
一口 中国・南宋時代 12〜13世紀
藤田美術館
撮影:三好和義
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No.sma0011 (2015.5.14)
サントリー美術館
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重要文化財 地蔵菩薩立像 快慶作 一躯 鎌倉時代 13世紀 藤田美術館 撮影:三好和義 |
国宝 両部大経感得図 藤原宗弘筆 二幀 保延2年(1136) 藤田美術館 |
幕末の天保12年(1841)、藤田傳三郎は長州萩(はぎ)(現・山口県萩市)の造り酒屋に生まれました。当時の萩といえば、吉田松陰(よしだしょういん)や高杉晋作(たかすぎしんさく)、桂小五郎(かつらこごろう)(木戸孝允(きどたかよし))ら幕末の志士たちを送り出した地として知られ、傳三郎も20代後半にこの町で明治維新を迎えました。
維新後、国事に奔走した同志の多くは官職に就きましたが、傳三郎は商工業に従事し、民間の立場で日本近代化の一翼を担う決心をします。大阪に出た傳三郎は、陸軍関係の装備や物資、労働者の手配に始まり、鉄道敷設、トンネルや橋梁の建設、干拓、疎水工事、鉱山の操業など、さまざまな事業を手がけ、関西屈指の実業家となりました。
明治維新という革命は日本を急速に近代化させ、傳三郎も富の恩恵を得ましたが、その一方で、政府の欧化政策は日本の伝統文化の崩壊をもたらしました。傳三郎は、廃仏毀釈によって仏教美術品が破壊されたり、海外に散逸していく危機を憂慮し、これを阻止すべく私財を投じて文化財の保護に努めました。
本章では、廃仏毀釈で廃寺となった奈良・内山永久寺伝来の国宝「両部大経感得図(りょうぶだいきょうかんとくず)」や薬師寺伝来の国宝「大般若経(だいはんにゃきょう)」など、宗教美術の優品をご紹介します。
【おもな出品作品】以下、すべて藤田美術館蔵
国宝 | 大般若経(だいはんにゃきょう) | 三八七巻のうち | 奈良時代 8世紀 |
千体聖観音菩薩立像(せんたいしょうかんのんぼさつりゅうぞう) | |||
五十躯のうち | 平安時代 12世紀 | ||
重要文化財 | 地蔵菩薩立像(じぞうぼさつりゅうぞう) 快慶(かいけい)作 | ||
一躯 | 鎌倉時代 13世紀 | ||
重要文化財 | 金銅装獅子宝相華文説相箱(こんどうそうししほうそうげもんせっそうばこ) | ||
一個 | 平安時代 12世紀 | ||
国宝 | 両部大経感得図(りょうぶだいきょうかんとくず) 藤原宗弘(ふじわらのむねひろ)筆 | ||
二幀 | 保延2年(1136) | ||
重要文化財 | 普賢十羅刹女像(ふげんじゅうらせつにょぞう) | 一幀 | 鎌倉時代 13〜14世紀 |
重要文化財 | 薬師三尊十二神将像(やくしさんぞんじゅうにしんしょうぞう) | ||
一幅 | 鎌倉時代 14世紀 |
第2章 国風文化へのまなざし
![]() 一合 平安時代 11世紀 藤田美術館 撮影:三好和義 |
![]() 一巻(部分) 鎌倉時代 13世紀 藤田美術館 |
![]() 十二巻のうち第一巻(部分) 鎌倉時代 14世紀 藤田美術館 |
若い頃から古美術を愛好した傳三郎の美術品収集は、決して道楽のためだけではなく、国の宝を護らなければいけないという強い意志がありました。さらに、芸術や文化は国の基盤であると考えていた傳三郎は、自ら考察を重ね、日本人が古来愛玩してきたものを系統立てて網羅的に集めようと努めました。絵画や墨蹟、漆工、金工、染織など多岐にわたるコレクションからは、傳三郎と子息たちの強い思いがうかがえます。
なかでも本章では、中世の和様の書や絵巻の名品をご紹介します。遣唐使廃止の頃になると日本独特の国風文化が広まり、かたちに柔らかみのある仮名文字が生み出されました。仮名文字の登場は、私たち日本人に表現の自由を与え、日記や和歌、物語など、文学の発展にも大きく貢献しました。
このような物語を描くメディアの代表例が「絵巻」です。日本美術の歴史をたどっていくと、屛風や掛軸など、多くの文物が中国に由来していることを知ります。巻物も例外ではなく、その源流は中国の画巻(がかん)に求めることができますが、日本では巻物の形式が独自の発展をとげ、物語を描く日本オリジナルの絵画へと進化しました。
【おもな出品作品】
国宝 | 深窓秘抄(しんそうひしょう) | 一巻 平安時代 11世紀 |
重要文化財 | 古今和歌集(こきんわかしゅう) 巻第十八断簡(だんかん)(高野切(こうやぎれ)) | |
一幅 平安時代 11世紀 | ||
重要文化財 | 大伴家持像(おおとものやかもちぞう)(上畳本三十六歌仙切(あげだたみぼんさんじゅうろっかせんぎれ)) | |
一幅 鎌倉時代 13世紀 | ||
国宝 | 仏功徳蒔絵経箱(ぶつくどくまきえきょうばこ) | 一合 平安時代 11世紀 |
国宝 | 紫式部日記絵詞(むらさきしきぶにっきえことば) | 一巻 鎌倉時代 13世紀 |
国宝 | 玄奘三蔵絵(げんじょうさんぞうえ) 十二巻のうち第一巻・第六巻 | |
鎌倉時代 14世紀 | ||
重要文化財 | 華厳五十五所絵巻残闕(けごんごじゅうごしょえまきざんけつ) | |
一巻 鎌倉時代 12世紀末〜13世紀 |
第3章 傳三郎と数寄文化
明治維新で社会に大きな変革が起きると、それまでの日本文化に対する関心が急激に衰退し、茶の湯も多くの支持者を失いました。しかし、やがて勃興した政財界人が茶の湯に強い関心を寄せ、日本美術の保護とともに新たな数寄(すき)文化を流行させました。傳三郎も武者小路千家(むしゃこうじせんけ)流と表千家(おもてせんけ)流を学び修め、茶の湯を趣味とする近代数寄者(すきしゃ)の一人として、同郷の井上馨(いのうえかおる)や三井物産の創始者・益田孝(ますだたかし)(鈍翁(どんのう))たちと社交を重ねました。
そもそも茶の湯は、水墨画や墨蹟などとともに、禅宗を通じて中国から喫茶の風習が伝来し、日本で発達した歴史があります。茶室の床の間を飾る掛物(かけもの)も、茶の湯が発祥した室町時代中期には、中国・宋〜元時代の唐絵(からえ)が理想とされ、やがて禅僧の墨蹟が主役を担うようになりました。
本章では、茶掛(ちゃがけ)として珍重された墨蹟や中国の宋元画、またそれに倣った日本の水墨画など、傳三郎たちが床の間に掛けて楽しんだ名品をご紹介します。
【おもな出品作品】
重要文化財 | 大燈国師墨蹟(だいとうこくしぼくせき) 偈語(げご) | 一幅 鎌倉時代 | 14世紀 | |
夢窓国師墨蹟(むそうこくしぼくせき) 客中偶作詩(かくちゅうぐうさくし) | ||||
一幅 鎌倉時代 | 13〜14世紀 | |||
李白観瀑図(りはくかんばくず) 馬遠(ばえん)筆 | 一幅 中国・南宋時代 | 12〜13世紀 | ||
寒山拾得図(かんざんじっとくず) 因陀羅(いんだら)筆 | 一幅 中国・元時代 | 14世紀 | ||
国宝 | 柴門新月図(さいもんしんげつず) | 一幅 応永12年(1405)序 | ||
江岸閑鷗図(こうがんかんおうず) 祥啓(しょうけい)筆 | 一幅 室町時代 | 15世紀 | ||
江湾山水図(こうわんさんすいず) 狩野正信(かのうまさのぶ)筆 | ||||
一幅 室町時代 | 15〜16世紀 |
第4章 茶道具収集への情熱
![]() 一口 中国・南宋時代 12〜13世紀 藤田美術館 撮影:三好和義 |
![]() 一合 中国・明〜清時代 17世紀 藤田美術館 撮影:三好和義 |
傳三郎は、成功で得た人望や社会的地位から、自らの事業のほか、阪堺鉄道(現・南海電気鉄道)や大阪紡績会社(現・東洋紡績)、宇治川電気(現・関西電力)など、多くの新会社設立にも関わりました。さらに社会文化事業では、大阪商法会議所(現・大阪商工会議所)の創設や大阪日報(現・毎日新聞)の再興に携わり、学校教育に対しても多額の寄付を行ないました。
傳三郎の温厚な人柄は、人望だけでなく、茶道具の名品をも引き寄せたようです。戦災により、残念ながら傳三郎の茶会記などは現存しませんが、傳三郎は亡くなる10日前に、終生手に入れたいと熱望していた稀代の名品「交趾大亀香合(こうちおおがめこうごう)」を念願叶い手にしたという逸話があります。さらに子息たちも、長男・平太郎が天下の名碗「曜変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん)」(国宝)を、次男・徳次郎が「御所丸黒刷毛茶碗(ごしょまるくろはけちゃわん) 銘夕陽(せきよう)」(重要文化財)などを収集しました。
本章では、傳三郎たちが収集に情熱を傾けた茶道具の名品をご紹介します。
【おもな出品作品】
田村文琳茶入(たむらぶんりんちゃいれ) | 一口 中国・宋〜明時代 | 13〜15世紀 | |
国宝 | 曜変天目茶碗(ようへんてんもくちゃわん) | 一口 中国・南宋時代 | 12〜13世紀 |
重要文化財 | 白縁油滴天目鉢(しろぶちゆてきてんもくはち) | 一口 中国・金時代 | 12〜13世紀 |
大井戸茶碗(おおいどちゃわん) 銘蓬莱(ほうらい) | 一口 朝鮮時代 | 16世紀 | |
重要文化財 | 御所丸黒刷毛茶碗(ごしょまるくろはけちゃわん) 銘夕陽(せきよう) | ||
一口 朝鮮時代 | 17世紀 | ||
重要文化財 | 菊花天目茶碗(きっかてんもくちゃわん) | 一口 室町時代 | 16世紀 |
交趾大亀香合(こうちおおがめこうごう) | 一合 中国・明〜清時代 | 17世紀 | |
重要文化財 | 銹絵絵替角皿(さびええがわりかくざら) 尾形乾山(おがたけんざん)作・尾形光琳(おがたこうりん)画 | ||
十枚 江戸時代 | 18世紀 |
第5章 天下の趣味人
かつて藤田家は、近松門左衛門(ちかまつもんざえもん)作の人形浄瑠璃「心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)」の舞台となった大阪市都島区網島町に広大な土地を所有し、傳三郎が自ら図面を作って邸宅や庭園を造営しました。昭和20年(1945)の大阪大空襲でそのほとんどが焼失してしまいましたが、焼け残った蔵の一棟が現在、藤田美術館の展示室となっています。
傳三郎といえば、実業界随一の趣味人として知られます。茶の湯や建築・造園のほか、能楽は家族と一緒にたしなんでおり、邸内には能舞台も備えられていました。そのため、藤田家のコレクションには能装束や面(おもて)も見られ、実際に身に着けて舞ったものも含まれています。
また、近代日本画家・竹内栖鳳(たけうちせいほう)(1864〜1942)など、傳三郎らと同時代画家の作品も収集されており、傳三郎たちの関心は、古美術に対してだけでなく、近世から当時の現代作家にも向けられていたようです。
本章では、藤田家のコレクションの広がりをご紹介します。
【おもな出品作品】
緑地菊唐草文唐織(みどりじきくからくさもんからおり) | 一領 桃山〜江戸時代 | 16〜17世紀 | |
薄茶焦茶薄縹段地藤棚文唐織(うすちゃこげちゃうすはなだだんじふじだなもんからおり) | |||
一領 江戸時代 | 18〜19世紀 | ||
能面(のうめん) 小面(こおもて) ゆふかつら 伝 越智(えち)作 | 一面 室町時代 | 15世紀 | |
大江山酒呑童子絵巻(おおえやましゅてんどうじえまき) 菱川師宣(ひしかわもろのぶ)筆 | |||
三巻のうち中巻・下巻 元禄5年(1692) | |||
蔦鴨図(つたかもず) 円山応挙(まるやまおうきょ)筆 | 一幅 明和3年(1766) | ||
幽霊(ゆうれい)・髑髏仔犬(どくろこいぬ)・白蔵主三幅対(はくぞうすさんぷくつい) 長澤蘆雪(ながさわろせつ)筆 | |||
三幅 江戸時代 | 18世紀 | ||
千利休居士像(せんのりきゅうこじぞう) 小川破笠(おがわはりつ)筆 | 一幅 江戸時代 | 18世紀 | |
大獅子図(おおじしず) 竹内栖鳳(たけうちせいほう)筆 | 四曲一隻 明治35年(1902)頃 |
【本展における展覧会関連プログラム】
◎記念座談会「数寄者 藤田傳三郎とコレクションの成立」
講師 | : | 戸田 博氏(谷松屋戸田商店 代表取締役) 藤田 清氏(藤田美術館 館長) |
日時 | : | 8月23日(日)14時〜15時30分 |
会場 | : | 6階ホール 定員:100名 対象:一般 |
聴講料 | : | 700円(別途要入館料) 応募締切:8月2日(日) |
▼会期 | : | 2015年8月5日(水)〜9月27日(日) ※作品保護のため、会期中展示替を行ないます |
▼主催 | : | サントリー美術館、朝日新聞社 |
▼特別協力 | : | 公益財団法人藤田美術館、藤田観光株式会社 |
▼協賛 | : | 大伸社、三井不動産、サントリーホールディングス |
▼協力 | : | 日本ヒューレット・パッカード |
▼会場 | : | サントリー美術館 港区赤坂9−7−4 東京ミッドタウン ガレリア3階 |
<最寄り駅> | 都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結 東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結 東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩約3分 |
【基本情報】
▼開館時間:10時〜18時 ※金・土、および9月20日(日)〜22日(火・休)は20時まで開館 ※いずれも入館は閉館の30分前まで ※shop×cafeは会期中無休 |
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▼休館日:火曜日(9月22日は開館) | ||
▼入館料:一般1,300円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料 ※20名様以上の団体は100円割引 |
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▼前売: | 一般1,100円、大学・高校生800円 サントリー美術館、チケットぴあ、ローソンチケット、セブンチケット、イープラスにて取扱(各種プレイガイドは一般のみ販売) |
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※前売券の販売は2015年5月27日(水)から8月4日(火)まで ※サントリー美術館受付での販売は5月27日(水)から7月20日(月・祝)まで |
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▼割引: ■きもの割:きものでのご来館で100円割引 ■HP割:ホームページ限定割引券提示で100円割引 ■携帯割:携帯サイトの割引券画面提示で100円割引 ■あとろ割:国立新美術館、森美術館の企画展チケット提示で100円割引 ※割引の併用はできません |
▼点茶席(薄茶と季節のお菓子) 各日限定50名 1,000円(別途要入館料) 6階茶室「玄鳥庵」にて |
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日時: | 8月13日(木)、27日(木)、9月10日(木)、24日(木) 11時30分〜17時30分(受付は17時まで) 13時、14時、15時には点前があります。 |
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※定員を超えた時点で終了となる場合があります。何卒ご了承ください。 | ||
▼一般お問い合わせ:03−3479−8600 | ||
▼ホームページ: http://suntory.jp/SMA/ |
▽次回展覧会
「久隅守景」(仮称)
2015年10月10日(土)〜11月29日(日)
▽プレスからのお問い合わせ:〔学芸〕上野、〔広報〕羽鳥
TEL:03−3479−8604 FAX:03−3479−8644
メールでのお問い合わせ、及びプレス用画像ダウンロードのお申し込み:3月17日(火)から
https://www.suntory.co.jp/sma/press_info/
以上
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