「天然水」ブランドの原材料となる水源の研究に取り組む。

私は「サントリー南アルプスの天然水&朝摘みオレンジ」の水原料となる「天然水」の研究を行っています。私が所属する水科学研究所では、サントリーのものづくりの基盤となる良質の水を求めて、さまざまな角度からの研究を実施しています。水源を育む森と水の研究をはじめとして、国内外の水資源の研究、そして水における健康や嗜好に関する研究など、各研究スタッフがそれぞれの研究テーマに取り組んでいます。
私自身、奥大山の水文調査に参画し、「天然水」の素性を明らかにすることで、どの辺りに降った雨がどのような場所を流れて「天然水」になるのかを調査しました。この調査結果は「天然水」ブランドの価値向上や水源のリスク管理、「天然水の森」活動などに活かされています。
また、今後の事業伸長を支えるための「天然水」水源探索も行っています。現在、日本全国を探しても、「天然水」にふさわしい水源はほとんど見つけることができません。「天然水」水源の貴重さを痛感しています。貴重な「天然水」水源を守るために、森を守り、水を育む「天然水の森」活動がいかに重要かを再認識させられます。今後も、「天然水」ブランドの美味しさを消費者に届けるために、水の研究に取り組んでいきたいと思っています。

MOVIEプロジェクトメンバーのウラ話し
Yuriko Kominami
Yohei Yasui
Masatoshi Kawasaki