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  4. 次世代のものづくり 天然水北アルプス信濃の森工場 DX化プロジェクト

デ次世代のものづくり 天然水北アルプス信濃の森工場 DXプロジェクト 次世代のものづくり 天然水北アルプス信濃の森工場 DXプロジェクト

MEMBER

  • プロジェクトマネージャー
    (IT・デジタル部門)

    須原 真由美
    Mayumi Suhara

    サントリーシステムテクノロジー
    株式会社
    ビジネスプロセス改革部 部長

  • プロジェクトリーダー
    (生産部門)

    大久保 英剛
    Hidetaka Okubo

    サントリープロダクツ株式会社
    天然水北アルプス信濃の森工場

  • データエンジニア・アナリスト
    (IT・デジタル部門)

    大久保 拓海
    Takumi Okubo

    サントリーシステムテクノロジー
    株式会社
    ビジネスプロセス改革部

  • データサイエンティスト
    (IT・デジタル部門)

    中川 愛子
    Aiko Nakagawa

    サントリーシステムテクノロジー
    株式会社
    ビジネスプロセス改革部

2021年5月31日、3,000メートル級の山々が連なる北アルプスを背景に、最新鋭のデジタル技術を結集したサントリーの新工場が稼働を開始した。経営トップ層も駆け付け期待と緊張に包まれながら、工場長が初回製造の開始ボタンをプッシュ。現場はもとよりリモート中継を通じてプロジェクトに関わった70数名のメンバーが固唾をのんで見守る中、記念すべき最初の1ケースが生産された。サントリーのものづくりが新たな時代が幕を開けた瞬間だった。

新工場の正式名称は、「天然水北アルプス信濃の森工場」。デジタル技術を駆使した「次世代ファクトリー」モデルで、伸長を続けるナチュラルミネラルウォーターのトップブランド「サントリー天然水」の増産・安定供給に向けて、各ラインで毎分1,000本、年間1,500万ケース(1ケース=550mlペットボトル×24本)という驚異的な製造能力を実現している。また自然の恩恵を授かった安全な天然水を提供するために、無菌環境でのボトリング、成分分析などを通じた定期的な水質検査、専門官能検査員による味や匂いを含めた厳しいチェック体制など、徹底した品質管理が施され、「CO2排出量ゼロ」への取り組みも達成されている。

とはいえ、稼働はスタート地点に立ったに過ぎない。「次世代ファクトリー」が目指すビジョンは、この先に広がっている。それは、「水と生きる」というサントリーグループ全体のステークホルダーとの約束を果たすべく、「データドリブンなものづくり」への挑戦だ。本格的なデータ利活用のフェーズを迎え、ものづくりの世界を大きく変革させるプロジェクトに迫る。

直面する課題の解決ではなく、「未来の工場像」を描く 直面する課題の解決ではなく、「未来の工場像」を描く

「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」プロジェクトは、製造現場のメンバーを中心に2018年から動き始めた。当初のメインテーマは、グランドデザインの策定。つまり、「次世代ファクトリー」としての「To-Be(あるべき姿)」の追求である。「超上流工程」ともいわれるこのフェーズにぶれが生じると、その後の設計・開発、テスト・導入、そして稼働後の利活用に多大な影響を及ぼすといわれている。それだけに、製造現場の立場から一気通貫でプロジェクトに携わってきた大久保 英剛は、今回のプロジェクトの原点はそこにあったと回想する。

大久保 (英)「ものづくりの現場では、常に活発な改善活動や課題解決への対応が求められていますが、それらはいわば部分最適の発想で、近視眼的な対応 になりかねません。一方、今回のプロジェクトのゴールは全体最適、未来の工場の“あるべき姿”を追求することでした。“超上流工程”といわれるこのような重要かつ困難なフェーズに若手社員を登用し、積極的に意見を採用してくれるのが、サントリーの“やってみなはれ”精神だと実感しました」

また次世代ファクトリーとしてのTo-Be、すなわち新工場のコンセプト策定において、デジタル的な視点で先進的なアプローチを取り入れたプロジェクトマネージャー須原は、現場であるものづくり部門のニーズ・課題との調整は難航したと語る。

須原 「まず、そもそもお互い業務上使用している言語から異なります。製造現場では具体的な製造プロセスや機械操作の専門用語が使われる一方で、IT・デジタル部門ではいわゆるデジタル用語が日常的に使われます。この言語のギャップを埋めることから始め、互いの領域に深い理解を持って協力することが必要でした。

システム化プロジェクトの多くは一般的にAs-Is分析、すなわちシステムの刷新化において対象となった現状の業務を図へ落とし込み、「見える化」することで課題を抽出して、解決策を講じていきます。いうなれば、課題を踏まえて解決へと向かうフォアキャスティング(現在視点)のアプローチです。ところが、新工場を次世代ファクトリーにしようとなると、その方法だけでは通用しません。むしろ、最初に未来像としてのあるべき姿を描き、ブラッシュアップしていくことが肝要となります。

それだけに今回のプロジェクトではものづくりの現場とIT・デジタル部門を含めて、まさに部門横断であるべき姿を明確化していきました。同時にサントリーでは、デジタル部門で新規プロジェクトを展開する際、リザルトチェーンというビジネス成果に直結させる手法を重視しています。そことの両立を図るために、ビジネスをドライブさせるための方策についても、徹底的に議論・検証を行いました」

超上流工程とリザルトチェーン

当然ながら、超上流工程の「超」には意味がある。従来のシステム開発では「要件定義」で「目的」を定義し、それを踏まえた「設計」までを上流工程と位置付けられてきたが、ここでいう「目的」とは業務課題に対応した解決策を指す。これに対して、昨今のDXが目指しているのは、ビジネスや経営の「変革」に他ならない。そこで求められるさらに上流のグランドデザインこそ、「超上流工程」である。経済産業省直轄の独立行政法人であるIPA(情報処理推進機構)は、「システムライフサイクルにおける設計などの上流工程よりもさらに上流のシステム化の方向性、システム化計画、要件定義を行う工程」と定義し、プロジェクト成功の可否を左右する重要なフェーズと位置付けている。

一方、「リザルトチェーン」は、人・プロセス・情報技術(システム)・組織などを検討する際に明確な「実現目標」を定義して、ビジネスの最終成果につながる前提条件や施策、効果の因果関係を可視化しながら合意形成していく手法。「次世代ファクトリー」プロジェクトにおいても「超上流工程」と「リザルトチェーン」を両輪に、経営方針や業務目的との整合性を担保しながら構想策定が進められた。

次世代ファクトリーで追求・実践された 「在るべき姿」とは?! 次世代ファクトリーで追求・実践された 「在るべき姿」とは?!

構想策定を経て、①データサイエンスの活用、②人間中心ものづくり、③進化し続ける工場という3つのコンセプトが固まり、プロジェクト最新のデジタル技術を駆使した具現化・実装への検討段階へと移行していく。この段階で肝となったのが、先のリザルトチェーンの手法を用いて、生産現場が描いたビジョンやニーズを、最新のデジタル技術でいかに「見える化」していくかということだった。プロジェクトにはIT・デジタル部門のメンバーをはじめ、SI企業などのパートナーが加わり、次世代ファクトリーの「在るべき姿」の方針に沿った設備・システム・データなどについて、活発な議論が展開された。そのプロセスを経て、特に注力すべきテーマを①商品の安全・安心の追求、②働き方改革の推進、③デジタル化推進による工場経営の高度化の3点に絞り込んでいった。

ものづくりの現場とIT・デジタル部門の部門横断で、次世代のあるべき姿を徹底的に議論した

試行錯誤の連続だった「見える化」の核を担うダッシュボード開発を任されたのが、入社1年目の途中からプロジェクトに抜擢された大久保 拓海だ。大学院で研究した「生産計画の最適化」の知識を活かすには、開発主導型のSIベンダーよりも、実運用・利活用を通じて伴走型で成果を追求できるメーカーが向いていると考え、サントリーへの入社を決めたという。

大久保 (拓)「見える化の本質は、日々の活動の中で人間ならではの気付きやインサイトを導き出し、次のアクションにつなげること。ある程度想定してはいたものの、開発したダッシュボードが実際の業務とフィットせず、トライアンドエラーを繰り返した時期もありました。自ら志願した工場の長期駐在を会社が認めてくれたことが 、ブレークスルーとなりましたね。というのも、次世代ファクトリーという“未完の世界観”を現場の人たちと共有していくためには、既存工場で顕在化している課題を整理しながら業務知識を深め、その中から“見える化”すべき要素を抽出し、ダッシュボードの画面の中で見える化の本質を極めていく必要があります。そのためには、現場の人たちと近い距離感・肌感で意思疎通できる環境が重要でした。同じ部屋にデスクを並べて、お互いに気軽に質問し合っていく中でヒントを与えあい、見える化のイメージを固めていくことができました。また、開発チームのリーダーや先輩方からは、仕事の進め方やスケジュールの立て方について、再三アドバイスをいただきました。これらを身に付けられたことで、立場が違う現場の人たちとの調整もスムーズにできるようになりました」

一方製造現場を代表してプロジェクトに参画している大久保 英剛は、ものづくりの視点からサントリーならではの品質管理への徹底したこだわりを強調した。

大久保 (英)「ものづくりを展開する企業においてはさまざまなステークホルダーが存在しますが、特に安心・安全を担保するという点において、お客様と製造現場は強固な信頼関係で結ばれていなければなりません。そこで、新工場において初めて実装されたのが、究極の品質管理ともいえる“1本トレース”と呼ばれる高度なトレーサビリティシステムです。言葉の通り、商品1本ごとに製造・検査履歴情報と品質情報などを紐付けて統合管理する仕組みですが、現段階でどの飲料メーカーも導入できていない“発明”ともいえるエポックメーキングで、実際に特許を取得しています」

IoT基盤を活用した次世代ファクトリーモデルの全体像

「1本トレース」とデータサイエンスの連携でシナジー効果を創出 「1本トレース」とデータサイエンスの連携でシナジー効果を創出

この「1本トレース」の導入により、北アルプス信濃の森工場では製品品質の原因調査に要する時間が従来と比較し3分の1以下に短縮できたという。さらにデータサイエンスを駆使したシステムと連携させることにより、流通や消費者からの商品に関する問い合わせ対応の迅速化、生産設備・機器に軽微なエラーが発生した際の早期復旧生産ラインの稼働率向上など、さまざまな相乗効果が生まれている。

1本トレースと呼ばれるトレーサビリティシステム。特殊なライトを当てる、1本ずつ異なる製造番号が浮き上がり、製造・検査履歴情報などが管理できる。


その代表格ともいえるのが、AI異常検知システムだ。センサーから収集されるデータを中心に、設備が不具合を起こす際のさまざまな要因・原因をAIに機械学習させ、いち早く異常を検知するためのソリューションである。こういったソリューションを使いながら、将来的にはデータ分析を通じて、顧客とのリレーション(信頼関係)強化・サプライチェーン変革へとつなげていくことが期待されている。

大学研究室でバイオ系の解析やシミュレーションを学んできた中川 愛子は、データサイエンティストとして上記2つの開発に携わったが、最初は葛藤があったという。

中川「学生時代に経験した解析やシミュレーションが、AI(機械学習)モデルの作成に役立ったことは確かです。しかし当初は、生産や設備・機械のことについて全く知見がなかったので、現場の人たちが有するノウハウや知見を収集するところからはじめました。さまざまな担当領域や立場の人にヒアリングを重ね、ようやく現場が納得するレベルにまで到達することができました。さらなる使い勝手を高めるために、現在はUIやUXの向上に取り組んでいます」

「見える化」の進化と深化がもたらす未来の働き方 「見える化」の進化と深化がもたらす未来の働き方

もともと飲料メーカーにおいては高いレベルで製造工程の自動化が達成されており、サントリーはそこに先鞭をつけてきた代表的な存在でもある。すでに原材料の投入から製品が出来上がるまでのプロセスにおいて、人手が介在することはほとんどない状況が確立され、働き方改革に寄与してきた。その一方で、ものづくりの現場ではエコへの対応や効率的なロジスティクスに準拠した規格など、常に新たな変化対応力が求められている。

この壁を乗り越えるためには自動化だけでは難しく、やはりデータサイエンスの力が不可欠となる。そこで多くの企業では、これまでExcelなどのツールで分析レポートを作成してPDCAサイクルを回すことで、随時、計画の見直しなどを図ってきた。サントリーも例外ではない。しかし、激動ともいえる「VUCAの時代」にあっては、このような方法の限界も認識していた。まず、データの収集・抽出だけでも膨大な時間と労力を要する。結局、収集しやすいデータで分析せざるを得ず、作成したレポートが単なる経営者向けの報告書になってしまい、現場での活用とは温度差があった。また、専任担当者が創意工夫を凝らすほど属人化・ブラックボックス化された仕組みが出来上がり、継承できないという課題も顕在化していたからだ。

プロジェクトでは、こうした状況からの脱却を図るために、IoT基盤を通じてデータを自動的に取得・分析し、ダッシュボード上で必要なKPI(重要業績評価指標)を「見える化」することにチャレンジした。究極的には、「必要な時に、必要な人が、必要な情報」にアクセスできる環境を整備し、次なるアクションを促すことが目的だ。
その成果は、現場の利活用を通じて着実に表れており、加えて工場の働き方を大きく変革させる可能性を秘めていると、大久保 拓海は指摘する。

大久保 (拓)「 “見える化”は、リモートワークの推進と業務効率の質的向上を両立させた未来の働き方へのマイルストーンを示唆しています。ダッシュボードをチェックしながら、遠隔地からでも設備・機械を的確にコントロールできる可能性を秘めているからです。このようなことが当たり前になれば、工場の自動化と併せて24時間体制に基づく工場のシフトも大きく変わっていくと確信しています」

ダッシュボード上で必要なKPIを「見える化」することで、工場でのリモート操作を可能に。工場の働き方を大きく変える可能性を秘めている。

このような現実世界とサイバー空間の融合・最適化は、CPS(Cyber Physical System)、デジタルツインと呼ばれているが、アフターコロナで求められるニューノーマルへの対応、少子高齢化に伴う生産人口が減少していく中にあって、サントリーでは「人間中心のものづくり」が現実味を帯びてきている。

一方、もう1人のデータサイエンティストである中川 愛子は、AIをはじめとするデジタル技術の進化と深化を実感しつつあるという。

中川「AIといえば、これまではテーブルデータの機械学習が主流でしたが、サントリーでは画像解析や自然言語処理、多目的最適化を図る進化計算、さらには生成AIなどとの融合により、これまでの延長線上になかったことにチャレンジしています。要は目的に応じたAI活用です。実際に私は現在、設備・機械の“音”をベースに、AIが異常音から予兆検知して、先回りして問題を早期発見する領域に携わっています」

異常を検知するのではなく、AIが設備・機械の“音”をベースに、異常音から予兆検知し問題を早期発見する仕組みへシフトしている

「IT×OT」の最前線を「信濃の森工場」発で横展開 「IT×OT」の最前線を「信濃の森工場」発で横展開

プロジェクトには、「未来のものづくり」という命題も与えられた。要は、最先端のデジタル技術とデータを駆使することで、「ものづくり」の在り方そのものを抜本的に見直していくということだ。言い換えれば、「工場経営の高度化 」ということである。
というのも、これまでの工場は、それぞれの製造工程の効率化・生産性向上を図ることを第一義として、製品単位・工場単位で改善や課題解決に取り組んできた。その多くは、「プロセス(処理)」起点の部門最適化だったといっても過言ではない。

しかし、デジタル技術の進展は、「データ」起点でビジネスを俯瞰することを可能にした。そこでは、個々の工場や生産ラインが抱えている共通の課題を見出し、組織横断の課題解決、延いては改善・改革を超えた「ビジネス変革」を創出することができる。これが、サントリーが志向する「未来のものづくり」へ向けての「全体最適」に他ならない。

プロジェクトでは、「IT(デジタル)」と「OT(Operational Technology:制御運用技術)」の融合を図ることで、この実現を目指した。具体的には、生産設備・センサー・既存業務システムといったOTレイヤーとの豊富なインタフェースを実装したIoT基盤を構築。大量かつ更新頻度が高い生産データをシームレスに収集・連携する環境を整備した。さらにビッグデータをクラウド上のデータレイクに蓄積し、データ統合・分析基盤を通じてデータの抽出・紐づけを最適化し、多様な分析を容易にできる環境を実現し、データドリブン工場への第1歩を踏み出した。

役職や年代に関わらず自由闊達に意見を言える社風が、次代へのイノベーションを創る

実はこのような整備されたデータ環境は、データサイエンティストやデータアナリストを目指す人たちにとっても朗報だ。これらのエキスパートたちの多くが、データの収集やクレンジングなどといったデータ整理に時間を割かれることなく、能力を発揮できる環境が整っているからだ。須原 真由美は、本プロジェクトにおけるIT・デジタル部門のリーダーとして、「工場経営の高度化」を踏まえた近未来の姿を次のように描く。

須原「現実世界をサイバー空間で再現・共有できるCPSの世界は、これまで閉じられた世界にあった工場を、オープンかつグローバルな視点で俯瞰することを可能にします。すでにサントリーでは本社の生産部門・技術部門などさまざまな担当がクラウドに蓄積された工場データにアクセスして、利活用していく方策が検討されています。そのねらいは工場課題を経営課題へと昇華させて、すべてのステークホルダーに寄与する新たなシナリオを展開していくことに他なりません」

その一環として、サントリーでは現在、信濃の森工場の“次世代ファクトリー”モデルを他工場に横展開していく計画も進行中だ。サントリーグループのパーパスである「人間の生命(いのち)の輝き」へ向けて、データ駆動で取り組む態勢は離陸段階にある。このベストプラクティスが日本でのものづくりにインパクトを与え、ひいては世界のものづくりにおけるイノベーションの火付け役となる日も、そう遠くはないだろう。

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