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No.12021 (2014.3.31)
第13回(2013年度)佐治敬三賞は
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応募のあった2013年実施公演について2014年3月19日(水)東京・六本木のサントリー美術館において、選考委員7名により選考会を開催、慎重な審議の結果、第13回(2013年度)佐治敬三賞に「東京現音計画♯01〜イタリア特集I:コンポーザーズセレクション1・杉山洋一」および「東方綺譚 “Nouvelles Orientales de Marguerite Yourcenar”」の2公演が選定され、3月26日(水)理事会において正式に決定された。 |
●賞金は200万円。今回は同時受賞につき各100万円が贈られる。
●選考委員は下記の7氏。
礒山 雅・伊藤 制子・伊東 信宏・岡部 真一郎・松平 あかね・水野 みか子・楢崎 洋子
(敬称略・50音順)
●「東京現音計画♯01〜イタリア特集I:コンポーザーズセレクション1・杉山洋一」
<贈賞理由>
「東京現音計画」は、日本の現代音楽界の第一線で活躍する5人の音楽家、有馬純寿(エレクトロニクス)、大石将紀(サクソフォン)、神田佳子(打楽器)、黒田亜樹(ピアノ)、橋本晋哉(チューバ)が立ち上げた団体。今回の受賞公演は、その第1回演奏会にあたり、作曲家・杉山洋一をゲストに招き、彼の選曲で組み立てられていた。ドナトーニやマデルナの60〜70年代の作品を交えながら、ジョルジョ・ネッティやアルド・クレメンティによる近作、さらには杉山自身の新作も加えたその選曲は、「イタリア特集」と銘打たれていた。この枠組みと上記の音楽家たちによる演奏を活かす、という条件を満たす選曲はかなり厳しかったと思われるが、それでもここには杉山洋一の歴史観と作曲観がよく現れており、清新で明快である。
またその演奏も非常に水準が高く、現代の日本における同時代作品の演奏について、一つの到達点を示した、と言って良い。
ピアノ内部奏法の処理はあれで良かったのか、あるいは各曲についてもう少し丁寧な解説があっても良いのではないか、といった点でいくつか意見も出たが、企画の点でも、演奏の点でも、バランスのとれた公演で、これほど輝きのある演奏会は稀有である、との評価もあり、総体としては審査員全員が佐治敬三賞に価すると判断した。同団体が、今後ますます充実した活動を展開されることを期待する。
<公演概要>
名称: | 東京現音計画♯01〜イタリア特集I:コンポーザーズセレクション1・杉山洋一 |
日時: | 2013年9月13日(金)19:00 |
会場: | 杉並公会堂小ホール |
曲目: | 杉山洋一/五重奏(アフリカからの最後のインタヴュー)委嘱初演 ファンファーレ ジョルジョ・ネッティ/最後に、かたわらで(翼の生えた) アルド・クレメンティ/コラージュ2 ニコラ・サーニ/空間概念 期待 アルド・クレメンティ/いと高きところに ブルーノ・マデルナ/ディアロディーア ピエールルイージ・ビッローネ/マニ・モノ フランコ・ドナトーニ/四重奏 |
プログラム監修・指揮:杉山洋一 | |
出演: | 東京現音計画 有馬純寿(エレクトロニクス)、大石将紀(サクソフォン) 神田佳子(打楽器)、黒田亜樹(ピアノ)、橋本晋哉(チューバ) |
主催: | 東京現音計画 |
制作: | 有限会社ナヤ・コレクティブ |
●「東方綺譚(とうほうきたん) “Nouvelles Orientales de Marguerite Yourcenar”」
<贈賞理由>
「アンサンブル室町」は、和楽器とバロック楽器の混合編成により空間と時間を超えた芸術表現を追求する、独創的な理念に立脚したアンサンブルである。10月26日、津田ホールで開催された「東方綺譚 “Nouvelles Orientales de Marguerite Yourcenar”」と題するコンサートは、マルグリット・ユルスナールの小説集『東方綺譚』をテーマに、日本とフランスの4人の作曲家が世界初演となる新作を寄せるという、意欲的かつ筋の通った企画のもとに行われた。
日本からは中堅の鈴木純明と若手の北爪裕道を、フランスからは高い実力をもつ作曲家ながら日本で十分に紹介されてきたとは言えないエディット・ルジェ、ブリューノ・デュコルを指名した着眼は卓抜で、作品もそれぞれ個性のある、粒ぞろいのものであった。とりわけルジェのヴァイオリン協奏曲《風景の秘密》は、招聘された韓国のヴァイオリニスト、ハエ=スン・カンの際だった演奏を得て、洗練された様式により聴衆を魅了した。惜しまれるのは、デュコルの《ワンフォ、あるいは夢の色彩》において、日本語とフランス語のナレーションのかみ合わせに難があったことである。
プレトークを担当した岩切正一郎の適切かつ行き届いた情報提供により、コンサートの理念と創作の方向性がいっそう明確になったことも評価される。和楽器とバロック楽器の響きの親和性、両者のコラボレーションによる表現の可能性が立証されたことはひとつの発見で、現代音楽のコンサートとしても国際交流のイベントとしても、斬新にして実り多いコンサートであった。今後の展開への期待もこめて、佐治敬三賞を贈賞する。
<公演概要>
名称 | : | 東方綺譚 “Nouvelles Orientales de Marguerite Yourcenar” |
日時 | : | 2013年10月26日(土)18:30(プレトーク:18:00) |
会場 | : | 津田ホール |
曲目 | : | 鈴木純明/「ネーレイデスに恋した男」アンサンブルのための エディット・ルジェ/風景の秘密 北爪裕道/浮世の絵師 ブリューノ・デュコル/ワンフォ、あるいは夢の色彩 (全曲、委嘱初演) |
出演 | : | ハエ=スン・カン(ヴァイオリンソロ) ディディエ・ダブロフスキ、萬浪大輔(俳優) 鷹羽弘晃(指揮) アンサンブル室町(演奏) 岩切正一郎(プレトーク)、関根敏子(プレトーク司会) |
舞台監督 | : | 浜田和孝 |
芸術監督 | : | ローラン・テシュネ(アンサンブル室町代表) |
主催 | : | アンサンブル室町 |
マネージメント:武智音楽事務所 |
以上
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